シノドス・トークラウンジ

2025.06.02

2025年7月17日(木)開催

【トーク】アーレントと映画で、ウクライナ戦争を考える

重田園江 政治思想 ホスト:橋本努

開催日時
2025年7月17日(木)20:00~21:30
講師
重田園江
ホスト
橋本努
場所
ZOOM【後日、アーカイブ配信もいたします】
料金
2500円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

トランプ大統領は以前、「私だったら一日でウクライナ戦争を解決できる」と豪語しましたが、結局、停戦をまとめることはできませんでした。しかもトランプは、プーチンの側に立って、ウクライナの領土割譲を求める宥和的な立場に立ちます。これで本当に、戦争は解決できるのでしょうか。ロシアのウクライナ侵攻を認めると、今度は別の国が小国を力ずくで侵略する戦争を、防げないのではないでしょうか。いや、そうではなくて、トランプの融和策は正しいのであって、西側諸国の強いウクライナ支援こそ間違っているのでしょうか。

シノドス・トークラウンジでは、このウクライナ戦争を考えるうえで、重要な政治思想・政治批評の書を取り上げます。重田園江著『真実の語り手 アーレントとウクライナ戦争』(白水社、2022年)です。本書は、戦争開始後の早い時期に、緊迫する空気のなかで書かれ、話題になりました。いま改めて読むと、その考察の正しさと鋭さに驚かされます。本書は、二部構成からなります。第一部は、アーレントと真理と政治の問題を、第二部は、映画と政治とナショナリズムの問題を、それぞれ論じています。

アーレントはベトナム戦争で、米国政府が政策決定のために依拠した軍の報告書が、嘘だらけであることを問題にしました。現在のロシア政府もおそらく、似たような状況に直面しているのでしょう。ロシア政府は、戦況の正しい把握に基づいて意思決定できていない可能性があります。

アーレントによれば、政治(とりわけ戦争)と真理は相性が悪い。真理を開示する人は、各国の政治家ではない。むしろ共同体の外部にいる人たちであり、例えば哲学者、科学者、芸術家、歴史家、ジャーナリスト、小説家、などです。私たちは、そのような人たちの言論に耳を傾けることが必要です。こうしたアーレントの真理観・政治観から、本書の第二部では、映画監督のセルゲイ・ロズニツァに焦点が当てられます。そしてこの映画監督の観点からウクライナとロシアの関係を読み解くと、これがとても面白いのです。

戦争における真理を手にするためには、本書のアプローチがとても役立ちます。シノドス・トークラウンジでは、著者の重田園江先生をお招きして、ウクライナ戦争の現在・過去・未来を議論します。皆様、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

重田園江政治思想

明治大学政治経済学部教授、専門は政治・社会思想史
主著は『統治の抗争史 フーコー講義1978-79』(勁草書房、2018年)。ほかに『フーコーの穴 統計学と統治の現在』(木鐸社、2003年)、『連帯の哲学I フランス社会連帯主義』(勁草書房、2010年)、『ミシェル・フーコー 近代を裏から読む』(ちくま新書、2011年)、『社会契約論 ホッブズ・ヒューム・ルソー・ロールズ』(ちくま新書、2013年)、『隔たりと政治 統治と連帯の思想』(青土社、2018年)など。今年8月に新著『シン・アナキズム』(NHKブックス)を刊行予定。

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