自然水系へのEM投入から「環境教育」を考える

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公的研究機関による、自然水系へのEM投入の評価

 

EMについては、複数の公的研究機関から河川や海への投入に否定的な見解が出されていますが、肯定的な見解を出しているものは私が調べた範囲では見つかりません。

 

河川や湖、海などの自然水系に微生物資材を投入する問題性については、福島県生活環境部水・大気環境課が作成した『微生物資材の水環境中での利用に関するQ&A』(注3)に分かり易くまとめられています。

 

(注3)『微生物資材の水環境中での利用に関するQ&A』(福島県生活環境部水・大気環境課)

 

このQ&Aの一部を紹介します。

 

 

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「環境教育」としての授業内容を見直す学校も

 

2012年7月に朝日新聞にEMを川の水質浄化に用いる環境教育が青森県内の学校に広がっているとして問題提起をする記事が掲載されました。(注4)これを契機に、保護者の間でも話題となりEMを使う授業をしていた小中学校の中にも見直しの機運が生まれました。

 

(注4) 朝日新聞:EM菌効果の「疑問」、検証せぬまま授業 「水質浄化」の環境教育(2012年7月3日)

 

青森市内のある中学校では、数代前の校長時代にEMを使った授業が導入されましたが、2011年に赴任してきた校長により、漫然として継続されている行事の見直しが始められ、EMを使った授業も、ゆとり教育の撤廃に伴う見直し対象となっていました。

 

私は当時中学生の子を持つ親でもあり、この件に興味を持ったことからその校長先生と取材を兼ねて意見交換をさせて頂きました。EMを推進する立場の人達もその学校を訪れて校長先生と何度か面談したようです。

 

様々な意見を参考にした上で、その校長先生はEMを使った授業の指導を担当していた教員と、EMの培養に米のとぎ汁を提供して長年協力してきた保護者の了解を得て、総合学習でのEMを使った環境教育の廃止を決定しました。廃止の理由は、(1) 効果の検証が不確かである、(2) 総合学習の内容をキャリア教育に移行する、というものでした。

 

やはり、「効果の検証が不確かである」という事が、授業を継続するかどうかの判断として大きなポイントとなった様です。同様に、ゆとり教育の撤廃を契機に「環境授業」の内容を見直しする小中学校は他にも出てきています。EM批判記事が出たのは丁度よい機会だったのかもしれません。

 

 

公的機関の専門家の意見も参考に

 

EMも微生物資材として効果が期待出来る範囲で上手に利用すれば良いと思いますが、よく調べてから使わないと、効果が無いばかりか逆に何らかの害を及ぼしてしまう可能性があります。

 

これは、環境活動でよく利用されるケナフ(アフリカ原産の植物)等でも同様な指摘がされています。(注5)環境に良かれと願っての「善意」からであっても、それが正しい方法であるとは限りません。

 

(注5)『ちょっと待ってケナフ!これでいいのビオトープ?』(上赤博文著 地人書館)

 

特に学校や自治体は、地域住民との良好な関係を保っていくために、善意からの申し出を断り難いという事情もあると思います。しかし、その手段に対して問題指摘がされていないか、学校の授業や自治体の行事などに採用する前によく調べて検討する慎重さも必要でしょう。

 

その分野について詳しい、大学や公的研究機関の複数の専門家に相談してアドバイスをもらうのも判断の助けとなります。授業で検証実験をする場合も、適切な対照実験を組み込むなどの工夫が必要ですし、最後の考察では先入観に影響された解釈を避けることも大事です。

 

できるだけ科学的な思考訓練を受けた人に指導に加わってもらうのが望ましいですし、こうした側面からもバックグラウンドのしっかりとした専門家のアドバイスを受けることは大きな助けになると思います。

 

 

※本稿は、WEBRONZAに「環境教育と善意のEM投入」という題で書いた寄稿記事をベースに、大幅に加筆修正をしたものです。

http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2013071200007.html

http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2013071200008.html

 

 

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