シノドス・トークラウンジ

2021.05.10

2021年5月12日(水)開催

新しいリベラリズムの可能性――来るべき福祉国家の理念とは?

橋本努 社会哲学 ホスト:伊藤隆太

開催日時
2021年5月12日(水)20:00~21:30
講師
橋本努
ホスト
伊藤隆太
場所
Zoom
料金
1100円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

自由原理 来るべき福祉国家の理念

橋本 努

振り返るとこの10年間、日本でも他の先進諸国でも、リベラル派の勢力はじり貧の状況が続いてきました。代わって、保守主義やポピュリズムの政治が台頭しています。リベラルを支えるリベラリズムの思想は、いったい失効してしまったのでしょうか。

シノドスでは、2018年に「シノドス国際社会動向研究所」を立ち上げて、「新しいリベラル」の可能性について検討を重ねてきました。

今回、シノドス・トークラウンジでは、2021年2月に刊行された橋本努著『自由原理――来るべき福祉国家の理念』(岩波書店)を取り上げて、新しいリベラリズムの可能性について議論します。

本書は「自由の新たな始原(アルケー)」を探るという、ストレートな思想書です。それと同時に、その始原(アルケー)によって、社会の新たないしずえを築く試みでもあります。議論の射程は広く、100年単位で福祉国家の行く末を展望しています。

これまで私たちは、「福祉国家と新自由主義の対立」をめぐって政策と思想の議論を続けてきました。しかし最近では、一方でマルクスが再評価されるようになり、他方で思想の中心問題は、「幸福/ウェルビイング」や「ナッジ」や「ケイパビリティ(潜在的可能性)」に移っています。

本書『自由原理』は、人々の善き生(ウェルビイング)を目指す福祉国家が、しかし実は、目指しているはずの「善き生」の理想について、よく分かっていないという根本的な問題から出発します。そして、アマルティア・センの「できること(ableness)としてのケイパビリティ」に代わる「潜勢的可能性(ポテンシャリティ)としてのケイパビリティ」論、キャス・サーンスティンのリバタリアン・パターナリズムに代わる「アスリート・モデル/活動的生(ヴィタ・アクティーヴァ)モデル」、フリードリッヒ・ハイエクの自生的秩序論に代わる(あるいは幸福の経済原理としての)「自生的な善き生の理論」、をそれぞれ提起しています。

思想の議論は、アイディアの宝庫です。皆さんといっしょに、現代政治思想の根本問題について議論します。どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

橋本努社会哲学

1967年生まれ。横浜国立大学経済学部卒、東京大学総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、北海道大学経済学研究科教授。この間、ニューヨーク大学客員研究員。専攻は経済思想、社会哲学。著作に『自由の論法』(創文社)、『社会科学の人間学』(勁草書房)、『帝国の条件』(弘文堂)、『自由に生きるとはどういうことか』(ちくま新書)、『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社メチエ)、『自由の社会学』(NTT出版)、『ロスト近代』(弘文堂)、『学問の技法』(ちくま新書)、編著に『現代の経済思想』(勁草書房)、『日本マックス・ウェーバー論争』、『オーストリア学派の経済学』(日本評論社)、共著に『ナショナリズムとグローバリズム』(新曜社)、など。

この執筆者の記事