シノドス・トークラウンジ

2020.10.23

2020年11月20日(金)開催

迷走する日本の教育――専門知なき教育政策の問題点

中村高康×川口俊明 ホスト:大竹裕章(岩波書店)

開催日時
2020年11月20日(金)20:00~21:30
講師
中村高康×川口俊明
ホスト
大竹裕章(岩波書店)
場所
Zoom
料金
1100円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

大学入試がわかる本――改革を議論するための基礎知識

中村 高康

全国学力テストはなぜ失敗したのか――学力調査を科学する

川口 俊明

日本の教育は、いったいどうなってしまっているのでしょうか。2019年、戦後最大の入試改革と言われた大学入試共通テスト改革において、英語民間試験の利用および記述式問題の導入が見送られました。これらは数年に渡って根本的な問題が指摘されてきたにもかかわらず、見送り決定は新テスト実施の1年前という直前だったのです。加えて2020年8月には主体性評価のための「e-Portfolio」の導入が見送られるなど、入試改革の混乱が続いています。

また、2007年から行われている全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)は、学力調査という目的が達成されず、自治体の順位競争などにばかり注目が集まったまま、教育現場に大きな負担を掛けて進められています。現在、コンピュータを用いた実施の導入が検討されていますが、現在の方向性では望ましい学力調査のための改善には至らないという有識者の声が上がっています。

これらに代表される教育問題の背景には、教育政策の決定に際して、専門家の知見が生かされず、また教育現場の実態が踏まえられていないということが挙げられます。大学入試改革・全国学力テストのどちらにおいても、その問題点が早くから指摘されてきたにもかかわらず、それが顧みられることなく直前で導入を断念したり、あるいは多くの問題と負担を抱えて乏しい成果を続けるような事態に陥っているのです。

この度刊行された『大学入試がわかる本』『全国学力テストはなぜ失敗したのか』は、上記に挙げた2つの問題をそれぞれ、議論の経緯から現時点の政策決定の問題にまで踏み込んだ内容です。どちらにおいても、広くはっきりとなされてきた問題提起に向き合わずに政策が進められてきたこと、同時に、目的を達成するために必要な専門知が生かされないままになってしまっていることが挙げられるでしょう。

「シノドス・トークラウンジ」第5回は、この2作の著者、中村高康さん、川口俊明さんをお迎えしてお送りいたします。

プロフィール

川口俊明教育学・教育社会学

福岡教育大学教育学部准教授。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。専門は教育学・教育社会学。日本の学力格差の実態を明らかにするため、学力調査の分析や学校での参与観察調査をしています。

著書に『全国学力テストはなぜ失敗したのか』(岩波書店)、主な論文に、「教育学における混合研究法の可能性」『教育学研究』78(4)、 pp.386-397、「日本の学力研究の現状と課題」『日本労働研究雑誌』53(9)、 pp.6-15など。

この執筆者の記事

中村高康教育社会学

1967年生まれ。東京大学大学院教育学研究科教授。戦後社会と教育選抜システムの変容をテーマとして研究。第2回社会調査協会賞(優秀研究活動賞)受賞。主な著書に、『暴走する能力主義』(ちくま新書)、『大衆化とメリトクラシー』(東京大学出版会)、『教育と社会階層』(共編著、東京大学出版会)、『進路選択の過程と構造』(編著、ミネルヴァ書房)、『学歴・競争・人生』(共著、日本図書センター)などがある。

この執筆者の記事