ドル安ではない。円高こそ問題だ。 

為替レートは84円台、日経平均は9000円割れと、円高・株安がつづいている。

 

日銀は8月30日、臨時金融政策決定会合を開催、追加の金融緩和策を決定。ついで政府も追加経済対策を打ち出した。だが、まったく決定打とはなっていない。メディア上でも懸念の声は多いが、指摘されている議論には疑問符をつけざるを得ないものもある。

 

以下では円高・株安をめぐる日本経済の現状と政府・日銀の政策判断について、著名エコノミストの浜矩子氏の論説「円高ではない。これはドル安だ」(http://webronza.asahi.com/business/2010083100001.html)を例にとって論点を整理し、読者の方々の理解に供することにしよう。

 

 

為替問題は「ドル安」なのか?

 

浜氏はまず確認と整理を要する点として、ふたつあげている。

 

一点目は、為替の現状は円高ではなくドル安によるものであり、現代はドルに対する過大評価の歴史的修正と見るべきというもの。二点目は、中央銀行は政府の景気対策機関ではなく、通貨価値の番人であり、政治と政府からの独立性を制度的に明記している、というものだ。

 

浜氏はこれら二点の整理に立って、政府と中央銀行の役割、今回の追加金融政策、そして通貨協調の必要性について論じている。まず1点目の「為替は円高ではなくドル安によるものであり、現代はドルに対する過大評価の歴史的修正と見るべき」という指摘について、統計データを参照しながら確認してみよう。

 

図表1は米国ドルを基準とした場合の主要通貨動向を、世界金融危機が生じる前の2007年1月を1とした場合の指数として示している。

 

 

図表1 米国ドルを基準にした場合の主要通貨動向 (*)(各国通貨/米国ドル)のデータを2007年1月を1として指数化した値 (資料)PACIFIC Exchange Rate Service(http://fx.sauder.ubc.ca/data.html)から筆者作成

図表1 米国ドルを基準にした場合の主要通貨動向
(*)(各国通貨/米国ドル)のデータを2007年1月を1として指数化した値
(資料)PACIFIC Exchange Rate Service(http://fx.sauder.ubc.ca/data.html)から筆者作成

 

 

この図から明らかなのは、米国ドルは主要通貨のすべてに対して安くなっているのではなく、メキシコペソ、韓国ウォン、英国ポンドといった通貨に対しては、ドル高が生じていることである。そして、2007年1月を基準とした場合、ドル安の進行がもっとも深刻なのは円である。要するに、米国ドルの動きは一様ではない。

 

では、日本円を基準にした場合の主要通貨動向についてはどうか。

 

 

図表2 日本円を基準にした場合の主要通貨動向 (*)(各国通貨/日本円)のデータを2007年1月を1として指数化した値 (資料)図表1と同じ

図表2 日本円を基準にした場合の主要通貨動向
(*)(各国通貨/日本円)のデータを2007年1月を1として指数化した値
(資料)図表1と同じ

 

 

図表2はこの点についてみたものだが、明らかなのは、リーマン・ショックが生じた2008年9月以降の局面では、主要通貨すべてに対して円の価値は高まっている、つまり円高が進んでいるということだ。

 

2国間レートの場合、円高とドル安は表裏一体の関係であって、一方の側面のみを強調するのはそもそも意味がない。あえてどちらかを強調するのであれば、主要通貨に対して円が全面高であることこそ問題ではないか。

 

為替と物価、金融政策は関係がある。為替動向は、諸外国がマイルドなインフレを達成していたのに対して、我が国は10年超の間デフレであるという事実を意味しているのだ。

 

 

 

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