2013年度参院選挙を医療・介護の視点から考える

▶シノドスの電子メールマガジン「αシノドス」

https://synodos.jp/a-synodos

▶真の教養を身に着ける「シノドス・サークル」

https://synodos.jp/article/20937

7月4日公示、7月21日投開票の第23回参議院議員選挙。衆参ともに自公が過半数の議席を獲得し「ねじれ」が解消されるのか、またネット選挙運動の解禁など、注目すべき点は多い。一方、従来の選挙同様、各党の掲げる公約・政策は、投票前に十分に検討しなくてはならないことは変わらないだろう。そこでシノドスでは、21日の投開票日に向けて、さまざまな専門家に、各党の公約・政策を特定のテーマに着目した論考をご寄稿いただく。本稿を参考に、改めて各党の公約・政策を検討いただければ幸いです。(シノドス編集部)

 

 

はじめに

 

いよいよ参議院選挙の投票日がせまってきた。選挙の主要な争点は、アベノミクスにおける経済政策となっているが、生活に密接にかかわる社会保障の問題が軽視されつつあるのではないだろうか。社会保障と税の一体改革に絡んで、8月中に社会保障制度改革国民会議における最終報告書がまとまる見通しだが、医療、年金、介護、福祉といった具体的な各論は、その後の議論となりそうだ。

 

その意味でも、法律可決における政治力学から考えて、今回の参議院選挙は「ねじれ国会」の解消につながるのか、つながるにしても与野党の議席数がどの程度の差になるのか。その結果によって具体的な社会保障政策の行方は異なるであろう。

 

この重要な選挙を審判する有権者が、良識な判断を下す意味で、今回は医療や介護を中心に各政党間の主張について分析してみたい。なお、紙面や資料の関係から、自民党、公明党、民主党、日本維新の会、みんなの党、日本共産党、社民党の7党にかぎって触れることとする。

 

 

社会保障制度全般について

 

■自民党

 

政権与党に復帰してからの初の国政選挙という意味合いをもつ今回の参議院選挙において、その堅実さが印象的である。とくに、「自民党主導で昨年まとめられた『社会保障制度改革推進法』にもとづき『社会保障制度改革国民会議』の審議の結果等を踏まえて、医療制度、介護制度、年金制度などの社会保障制度について必要な見直しを行います」という一文に象徴される(https://www.jimin.jp/election/results/sen_shu46/political_promise/bank/e_002.html)。

 

つまり、今回の自民党の社会保障政策の基本スタンスは、現在の社会保障制度改革国民会議の方向性に同調していくということを意味しており、具体的な各論における核心部分は触れていない印象だ。ただ、「自助」「自立」を第一に、「共助」と「公助」を組み合せるといったコンセプトを鮮明にしめしていることから、社会的弱者には一定の社会保障は機能させていくが、基本的には自助努力を社会保障政策の基本と考えていいだろう。

 

 

■公明党

 

公明党は『マニフェスト2013参院選重点政策(http://www.komei.or.jp/campaign/sanin2013/manifest2013/)』において、包容力のある「共助社会」を目指すと明記しており、自民党の「自助」「互助」を第一に、というコンセプトと異なる見解をしめしている。具体的に『公明党政策集ポリシー2013(http://www.komeito.com/policy2013/)』では、「社会的包容力」の構築とめいうって、孤立死ゼロ対策などを例に地域ネットワーク化の必要性をのべて、総合的な「命を守るネットワーク」の構築を重要視している。

 

 

■民主党

 

民主党の社会保障施策等の参議院選挙重点政策(http://www.dpj.or.jp/policies/manifesto2013)などを見るかぎり、医療・介護・年金はそれなりには触れられてはいるが、自民党と比べると、やや「子ども」施策にシフトした印象を受ける。たしかに、「子どもから高齢者にわたる、持続可能な社会保障制度を構築します」と明記されているが、子ども施策に力点が置かれている側面は否めないであろう。

 

また、「『歳入庁設置法』を制定し、税金と医療・年金の保険料、雇用保険の保険料をまとめて扱う歳入庁を設置します」と、従来の主張が繰り広げられている。

 

 

■日本維新の会

 

日本維新の会の社会保障施策の骨子は、受益(給付)と負担(保険料)を明確化し、社会保険制度を基軸に社会保障制度を持続していくことが明確化されている(https://j-ishin.jp/pdf/2013manifest.pdf)。とくに、税を入れて一般的に保険料を下げるのではなく、さきに低所得者層に税を入れて保険料を下げるといった税投入の優先順位について再構築すべきとのべている。一般的に現在の保険料や税の使い方において大きく見直しをはかるべきとの主張がうかがえる。

 

また、資産における課税も視野に入れながら、所得税や社会保険料の不足のある場合には、死亡清算時に「年金目的特別租税」の創設も主張されている。

 

 

■みんなの党

 

『みんなの政策アジェンダ2013(http://www.your-party.jp/news/office/002185/)』において、「女性も男性も働きながら子どもを生み育てることができる環境、さらには安心してお年寄りの介護ができる環境の整備が必要です」と、社会保障政策においては、「男女共同参画」を骨子に日本の経済成長がコンセプトとしてあげられている。また、「子育て・介護・医療等々。これらの分野は、「安全・安心を守る」という名目で規制が極めて強い分野です」とのように、福祉供給分野の規制緩和が実施されることで、民間活力の導入によってよりよい福祉が達成されるとされている。

 

基本的には道州制を基本とした地方分権化路線を推し進めている点が印象深い。そして、税と保険料を一体的に徴収する「歳入庁」を創設している部分は民主党と重なる部分を認識できる。また、マイナンバー制度を活用して、最終的には基礎年金と生活保護を統合した「ミニマムインカム」の提唱を主張している。

 

 

■社民党 

 

社民党の政権公約『強い国よりやさしい社会(http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2013/commitment/)』においては、格差や貧困問題を中心に取り組む姿勢が前面に打ち出されている。とくに、子どもの「貧困の連鎖」などを指摘し、生活保護制度の見直しについて批判した内容が印象深い。

 

 

■日本共産党

 

「日本共産党は、『健康で文化的な最低限度の生活』をすべての国民に保障し、社会保障の増進を国の責務と明記した憲法25条の立場から、だれもが安心でき、将来に希望のもてる社会保障制度を構築する改革に取り組みます」というコンセプトにもとづいて論を展開している。

 

基本的に、旧自公政権、旧民主党政権、現自公政権における社会保障施策を批判し、大企業の富が集中する社会システムを是正し、真の意味での財の再配分を目指すことが社会保障施策には不可欠との見解を主張している(http://www.jcp.or.jp/web_policy/html/2013sanin-seisaku.html)。

 

 

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.268 

・植原亮「エンハンスメント論争の行きつくところ――BMIから徳へ?それとも?」

・出井康博「留学生という名の単純労働者」

・堀内進之介「学び直しの5冊〈現代社会〉」
・有馬斉「患者が望まない延命治療を行うことは正当化できないパターナリズムか――『死ぬ権利はあるか』出版に寄せて」
・穂鷹知美「移動の自由がもたらす不自由――東ヨーロッパを揺り動かす移住・移民問題」
・多賀太「男性の「ケア」参加はジェンダー平等実現の決め手となるか」
・吉永明弘「ローカルな視点からの環境論」