2018.08.31
米国のオピオイド禍と日本への教訓
オピオイドをはじめとする薬物の過剰摂取により、2016年1年間で6万4千人もの米国人が命を落とした――ドナルド・トランプ米大統領は、2018年1月末に行った一般教書演説でこう述べた(注1)。トランプ大統領は、薬物対策に断固たる姿勢で取り組むことを明言したが、彼はこれより前の2017年10月にも、公衆衛生に関する非常事態宣言を出してオピオイド問題に対処する必要性に言及していた(注2)(注3)。
米国ではいったい何が起きているのか。
日本ではあまり報道されていないが、米国ではオピオイドの過剰摂取が大きな社会問題となっている(注4)。2016年に死亡した米国の著名な歌手プリンスさんや、2017年に死亡した米国のロックミュージシャンのトム・ペティさんも、死因は鎮痛薬のフェンタニル、すなわちオピオイドの過剰摂取によるものであった(注5)(注6)。
なお、日本では昨今、他国の大麻使用(医療用・娯楽用)の合法化についても報道がなされている(注7)。大麻については後述するが、本稿が主眼としているのはオピオイドであり、大麻の話ではないことに留意されたい。
オピオイドとは
そもそもオピオイドとは何か。オピオイドとは、アヘンと似た性質を示す化合物の総称である。オピオイド(opioid)という言葉も、アヘン(opium)から派生してできた言葉だ。WHOによれば、例えば、モルヒネ、ヘロイン、トラマドール、オキシコドン、メサドンなどがオピオイドである(注8)。
より詳しく言えば、オピオイドは、麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬などのアルカロイド(窒素を含む塩基性の植物成分)およびモルヒネ様活性を有する内因性または合成ペプチド類の総称である(注9)。神経系は、中枢神経と末梢神経から成り、神経系の情報伝達を担うのがニューロンと呼ばれる神経細胞だ。これが神経伝達物質を通じてさまざまな情報を脳に伝達する(注10)。
オピオイドは、中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体に結合して神経の伝達を抑制することにより、強力な鎮痛作用をもたらす(注9)(注11)。しかし、オピオイドは鎮痛作用だけでなく、多幸感をもたらしたり不安感を除去したりすることでも知られ、その依存性も問題となりうる。
歴史的に見れば、ケシの実から採取されるアヘンが鎮痛薬として西洋では古くから用いられていたが、19世紀初頭にアヘンからモルヒネが精製され、さらにその後、より速効性の高いヘロインが合成された(注12)。オピオイドは、このような歴史の中に位置づけて理解される必要がある。
オピオイドの処方薬で毎日46人が死んでいる
米国疾病対策センター(CDC) の報告書によれば(注13)、米国における薬物の過剰摂取による死亡者は年々増えている(図1)。1999年時点では10万人あたり6.1人であった死亡率が、2016年には19.8人となった(いずれも年齢調整死亡率)。2015年の16.3人と比較しても21%増となっている。
薬物の過剰摂取による死亡者は、米国における主な死亡原因統計において事故や自殺などさまざまな死因に分類されるため、その規模がわかりにくい。だが、それらを合計した上で、死亡原因統計(2016年)の上位10項目と比較すると、7位の糖尿病(同21.0人)に続き、8位のインフルエンザ・肺炎(同13.5人)を超える数字となる(注14)。
図1 薬物の過剰摂取による死亡者数および10万人あたり死亡者数の推移1999年-2016年(年齢調整済み)
その薬物関連死の多くを占めるのがオピオイドである。米国における2016年の薬物関連死による死亡者数6万3,632人中、オピオイドによる死亡者はおよそ66%(4万2,249人)であった(図2)。1日に115人もの米国人がオピオイドの過剰摂取で死亡している計算となる。このうちおよそ4割が処方されたオピオイドによる死亡とされる(注15)。つまり、毎日46人が処方薬で死亡しているのだ。
図2 オピオイド関連死亡者数および10万人あたり死亡者数の年次推移1999-2016年(年齢調整済み)
オピオイドは、米国で増え続けている自殺の手段にも用いられている。CDCのレポートによれば、自殺の手段で全体の15%を占める中毒死のうち、オピオイドによるものが3割強を占めた(注16)。
また現在、米国の臓器移植件数は増加傾向にあるが、その一つの要因として、薬物の過剰摂取による死者数の増加があるとの見方がある(注17)(注18)。ある研究によれば、ドナー(臓器提供者)全体に占める薬物の過剰摂取死によるドナーの割合は、2000年で1.1%だったのが、2017年には13.4%に増えたとされる(注19)。
諸外国との比較
諸外国と比較しても、米国の薬物関連死者数は突出している。国連薬物犯罪事務所によると、2015年の世界の薬物関連死19万人のうち米国がおよそ4分の1を占めた(注20)。今後10年間で50万人近くの米国人がオピオイドの過剰摂取で死亡するとの予測もある(注21)。
ここで、世界の主な国々におけるオピオイド(モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン)消費量を見てみよう(図3)(注22)。このデータには、がん患者の鎮痛に加え、手術麻酔や非がん患者の鎮痛に使用されたオピオイドが含まれている(注23)。
図3 医療用麻薬消費量の国際比較 2013-2015年
見てわかる通り、米国のオピオイド消費量は諸外国と比べて多い方だが、突出しているというわけではない。そうすると、オピオイドの消費量だけが問題なのではなく、不適切に処方されたり、処方薬であっても家族や友人から入手・購入したり、麻薬の密売人から購入したりしていることも問題であることになる(注24)。米国では、処方されたオピオイドを乱用した人は1,200万人(2015年)に上ると推定されている(注20)。
非がん患者へのオピオイド処方
米国のオピオイド禍にはどのような背景があるのか。一つの要因は、非がん患者に対してオピオイドが処方されるようになったことである。
非がん患者の慢性的な疼痛へのオピオイド処方が急増したのは1990年代終わりごろである(注25)。その少し前、つまり1980年代後半から1990年代前半に公表された文献では、欧州や北米でオピオイド鎮痛薬が過少評価され、結果として痛みの治療が不十分であると報告されていた(注26)。
このころ、WHO(世界保健機関)も、手術後の痛みやがんの痛みに対する医療的な対応が不十分であることを表明した(注27)。がん疼痛の治療に関しては、多くの医師たちが患者の痛みの重大さに気づき、多くの国で早急に改善された(注28)。
だが、問題は非がん患者の疼痛の管理であった。がん患者の場合と比べて、非がん患者にオピオイドを使用するための科学的エビデンスは十分ではなかった。ところが、がん疼痛の専門家たちは、その他の慢性疼痛や非がん性疼痛の専門知識がないまま、がんと非がんの疼痛の原因を一緒に考え、オピオイドが慢性的な非がん性疼痛の主要な治療方法とした(注26)。そして、製薬会社は、常習性が低い薬物としてオピオイドの使用を推し進めたのである(注26)(注29)。
米国の医療制度にも起因
もう一つの要因は、米国の医療制度だ。日本と異なり国民皆保険制度のない米国では、民間医療保険と、高齢者・障がい者向けのメディケアか低所得者向けのメディケイドという公的医療保険があるものの、無保険者も8.8%(2016年)いる(注30)。
慢性疼痛にはオピオイドが第一選択肢となるべきではなく、非オピオイドの投薬や理学療法、代替治療や痛みの自己管理・緩和方法等が有効とされるが、そうした治療は医療保険ではまかなわれないことが多い(注28)(注31)。また、痛みに対して適切に対処してくれるペインクリニックや専門の医師へのアクセスが困難な地域に住んでいる人々も少なくない。
こうした事情が重なり、オピオイドの処方が増え、その結果、米国では上述したような社会問題が発生したのだ。
米国政府の対応は?
このようなオピオイドの蔓延状況に対し、米国は何も手を打たなかったわけではない。実際、連邦政府が法律を制定したほか、専門職団体や州政府、連邦政府機関等が法律やガイドラインを策定してきた(注32)(注33)。
連邦法としては2016年、オバマ政権時に、薬物乱用に対する包括的な対策法である「包括的依存症回復法」が制定された(注34)。
同法は、予算措置が必要な補助金プログラムを設定し、複数の省や関係者によるタスクフォースを設置して疼痛管理に関する最適な手法を定めることや、社会・医療従事者への教育・意識啓発を行うこと、依存症治療薬の処方を医師以外にも一定の資格を有する看護師や医師助手にも可能にすることなどを規定した。
また、ガイドラインとしては例えば、CDCが2016年、慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の処方に関するガイドラインとそれに基づくチェックリストを公表した。
ガイドラインには、慢性疼痛に対するオピオイド治療をいつ始めるか、あるいは、いつまで続けるかを判断するための12の勧告が明記されている。ガイドラインは、慢性疼痛には薬物やオピオイドを使わない治療が望ましいこと、オピオイド治療は、痛みの緩和と機能改善の両方のベネフィットが患者へのリスクに勝ると考えられる場合にのみ考慮されるべきであることなどの他に、医療従事者が患者の処方歴を州のモニタリングプログラムを利用してレビューすることも明記した。
このように、米国では全米、あるいは、州レベルでいくつかの対策が講じられてはいるものの、オピオイドの過剰摂取による死亡者は増え続けている。
さらに米国では、全米8州およびコロンビア特別区で娯楽用大麻 (マリファナ) が合法化されており(注35)、2018年1月には米国最大の人口を有するカリフォルニア州でも販売が解禁された(注36)(注37)。しかし、トランプ政権は大麻の取り締まりを強化する方針を打ち出すなど、薬物対策をめぐって連邦政府と州政府が対立する動きも出ている(注38)。
日本で医療用麻薬の使用量が少ないのはなぜか
翻って、日本における状況はどうだろうか。
日本では、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、トラマドール、メサドンなどが医療用麻薬として用いられている。ただし、その管理・処方・取扱いについては「麻薬及び向精神薬取締法」に基づいて行われなければならず、厳しく管理されている(注39)(注40)。
前述のように、日本のオピオイドの使用量は国際的に見ても少ない。医療従事者や一般人の意識を見ると、オピオイドに対する慎重さが透けて見える。
オピオイド処方に関する日米の医師の意識調査(2014-2015年)を見てみると、急性疼痛あるいは慢性疼痛をコントロールするためにオピオイドを使用しても良いと思うかについて、「絶対に否定」「やや否定」と回答した米国人医師は198人中2人(1.0%)であったのに対し、日本人医師は435人中105人(24.1%)であった(注41)。
さらに、一般市民の間では、オピオイドに対する慎重さというよりむしろ誤解が見て取れる。
内閣府のがん対策に関する世論調査(2016年)では、オピオイドに対する意識について「最後の手段だと思う」とする回答が31.5%あり、「いったん使用し始めたらやめられなくなると思う」という回答も14.8%、「寿命を縮めると思う」も11.0%あった(図4)(注42)。
図4 オピオイドに対する意識 2016年
だが、オピオイドの使用は、予後の長短ではなく、痛みの強さに応じて行われるのが原則であるため(注43)、決して最後の手段ではない。がん疼痛に用いられる場合は、数週間から数カ月に限定されることが多く、適切に管理・使用されれば、乱用・依存に発展することは少ないという。
また、終末期のがん患者を対象にした複数の研究によると、オピオイドの使用は予後に影響を与えないとされる(注44)。しかし、調査結果からは、依然としてこうした誤解があることがわかる(注45)。このような誤解は、緩和ケア一般についても見られるものである(注46)。
この背景には、一般市民の間で、正しい知識が十分に共有されていないということに加え、「麻薬」や「ドラッグ」という言葉に対する恐怖心があると思われる。これは、厚生労働省が展開する啓発活動「薬物乱用は『ダメ。ゼッタイ。』」や、政府の「薬物乱用対策推進会議」による対策が影響している可能性もある(注47)。前述の内閣府の調査でも、「『麻薬』という言葉が含まれていて、怖いと思う」という回答が14%あった。医療用麻薬が、取締りの対象である覚醒剤や大麻などと区別されずに理解されている可能性がある。
依存症への懸念
がん治療に対するオピオイド治療には一定の効果がある。WHOは、第1段階では非オピオイド鎮痛薬、第2段階では軽度から中等度の強さの痛みに用いられるオピオイド鎮痛薬、第3段階ではモルヒネ・オキシコドン・メサドン・フェンタニルなど中等度から高度の強さの痛みに用いられるオピオイド鎮痛薬を推奨している(注43)(注48)。
他方で、薬には依存や耐性、副作用といった問題もつきまとう。自分で制御できずに薬物を使用するといった「精神依存」、突然の中止や減量等により離脱症状が生じる「身体依存」、同じ効果を得るためにより多くの量が必要となる「耐性」、そして、便秘やむかつき・嘔吐等の「副作用」である(注49)。実際に日本の医療現場でも、米国と比べてはるかに少数ではあるが、オピオイドの乱用・依存事案が報告されている(注50)(注51)。
日本への教訓
日本が米国のオピオイド禍から学べることは何か。米国のオピオイド蔓延の一つの原因は、非がん性慢性疼痛への処方である。日本でも非がん性慢性疼痛に対するオピオイド処方が可能であるが、日本ペインクリニック学会の指針は、痛みを緩和する可能性のあるすべての治療法を用いても痛みが緩和されない場合に初めて処方が検討されるべきであり、第一選択肢ではないとしている(注52)。
今日の日本では、不適切な処方に端を発したオピオイドの過剰摂取による死亡者の増大という、米国が直面しているような社会問題はない。むしろ、適切な疼痛緩和が十分に行われているかどうかが問題である(注53)。
米国の社会問題を対岸の火事とせず、これを機に「麻薬」についての正しい理解を深めるため、一般市民を対象にした教育や意識啓発が大切であろう。疼痛緩和が必要な人に対する過少治療も、そうした治療が必要ない人に対する過剰治療も、あってはならない。患者が抱えるさまざまな痛みを取り除きQOLを改善するには、医師が痛みの原因と痛みの評価を適切に診断することが必要だ。また、その診断に基づき適切にオピオイドを用いる医療体制の整備も重要である(注54)。
■脚注
(注1)読売新聞「トランプ米大統領 ⼀般教書演説の和訳」(2018年2月1日), NHK News Web「トランプ大統領一般教書演説 要旨と日本語訳・英語全文掲載」(2018年2月6日公開). https://www3.nhk.or.jp/news/special/45th_president/articles2/special/the-state-of-the-union-address/index.html#mokuji3
(注2)The New York Times. Trump Declares Opioid Crisis a ‘Health Emergency’ but Requests No Funds. 26 October 2017. https://www.nytimes.com/2017/10/26/us/politics/trump-opioid-crisis.html
(注3)エコノミスト「米大統領が超党派で対応を要請 拡大するオピオイド中毒」(2018年3月27日), 同「死亡者や依存症相次ぐオピオイド 米国の貧困層や子供の被害が拡大」(2017年9月5日)
(注4)日本では、オピオイドに関するニュースとして、例えば次のようなものがある。朝日新聞「がんの痛み 新しいケア 医療用麻薬『オピオイド』、日本は導入に遅れ」(2013年6月4日), 読売新聞「[医療ルネサンス]モルヒネ(4) 段階的増量 痛み消す」(2013年10月30日)。また、米国の問題については、脚注3の文献のほか、外国通信社の日本語配信記事などがある。例えば、ロイター「焦点:米国の「オピオイド中毒」、地域社会に深刻な財政負担」(2017年9月24日), AFPBB News「米国の薬物過剰摂取が「大流行レベル」に、傷害死因のトップ」(2015年11月5日)などがある。
(注5)毎日新聞夕刊「プリンスさん:死因は鎮痛剤の過剰摂取」(2016年6月3日)
(注6)AFPBB News「トム・ペティさん、死因は鎮痛剤の過剰摂取」(2018年1月20日)http://www.afpbb.com/articles/-/3159324, 産経ニュース「死因は薬物過剰摂取 ロックのトム・ペティさん プリンスさんと同じ医療用麻薬」(2018年1月22日)
(注7)日本経済新聞. カナダ、10月に大麻解禁、G7で初、犯罪組織の収入断つ. 2018年6月22日, BBCニュース. カナダ、娯楽目的の大麻使用を合法化へ. 2018年6月20日. https://www.bbc.com/japanese/44543666, Forbes Japan. 大麻合法化、米各州でさらに加速の見通し. 2018年5月13日. https://forbesjapan.com/articles/detail/21032
(注8)WHO. Information sheet on opioid overdose. November 2014. http://www.who.int/substance_abuse/information-sheet/en/
(注9)日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会編集. 第Ⅱ章 背景知識 4 薬理学的知識. In がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2014年版). 金原出版株式会社. 2014年. https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2014/index.php
(注10)橋口さおり. 第2部 痛みが起こるしくみ, 第4部 痛みを緩和する方法. In 運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ. マイナビ出版. 2017年. pp. 44-49, pp. 138-143.
(注11)日本ペインクリニック学会. オピオイド. https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keyopioid.html
(注12)MH Zenk, 田端守. 総説 アヘン–その薬物史と功罪. Natural medicines. 1996; 50(2): 86-102.
(注13)Hedegaard H, Warner M, Miniño AM. Drug overdose deaths in the United States, 1999–2016. NCHS Data Brief, no 294. Hyattsville, MD: National Center for Health Statistics. 2017. https://www.cdc.gov/nchs/products/databriefs/db294.htm なお、先日発表された速報データによると、2017年の死者数はさらに増えて、およそ7万2千人になる見込みである。Ahmad FB, Rossen LM, Spencer MR, Warner M, Sutton P. Provisional drug overdose death counts. National Center for Health Statistics. 2018. Designed by LM Rossen, A Lipphardt, FB Ahmad, JM Keralis, and Y Chong: National Center for Health Statistics. https://www.cdc.gov/nchs/nvss/vsrr/drug-overdose-data.htm, The New York Times. Bleak New Estimates in Drug Epidemic: A Record 72,000 Overdose Deaths in 2017. 15 August 2018. https://www.nytimes.com/2018/08/15/upshot/opioids-overdose-deaths-rising-fentanyl.html(ウェブへのアクセスは2018年8月17日)
(注14)1位は心疾患(10万人あたり165.5人)、2位はがん(同155.8人)。Kochanek KD, Murphy SL, Xu JQ, Arias E. Mortality in the United States, 2016. NCHS Data Brief, no 293. Hyattsville, MD: National Center for Health Statistics. 2017. https://www.cdc.gov/nchs/products/databriefs/db293.htm
(注15)このほか、ヘロインや非処方薬として違法に作られたフェンタニルなどを違法に入手していると考えられている。CDC. Prescription Opioid Overdose Data. https://www.cdc.gov/drugoverdose/data/overdose.html, Opioid Data Analysis. 2017. https://www.cdc.gov/drugoverdose/data/analysis.html
(注16)これは、CDCのNational Violent Death Reporting System (NVDRS) に参加している27州のデータを分析したものである。Stone DM, Simon TR, Fowler KA, et al. Vital Signs: Trends in State Suicide Rates — United States, 1999–2016 and Circumstances Contributing to Suicide — 27 States, 2015. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2018;67:617–624. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6722a1
(注17)Organ Procurement and Transplantation Network. Transplants by Donor Type U.S. Transplants Performed: January 1, 1988 – May 31, 2018. https://optn.transplant.hrsa.gov/data/view-data-reports/national-data/#
(注18)NBC News. Opioid crisis makes more organs available Organs from overdose victims are safe, studies show. 17 May 2018. https://www.nbcnews.com/health/health-news/opioid-crisis-makes-more-organs-available-n874761, CNN. There’s a 24-fold rise in organ transplants from drug overdose donors. 17 April 2018. https://edition.cnn.com/2018/04/16/health/drug-overdoses-organ-transplants-study/index.html, TIME. Organ Transplants Hit an All-Time High in 2017. But It’s a Bittersweet Win. 10 January 2018. http://time.com/5097377/record-breaking-organ-transplants-2017/
(注19)Durand CM, Bowring MG, Thomas AG, Kucirka LM, Massie AB, Cameron A, Desai NM, Sulkowski M, Segev DL. The Drug Overdose Epidemic and Deceased-Donor Transplantation in the United States: A National Registry Study. Ann Intern Med. 2018; 168(10): 702-711.
(注20)United Nations Office on Drugs and Crime (UNODC). World Drug Report 2017: Booklet 2 GLOBAL OVERVIEW OF DRUG DEMAND AND SUPPLY Latest trends, cross-cutting issues. May 2017. http://www.unodc.org/unodc/en/frontpage/2017/June/world-drug-report-2017_-29-5-million-people-globally-suffer-from-drug-use-disorders–opioids-the-most-harmful.html?ref=fs2
(注21)STAT. STAT forecast: Opioids could kill nearly 500,000 Americans in the next decade. 27 June 2017. https://www.statnews.com/2017/06/27/opioid-deaths-forecast/
(注22) 公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計’17. 2018年4月5日. https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/backnumber/2017_jp.html
(注23)がん患者と非がん患者に使用されるオピオイドの比率を検討した諸外国の研究によると、非がん患者に使用された割合が7割から9割であったことがわかった。高橋理智, 森田達也, 服部政治, 上野博司, 岡本禎晃, 伊勢雄也, 宮下光令, 細川豊史. 日本のがん疼痛とオピオイド量の真実(第(2)回) 世界各国と日本のオピオイド消費量に関する研究 日本のがん患者に使用されているオピオイドは本当に少ないのか? 緩和ケア. 2016; 26(6): 445-451.
(注24)CDC. Prescribing Data. https://www.cdc.gov/drugoverdose/data/prescribing.html
(注25)Manchikanti L, Atluri S, Hirsch JA. The effect of abuse-deterrent extended-release oxycodone leads to inappropriate conclusions with over estimation of safety of abuse-deterrent formulations. Pain Physician. 2015; 18(3): E445-6.
(注26)Jones MR, Viswanath O, Peck J, Kaye AD, Gill JS, Simopoulos TT. A Brief History of the Opioid Epidemic and Strategies for Pain Medicine. Pain Ther. 2018 Apr 24. doi: 10.1007/s40122-018-0097-6. [Epub ahead of print].
(注27)World Health Organization. Cancer pain relief. 1986. http://www.who.int/iris/handle/10665/43944
(注28)Vox. The opioid epidemic, explained 2015 was the worst year for drug overdose deaths. Then 2016 came along. 21 December 2017. https://www.vox.com/science-and-health/2017/8/3/16079772/opioid-epidemic-drug-overdoses
(注29)The New York Times. Origins of an Epidemic: Purdue Pharma Knew Its Opioids Were Widely Abused. 29 May 2018. https://www.nytimes.com/2018/05/29/health/purdue-opioids-oxycontin.html
(注30)厚生労働省. 2017年 海外情勢報告 第2章 北米地域にみる厚生労働施策の概要と最近の動向 第2節 アメリカ合衆国 (2) 社会保障施策. http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/18/dl/t2-04.pdf
(注31)BBC. Why opioids are such an American problem. 25 October 2017. https://www.bbc.com/news/world-us-canada-41701718
(注32)Errata. Vol. 65, No. RR-1. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2016;65:295. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm6511a6, CDC. CDC Guideline for Prescribing Opioids for Chronic Pain. https://www.cdc.gov/drugoverdose/pdf/Guidelines_Factsheet-a.pdf
(注33)その他、Department of Veterans Affairs, Department of Defense. VA/DoD CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR OPIOID THERAPY FOR CHRONIC PAIN. February 2017. https://www.healthquality.va.gov/guidelines/Pain/cot/, Chou R, Fanciullo GJ, Fine PG, Adler JA, Ballantyne JC, Davies P, Donovan MI, Fishbain DA, Foley KM, Fudin J, Gilson AM, Kelter A, Mauskop A, O’Connor PG, Passik SD, Pasternak GW, Portenoy RK, Rich BA, Roberts RG, Todd KH, Miaskowski C; American Pain Society-American Academy of Pain Medicine Opioids Guidelines Panel. Clinical guidelines for the use of chronic opioid therapy in chronic noncancer pain. J Pain. 2009; 10(2): 113-130などがある。AffirmHealth. Opioid Prescribing Guidelines: A State-by-State Overview. Feb 20, 2018. https://www.affirmhealth.com/blog/opioid-prescribing-guidelines-a-state-by-state-overviewなどを参照すること。
(注34)Public Law No: 114-198 (The Comprehensive Addiction and Recovery Act, CARA). https://www.congress.gov/bill/114th-congress/senate-bill/524/text, 原田圭子. 【アメリカ】2016 年包括的依存症回復法の制定. 外国の立法. 2016年. http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10212552_po_02690201.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
(注35)National Conference of State Legislatures. MARIJUANA OVERVIEW. 30 August 2017. http://www.ncsl.org/research/civil-and-criminal-justice/marijuana-overview.aspx
(注36)毎日新聞「米国:カリフォルニア、大麻解禁に列 6州目、合法化加速か」(2018年1月3日)
(注37)医療目的で使用が認められているのは30州とコロンビア特別区である。National Conference of State Legislatures. STATE MEDICAL MARIJUANA LAWS. 27 April 2018. http://www.ncsl.org/research/health/state-medical-marijuana-laws.aspx
(注38)時事通信ニュース「米、マリファナ取り締まり強化=前政権の方針転換に反発も」(2018年1月8日)
(注39)日本ペインクリニック学会 非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン作成ワーキングループ編. Ⅰオピオイドとは. In 非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン 第2版. 真興交易医書出版部. 2017年. pp. 23-24.
(注40)麻薬及び向精神薬取締法. http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=328AC0000000014&openerCode=1
(注41)Onishi E, Kobayashi T, Dexter E, Marino M, Maeno T, Deyo RA. Comparison of Opioid Prescribing Patterns in the United States and Japan: Primary Care Physicians’ Attitudes and Perceptions. J Am Board Fam Med. 2017; 30(2): 248-254.
(注42)「あなたは,医療用麻薬についてどのような印象を持っていますか。この中からあてはまるものをいくつでもあげてください」という質問に対し、「正しく使用すれば安全だと思う」「正しく使用すればがんの痛みに効果的だと思う」「精神的におかしくなると思う」「いったん使用し始めたらやめられなくなると思う」「だんだん効かなくなると思う」「がんの治療に悪い影響があると思う」「寿命を縮めると思う」「眠気や便秘などの副作用が強いと思う」「最後の手段だと思う」「使用することは道徳に反することだと思う」「「麻薬」という言葉が含まれていて,怖いと思う」「その他」「特にない」「わからない」から複数選択してもらった。内閣府. 平成28年度がん対策に関する世論調査 4 緩和ケアについて. 2017年1月30日. https://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-gantaisaku/2-4.html
(注43)蔵本浩一. ホスピタリストが把握しておくべき疼痛の評価と治療:総論. ホスピタリスト. 2014; 2(4): 887-899.
(注44)例えば、日本の研究では、死亡前48時間のオピオイド投与量の違いによって生存期間に有意差は見られなかった。次の文献を参照すること。Morita T, Tsunoda J, Inoue S, Chihara S. Effects of high dose opioids and sedatives on survival in terminally ill cancer patients. J Pain Symptom Manage. 2001; 21(4): 282-289, 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会編集. 第Ⅱ章 背景知識 6 患者のオピオイドについての認識. In がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2014年版). 金原出版株式会社. 2014年. https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2014/pdf/02_06.pdf
(注45)内閣府. 平成26年度がん対策に関する世論調査 4 緩和ケアについて. 2015年1月19日. https://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-gantaisaku/2-4.html
(注46)田中美穂, 児玉聡. 第五章 緩和ケア. In 終の選択―終末期医療を考えるー. 勁草書房. 2017年.
(注47)厚生労働省. 薬物乱用防止に関する情報. http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html
(注48)厚生労働省. 医療用麻薬適正使用ガイダンス~がん疼痛及び慢性疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス~. 2017年4月. http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/other/iryo_tekisei_guide.html
(注49)久原幸. 医療用麻薬(オピオイド)を含めた薬物療法:各論. ホスピタリスト. 2014; 2(4): 901-912.
(注50)急性期病院の外来患者調査(2014年)では、オピオイドを使用している外来がん患者67人中、がん疼痛または呼吸困難以外の目的でオピオイドを使用し、乱用や依存につながる「不適正」な使用が5人に認められたという。清水啓二, 池永昌之, 杉田智子, 嶽小原恵, 數野智恵子, 久保田拓志, 大越猛, 青木佐知子, 加村玲奈, 今村拓也. オピオイド使用外来患者の乱用・依存に関する適正使用調査. Palliative Care Research. 2016; 11(2): 174-181.
(注51)権哲, 細川豊史. 緩和医療における乱用, 依存. 医学のあゆみ. 2016; 259(9): 913-916.
(注52)日本ペインクリニック学会 非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン作成ワーキングループ編. Ⅱ慢性疼痛のオピオイド鎮痛薬による治療. In 非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン 第2版. 真興交易医書出版部. 2017年. pp. 31-32.
(注53)がんの終末期、致死的傷害、HIV/AIDSの終末期の痛みに対するオピオイド消費量の実態と適正量を調べた調査(2010年)では、日本における実際の消費量は適正量の15.5%であった。次の文献を参照すること。Duthey B, Scholten W. Adequacy of opioid analgesic consumption at country, global, and regional levels in 2010, its relationship with development level, and changes compared with 2006. J Pain Symptom Manage. 2014; 47(2): 283-297.
(注54)本稿は、笹川記念保健協力財団から「2018年度ホスピス緩和ケアに関する研究助成」を受けて行われた研究成果の一部である。
(ウェブへのアクセスはいずれも2018年6月14日)
プロフィール
児玉聡
京都大学大学院文学研究科 倫理学専修 准教授。京都大学大学院文学研究科博士課程修了 (博士 (文学))。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2003年に東京大学大学院医学系研究科の医療倫理学講座助手に着任。2007年、同専任講師。2012年10月より現職。主な著書に『入門・医療倫理I』(共著、勁草書房、2005)、『入門・医療倫理II』(共著、勁草書房、2007)、ジョンセン『臨床倫理学』(共訳、新興医学出版社、2006)、ホープ『一冊でわかる医療倫理』(共訳、岩波書店、2007)、『功利と直観』(勁草書房、2010)、『功利主義入門』(ちくま新書、2012)『マンガで学ぶ生命倫理』(化学同人、2013)など
⽥中美穂
⽇本医師会総合政策研究機構 主任研究員、慶應義塾⼤学SFC研究所 医療倫理・医療安全教育研究ラボラトリ 上席所員。1995年、早稲田大学第一文学部社会学専修卒業後、