シノドス・トークラウンジ

2024.05.08

2024年7月5日(金)開催

【トーク】ケアの倫理を考える

岡野八代 ホスト:橋本努

開催日時
2024年7月5日(金)20:00~21:30
講師
岡野八代
ホスト
橋本努
場所
Zoom【後日アーカイブ動画での視聴も可能です】
料金
1500円(税込)

少子高齢化がすすむ日本社会で、介護や子育てなどのケア労働は、ますます重要な意義をもつようになりました。ケアというこの普遍的な営みを、社会的にどのように再編していくべきなのか。これは政治哲学の最先端の問いでもあり、近年になって、興味深い理論や哲学が、次々に現れています。

そして今年1月、この分野の「金字塔」というべき本が現れました。岡野八代著『ケアの倫理――フェミニズムの政治思想』(岩波新書)です。本書は、20世紀前半から現代にかけて、フェミニズムの運動がどのような変遷をたどってきたのかについて、大変見通しのよい説明を与えています。そのうえで、キャロル・ギリガンが1982年に公刊した『もうひとつの声で――心理学の理論とケアの倫理』を一つの転換点として捉え、この本がその後のフェミニズム研究に与えたインパクトを紹介しています。

そこから見えてくるのは、このギリガンの議論が、その後のケア論研究に対して大きなインスピレーションを与え、さまざまな理論と哲学が開花していった、という流れです。非常に多くの示唆的なことが、本書に描かれています。

これまで女性たちは、その「女らしさ」という観点から、ケアの仕事やケアの役割を多く担ってきました。そして現在も、そのような社会規範は支配的であると思います。女性たちは、そして男性たちもまた、ケアの仕事や役割を、どのように受けとめるべきなのか。ケアの倫理/ケアの哲学は、ケアを担う人たちの一人ひとりの悩みに寄り添って、その声を紡いでいきます。そしてそのような声の織り成す言説空間から、哲学的な議論を展開します。このような現場からの声をベースにしたアプローチは、ケアの倫理という学問の意義を高めていると思います。

著者によれば、「ケアの倫理」とは、社会における「もう一つの声」です。このもう一つの声は、社会にあふれています。にもかかわらず、私たちの社会は、それを掬い取るような、あるいはそれに耳を傾けるような社会になっていない。そういうギャップがあります。ケアに満ちた社会に向けて政治を動かすために、いま、何が必要なのでしょうか。

具体的に、家事労働の負担問題(例えば有償化計算)、性的搾取、中絶の是非、介護労働の負担、子育て支援、クオータ制といった問題や政策論の背後には、どのような哲学があり、またどのような主張がなされてきたのでしょうか。シノドス・トークラウンジでは、著者の岡野八代先生をお招きして、ケアの倫理とフェミニズムの現在・過去・未来を議論します。皆様、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

岡野八代

同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科(西洋政治思想史・フェミニズム理論)。政治学博士。著書に『戦争に抗する――ケアの倫理と平和の構想』(岩波書店)、『フェミニズムの政治学――ケアの倫理をグローバル社会へ』(みすず書房)、『シティズンシップの政治学――国民・国家批判』(白澤者)など。

この執筆者の記事

橋本努社会哲学

1967年生まれ。横浜国立大学経済学部卒、東京大学総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、北海道大学大学院経済学研究院教授。専門は社会哲学。単著に『自由の論法』(創文社)、『社会科学の人間学』(勁草書房)、『帝国の条件』(弘文堂)、『自由原理』(岩波書店)、『自生化主義』(勁草書房)、Liberalism and the Philosophy of Economics (Routledge)、『解読ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」』(講談社)、『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』『「人生の地図」のつくり方』(筑摩書房)など。共著に、橋本努/金澤悠介『新しいリベラル』(ちくま新書)、編著に『環境思想入門』(勁草書房)、共編著に那須耕介/橋本努編『ナッジ!?』(勁草書房)など。

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