福島の甲状腺検査のリスクとベネフィットの認知度はどのくらい?

がん検診(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html)では、無症状の人たちを対象にして、がんの可能性の有無をふるい分けます。この際、リスクとベネフィットを伴います。

 

がん検診の最大のベネフィットは、がんを早期発見・早期治療することで、そのがんによる死亡リスクを減らすことです。

 

一方、がん検診の主なリスクは、「過剰診断」や、検査の精度によるものです。

 

過剰診断とは、進行することがなかったり進行がゆっくりだったりして、将来命に関わることのない性質のがんを見つけてしまうことです。手術など、本来不要なはずだった治療につながることもあります。

 

無症状で見つかる微小な甲状腺がんの多くは、別の理由で亡くなった方に死後見つかることも多く、進行して将来症状が出ることが少ないという性質を持っています。

 

福島県では、東京電力福島第一原子力発電所事故の際に、概ね18歳以下だった県民を対象に、超音波による甲状腺スクリーニング検査(無症状の人たちに対する甲状腺がんの可能性の有無をふるい分ける検査)を実施しています。

 

この検査でも、他のがん検診と同じように、リスクとベネフィットを考える必要があります。

 

しかし、福島県立医科大学の研究者による2018年の調査などで「甲状腺検査のリスク・ベネフィットの存在を知っている人は少ない」という結果が出ています。

 

2019年1月15日に福島市で開かれた国際シンポジウムで、福島県立医科大学の緑川早苗准教授が、甲状腺検査についての出張説明会(住民説明会)におけるアンケート調査の結果を発表しました。

 

調査対象になった説明会は、2018年5月~11月に16会場で、おもに子どもの保護者や教職員の方を対象に開かれたものです。参加した389人(男性13.6%、女性72.2%)に対して、説明会を受ける前にアンケートを実施しました。

 

アンケートのうち「甲状腺検査にもメリットとデメリットがあります。このことをご存じでしたか?」という質問に対し、「はい」の回答は11.8%、「いいえ」の回答は80.5%と大きな差が出ました。

 

また、福島県立医科大学の別の調査で、県外の2つの大学で学生347人に対し、同様の質問をしたところ、「はい」の回答は23.9%、「いいえ」の回答は71.8%でした。

 

福島の甲状腺検査のように、子どもや若年者を対象とする場合、過剰診断のリスクが、長期間にわたる精神的苦痛、将来、生命保険に加入できないなど、多くの害をもたらす可能性があります。このため、多くの人が検査に伴うリスクを知らないという現状は、今後の大きな課題といえます。

 

なお、福島県では、医師らによる県民健康調査検討委員会や甲状腺検査評価部会が定期的に開かれ、検査対象者に対する説明の手法や同意のとり方についての改善に関する議論がされています。今後、これまで不足していた検査に伴うリスクについての説明の記載も加えられる見通しです。

 

参考リンク

・「甲状腺検査の出張説明会や出前授業を実施しています」(福島県立医科大学サイト)

http://fukushima-mimamori.jp/thyroid-examination/explanation-meeting/

・「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価部会」

http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-b.html

 

 

 

 

福島の「いま」を伝える情報サイト「福島レポート」

1
 
 
シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

・大賀祐樹「こんな「リベラル」が日本にいてくれたらいいのに」
・結城康博「こうすれば介護人材不足は解決する」
・松浦直毅「学び直しの5冊〈アメリカ〉」
・山岸倫子「困窮者を支援するという仕事」
・出井康博「「留学生ビジネス」の実態――“オールジャパン”で密かに進む「人身売買」」
・穂鷹知美「ヨーロッパのシェアリングエコノミー――モビリティと地域社会に浸透するシェアリング」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(9)――「シンクタンク2005年・日本」第一安倍政権崩壊後」