2012.12.25

若者の心身が擦り切れるまで労働させ、働けなくなると使い捨てる「ブラック企業」。就活難を乗り越えても、さらなる困難が若者を待ち受けている。そんなブラック企業が蔓延る日本社会に、警鐘をならす人物がいる。NPO法人POSSEを立ち上げ、1000件以上の労働相談に関わる今野晴貴氏。

今年11月に「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」(文藝春秋)を上梓した。彼は「ブラック企業」が一部の企業の話ではなく、深刻な社会問題であることを提起する。日本を食いつぶす妖怪「ブラック企業」とは何であるのか。社会にどのような悪影響を及ぼしているのか。また、どのような対策を講じるべきなのか。著者である今野氏に話を伺った。(聞き手・構成/山本菜々子)

本当に「若者の意識が変わった」だけなのか

―― NPO法人POSSEの活動を始めたきっかけはなんでしょうか。

もともと、中央大学の法学部で労働法の勉強をしていたのですが、特に非正規雇用など雇用の問題に興味がありました。というのも非正規雇用の増加を若者の意識変化に求める議論がある一方で、当時の雇用政策は非正規雇用を増やしていく流れにありました。どんなに正規で採用してもらいたくても、非正規の枠しかない。これを「若者の意識」というのは無理があるだろう。しかもそのような議論を、政策を策定している人たちが言っていたんですね。「若者がおかしい」と。これはよくないと思い、2006年に仲間と一緒にPOSSE http://www.npoposse.jp/ を立ち上げたんです。

―― 学生主体で始まった団体なんですね。その後どのように展開していきましたか。

最初に取り組んだのは労働相談でした。大きな規模でやる見通しがあったわけではないのですが、やりはじめてみたら様々な相談が寄せられてきて、わたしたちもだんだん現場に鍛えられていきました。

―― 現在はどのような活動を行っていますか。

やはりメインの活動は労働相談ですね。あとは生活・貧困相談も受けています。今年は1000件弱のペースで相談が来ていますが、一番多いのが「自己都合退職を強要されている」との相談です。自己都合で退職すると、雇用保険が3カ月間もらえないんですね。会社のことを思い出すだけで、過呼吸になってしまって相談どころではない方もいます。そういう方の場合は親が相談に来るんです。「子どもが何も言えずに引きこもっているんです。多分仕事のことが原因だと思うんですが……」と。

わたしたちは労働相談活動として、法律上どのような解決策があるか、そして本人がどのように解決していきたいかを相談をしながら、問題解決のお手伝いをしていきます。弁護士・労働組合を紹介したり、行政の窓口に一緒に行くこともあります。

それから調査・政策提言という活動も行っています。年間1000件弱の相談があるといっても、当然これは氷山の一角ですよね。個別に対応しても、それで世の中が劇的に変わる訳ではありません。ですから現場で受けた一件の相談が社会でどんな意味を持っているかを考え、調査をして、社会に訴えかけなければならないわけです。

―― どのような調査を行っているのですか。

例えば、若者の「自己都合退職」が問題になったことがありました。「若者がすぐに会社を辞めてしまって問題だ」と。しかし、わたしたちが相談を受けている実感としては、「自己都合退職」を会社から強制的にさせられているケースもかなりの割合に上っているはずでした。若者の意志が弱くて「自分からどんどん辞めていく」というのは間違った認識なのではないかと思い、ハローワーク前でアンケート調査を行いました。すると、やはり自己都合で辞めた人の3割以上が会社の違法行為が原因で辞めていることが分かったのです。このように相談を受けるだけではなく、調査を行うことで、見えてくることが沢山あります。

「ブラック企業」とはなにか

―― いつごろから「ブラック企業」という言葉は聞かれるようになったと思いますか。

「ブラック企業」という言葉自体は、もともとネット上でスラングとして使われていたものです。それが多くの人に使われるようになったのは2010年くらいだと思います。ちょうどその年に初めて、「ウチの会社はブラック企業かもしれない」という労働相談を受けたんです。

―― なぜ著書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』を執筆されようと思ったのでしょうか。

今までのブラック企業を扱った本は、酷い事例を出し「おぞましい企業があるぞ」と面白がっていたところがあると思います。でもそれだけでは社会問題として捉えていないですよね。「若者からの告発!」だとか、「変な企業あるぞ!」だとか、センセーショナルに煽りたてるのを目的とするのではなく、相談を受ける中で見えてきたことを日本社会の問題として提示しなければならない。そう思いこの本を執筆しました。

―― 個別の問題にとどめておくのではなく、社会問題として提起したということですね。どんな企業が「ブラック企業」なのでしょうか。

日本は先進国では例を見ないほど、労働規制が緩い国です。日本企業は昔から、長時間労働・配置転換・全国転勤と、生活が破たんするような命令を正社員に出してきました。だって結婚や子どもはどうするんですか、という話ですよね。(実際、この過剰な働き方は女性は早期退職させて「主婦」に囲い込ませることともセットでした)。

それが許されてきたのは厳しい命令と引き換えに、終身雇用と年功賃金という見返りがあったからです。ブラック企業はこの制度を悪用します。命令の厳しさはそのままで、終身雇用と年功賃金など、見返りの部分が削られていくのです。しかもその命令は、終身雇用を前提にしていないために、ときに社員を辞めさせるためだけに行われることもあります。例えば、いじめのための無目的なノルマを課す、などです。

恐ろしいのは、日本のどの企業もいつでもブラック化できるということ。どんなにホワイトな会社であっても、ブラックな上司がいればその部署がブラック化してしまうかもしれない。会社全体がある日突然、ブラックになる可能性だってある。

こんな事案があります。交通系の企業がブラック企業のコンサルタントを雇いました。そのコンサルタントが「契約社員を増やせば、利益が上がる」とアドバイスをした途端、今まで安定していた会社が、残業や大量のノルマを社員に課すようになり、「ブラック企業」になってしまった。

いつブラック化してしまうか分からない点が重要なポイントです。もしかしたら自分を育てるための厳しい命令かもしれませんし、ただ酷使するためだけの命令なのかもしれない。社員には、自分の会社がブラック化しようとしているのか分からないのです。

もともと命令の権限が強く、これを規制する方法がないために、ブラック化を抑止できないのです。よく「ブラック企業は全体のどのくらいの割合ですか」と聞かれることがあります。ですがわたしは、全体の中での割合よりも、ある企業がブラック化することを「止められない構図」の方が、より本質的な問題だと思っています。

ブラック企業の見分け方

―― ブラック企業を識別する方法はありますか。

よく「カタカナだと危ない」「社長が有名人だと危ない」とか言いますよね。そのような傾向もないとは言えないですが……まあ、都市伝説ですね(笑)。

実際、名前とか社長の気質といった、いい加減な定義で煽り立てるやり方には賛成しかねます。「まともな企業」をきっちりと応援してくことこそが、ブラック企業を根絶する重要な手段でもあるからです。

いかがわしい労務管理の方法や脱法行為の有無こそが、客観的な指標になります。

具体的には、募集の形式と労働法の使い方です。この2つの特徴が見られたら「ブラック企業」と断定していいと思います。

ひとつ目の募集の形式ですが、例えば、社員数が1000人の企業で、毎年200人も新規採用していたら、これは怪しい。毎年200人も採用していたら、社員数はもっと多いはずなんです。つまり、ほとんどの社員を辞めさせているわけです。

辞めさせ方は2つ。採用した社員を選別し、いじめて辞めさせるパターンと、過酷な労働について来られず、どんどん振り落とされるというパターン。いずれにせよたくさん採用して、どんどん使いつぶしていっているんですね。

これから就職活動をされる方は、募集人数と企業の規模のバランスに注目して欲しい。あと社員の平均年齢がわかるといいですね。若い人ばかりの場合、働き続けられない可能性が高まりますから。

ただ、こうした離職率だけでは、「状況証拠」にすぎません。もしかしたら、積極的にキャリアアップして、いい意味での独立や転職ができる会社なのかもしれないからです(ただし、その割合はかなり少ないことに注意してください)。

そこで、ふたつ目の労働法。ブラック企業は法律の抜け穴を意図的にかいくぐろうとします。例えば、基本給を月20万円としながら、じつは「固定残業代」として月100時間の残業が含まれていることがある。こういう給与体系の企業はブラックです。

明確に応募者を騙そうとしていますよね。一般的に基本給は、週40時間の法定労働時間における給料のことを指します。月給20万円に残業100時間が入っていることを踏まえて計算し直すと、だいたい月給12万円程度にまで落ちる。年功賃金になっていなければ辞めるまでこの給料が支払われるわけです。過酷な低賃金労働ですよ。あまりの重労働に、過労で心臓や脳をやられて突然死んでしまう事件も起きています。でも「基本給」という言葉は、法律で定義されているわけではない。ブラック企業はこれを逆手にとっているんですね。

きっと「ウソをいう意図はなかった。ウチではそういう使い方だった」というのが、彼らの言い分なんでしょう。しかし、だます意図がないのならば、はじめから「基本給12万円で、残業があります」と書けばいいじゃないですか。しかしそう書かない。なぜなら12万円では優秀な人材が応募しないから。だからこそ、彼らは法律の抜け穴をかいくぐるわけです。

恐ろしいことに、このパターンは、外食、小売り、IT、介護などの超大手企業にも広がってきています。日本の新卒の受け皿の相当の部分が「ブラック企業」であることが疑われます。

さらに、最近多いパターンは、募集・内定・本契約の間で内容が変わってくるというパターンです。これも、明確に違法とは言えません。本契約の際に働く側から「同意」さえとれば、それで法的な問題はクリアできてしまうのです。しかし、これもだます意図が濃厚です。

このように、法律の趣旨をかいくぐり、積極的にだまそうとする企業は、確実にブラック企業であると断言できます。

仮に、これらに該当しながら、「わが社はブラック企業ではない」という反論があるとすれば、こういう疑わしい労務管理はすぐにやめればよいのです。法律は、こうした労務管理を義務付けてはいないのですから。そうすれば、疑われずに済みます。それだけのことです。

会社の名前や社長の気質はもちろん、離職率も場合によってはどうしようもないこともあり得ます。しかし、若者をだます労務管理は、今すぐにやめることができるはずなのです。

予見できない理不尽さ「ロシアンルーレット社会」

―― 著書では、ブラック企業が存在する社会を「ロシアンルーレット社会」と表現されていますね。

湯浅誠さんは現代の日本を「すべり台社会」と表現されていました。湯浅さんが言うような現象が起きていることは確かです。例えば、高校を卒業して正社員で就職したものの、会社でのトラブルが原因で、中小企業に転職。しかし人間関係でうまくいかずに、結局、派遣になった。数年続けていたが、リーマンショックの影響で首を切られてしまい貧困に陥ってしまった。このように、いろいろな関係が少しずつズレていく、なだらかに貧困へと落ちていくのが「すべり台社会」のイメージです。

しかし、ブラック企業に入ってしまった場合は一撃です。新卒の正社員だったら安定の象徴、勝ち組だったはずです。それを日本社会は「目指せ!目指せ!目指せ!」と言ってきた。でも、入社した企業がブラックだったらどうなるか。過酷な労働に耐えかねて、精神を病めば、途端に貧困に落ちていく。先ほどもお話したように、例え今はホワイト企業でも、ブラック企業に変貌する可能性だってあるし、さらにいえば、ホワイト企業の中の「ブラック部署」や「ブラック上司」もある。これらも「止められない」のですから、構図の根っこはブラック企業と同じです。

こうなると貧困のイメージがまったく違いますよね。正にロシアンルーレットのようです。いつ、どこに、だれが撃たれるかわからない予見しづらさと理不尽さがある。隣の友人がいきなり犠牲になるかもしれないんです。もしかしたら次は自分の番かもしれない。

「国滅びてブラック企業あり」

―― 著書では「国滅びてブラック企業あり」という印象的なフレーズも使われていましたね。ブラック企業が社会にどのような悪影響をもたらしているかについてお聞かせ下さい。

若者がどんどん使い捨てられ、鬱病になったり身体を壊したりすると、医療費負担が増えていきますよね。実際に鬱病にからむ治療費がどんどん増えており、厚労省が問題視しているんですね。さらに働けなくなるわけですから、日本の労働力人口が減って医療費が増える。すると財政問題にも関わってきます。

加えて少子化も促進します。長時間労働、低賃金、鬱病。これじゃ結婚できないですよ。子どもを育てる余裕なんてない。ますます少ない若者で多くの老人を支えなきゃいけない。ブラック企業を野放しにしていくことが財政破綻の要因になることを強調したい。

最近世代間対立が煽られてきていますが、ブラック企業に関しては世代間での利害は対立しません。若者だけではなく、老人にとっても、企業経営者にとっても、あらゆる立場の人にとってブラック企業は邪魔なんです。だって、若い人が使い捨てられていったら、誰が年金払ってくれるんですか? 親にとっても子どもが鬱病になったら困りますよ。自分が支えなきゃいけない。

しかも若い人たちが真面目に働きにくくなるんですよ。裏切って、騙して、正社員と偽って入社させて、使いつぶす企業が世の中にあることで、まともな会社の人材育成も困難になっています。若い人も、自分の企業がホワイトなのかブラックなのか疑心暗鬼になってしまう。その結果、「育てよう」と思って厳しい育成を行っていても、「ブラック企業かもしれない」と思われてしまうのです。端的に言って、ブラック企業があることは社会の迷惑なんです。

よく、経営側の方が「若者の方が、耐える力がなくなっている」とおっしゃいます。ですが、もしこのことが仮に事実だとしても、それとブラック企業の問題はまったく別物です。ブラック企業は若者をはじめから食いつぶすことを目的にしているからです。それどころか、逆に、ブラック企業をそのように擁護することで、まともな企業経営者が自身の首を絞める結果になってしまいます。

―― どのような社会的対策が必要だとお思いですか。

企業の命令権限に制約を設けていくことが重要です。しかし、これには日本型雇用システムの大転換が必要です。

そこで、直近に取り組むべき課題としては、労働時間規制の政策提言があげられます。これは日本国民だれもが反対しないだろうと思いますよ。現状では恐ろしいことに、アルバイトですら、事実上労働時間に制限がありませんから。とにかく、健康を害して、鬱病や過労死・自殺を防止する必要があります。これで日本の医療費はかなり軽減するはずです。また、少子化の防止にもつながりますし、保育、介護の公費軽減にもつながっていきます。

そのためには、残業代の割増などではだめで、労働時間に上限規制を策定する必要がある。これをどの程度にするのかは、日本全体での議論が必要でしょうが、少なくとも、健康を維持できる水準で、明確な歯止めをかけるべきです。

わたしは大学生のころに労働相談をはじめて7年になりますが、最近では自分より若い相談者が増えてきました。相談を受けていると感じるのは、彼らが「どこまで頑張れば社会人として認められるのかわからない」という状況で、無茶な企業の命令も受け入れているということです。

サービス残業や昼休みの労働、無給の休日出勤の相談などは、珍しくありません。それでも、「ついていけない自分は社会人失格なんでしょうか」といいます。社会全体で「ここまで働いたら、もういいんだよ」「十分社会人としてやっているよ」と、線を明確にする必要があると思うのです。そういう線がないことに、ブラック企業は付け込んでいるのです。どこまで働かせても「半人前」扱いして、使いつぶすわけです。

これまでも明確な基準があったわけではありませんが、それを「悪用」する企業は現在よりは少なかったろうと思います。労働時間の上限規制は、日本で誰もが納得する「社会人の形」をつくる最初に契機になるのではないかと思います。

ブラックキャリアセンター!?

―― 若者を支える社会作りも重要になってくると思います。

大学では学生の就職を支援するために「キャリアセンター」というものを設置していますが、一部の大学では、学生がブラック企業に行かないように助ければいいのに、むしろどんどんブラック企業に送り込んでいるところがあります。この大学は就職出来ると親にアピールして、受験者を増やそうとしているんですね。そのために、とんでもない企業にも入れて、結果的に若者を食い物にしているんですよ。

言うならば「ブラックキャリアセンター」ですよね。ブラックキャリアセンターのある大学はブラック大学とも言えます。ちゃんと社会的に批判しなくちゃいけない。教師も親も、われわれNPOも労働組合も、若者がブラック企業に行かないようにする。また、もし入社してしまっても支えられるようにする。

そこで大切なのが、これまでの「正社員になればなんでもいい」という価値観から転換することです。むしろ、就職することで、若者を使いつぶす企業があるのだということを、しっかりと理解しておく。そして、そこに入った若者、そこを辞めようとしている若者、違法行為を正そうとしている若者を、責めず、むしろ支えていく。

「正社員化」も、「自己都合退職」も、あるいは「ブラック企業の見分け方」もすべて個人的な問題設定です。とにかく個人の問題で終わらせちゃいけないんです。社会で考えていかなくては変わらない。

――「ブラックキャリアセンター」は新しい言葉ですね。

「キャリアセンターで『労働条件を企業に聞くな』と指導されているけど、それで良いんだろうか」という相談を受けたことがあります。そんなの、まさにブラックじゃないですか。なんでもいいから就職しろと、大学のためにお前の将来はどうでもいいんだってことでしょう? そういうキャリアセンターが大学連盟から糾弾されるような仕組みを、業界ぐるみで作っていく必要があると思います。社会的な取り組みはいろいろなレベルで可能だと思います。誤解がないようにお話しておくと、もちろんブラックではないキャリアセンターも沢山ありますよ。

―― キャリアセンターがそもそもブラック企業を把握できていない可能性もあると思います。どのような対策が可能でしょうか。

ぼくらのようなNPOとキャリアセンターで研究会を開くといいと思います。実際に、本を読んで下さったキャリアセンターの方から、「ブラック企業があることは知ってはいたけれど、就職のチャンスを活かしたほうがいいと思っていました。しかし、認識が甘かったようです。相手は戦略的に若者を使いつぶそうとしている。」という趣旨で講演依頼をいただいたことがあります。少しずつブラック企業の恐ろしさに気づいてもらえているのかもしれません。彼らは労働相談のプロじゃないし、わたしたちも教育のプロじゃない。連携することでお互いの長所を生かし合い、ブラック企業対策を充実させられるのではないでしょうか。

あとはブラック企業リストをデータベース化して共有するのも良いと思います。わたしたちが受けた労働相談と、キャリアセンターが学生や卒業生から受けた相談をネットワーク上でシェアする。そうするとブラック企業もあわてるんじゃないんですか。「ブラックリストに乗ってしまった!」と。このように学生をブラック企業に送り込まないために、色々な取り組みをすることが可能です。

―― 最後に読者の皆さん、あるいは社会に伝えたいことをお聞かせください。

最近、このような読者の声を聞きました。

「若い奴の根性とかいう話じゃない。ブラック企業の問題というのは、日本が教育費とか20数年かけて育てた人間が、たった一、二年でぼろぼろにされて使い捨てられるんだ」

ブラック企業の存在は誰にとってもいいことがないんです。そのことを知ってほしい。

また、就活生や、若い人たちには、「とにかく鬱病にならないようにして欲しい」と言いたい。自分の体を第一に考えて、無理をしないこと。ブラック企業かどうか、見分けるのも大事だけど、入らざるを得ない時もあるでしょう。でも、入ってからも諦めないでください。違法なことをされたらその記録をとっていれば、是正させられる可能性がありますから。

中高年の人に対しは、若者がどうのじゃなくて、貴方にとっても困る問題ですよということを再度強調したいですね。一緒になってブラック企業を撲滅させるために、世代を超えて、皆で問題に取り組んでいきましょう。若い人を支えて、良い日本を作りましょうというメッセージをお伝えしたいです。

プロフィール

今野晴貴POSSE代表

1983年、宮城県生まれ。NPO法人POSSE代表。一橋大学大学院社会学研究科博士課程在籍(社会政策、労働社会学)。日本学術振興会特別研究員。著書に『マジで使える労働法』(イースト・プレス)、『ブラック企業に負けない』(共著、旬報社)など。2006年、中央大学法学部在学中に、都内の大学生・若手社会人を中心にNPO法人POSSEを設立。年間数百件の労働相談を受けている。

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