障害者差別解消法Q&A

【法律の動向】

 

Q1 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)をめぐる動向は、どのようなものですか?

 

障害者差別解消法案は内閣府を中心に作成されました。その作成時には、内閣府差別禁止部会が2年ほど議論を重ねて作成した意見(2012年9月14日)がふまえられました。この差別禁止部会は、障害者団体代表、障害当事者、新聞社の論説委員、作家、弁護士、研究者など、さまざまな人々から構成されました。オブザーバーとして、日本経済団体連合会、日本商工会議所の代表が参加しました。

 

2013年4月26日の閣議決定によって、障害者差別解消法案は国会に上程されました。法案は衆議院では、5月29日に内閣委員会(衆内閣委)で可決され、5月31日に本会議で可決されました。そして参議院では、6月18日に内閣委員会(参内閣委)で可決され、6月19日に本会議で可決されて、原案のまま成立しました。なお、衆内閣委と参内閣委で、それぞれ附帯決議が採択されました。

 

この法律は、2016年4月から施行されます。参内閣委で、政府参考人は、施行までの3年間のスケジュールをつぎのようにのべています。まず、政府の基本方針は、おそくとも2013年度内にとりまとめられます。それから1年以内にガイドライン(対応要領、対応指針)が作成されます。そして、施行までに1年程かけて法律の周知徹底がはかられる予定です。

 

 

【法律の目的】

 

Q2 障害者差別解消法は、なにを目的にしているのですか?

 

この法律は、共生社会の実現をめざしています。もうすこし詳しくいいますと、この法律は、差別解消措置や差別解消支援措置などをつうじて差別の解消を推進しようとする法律で、それによって共生社会の実現に役立つことを目的にしています。そのため、この法律は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」と名づけられています。

 

条文(1条)をみると、この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的にする」とさだめられています。

 

 

【法律の位置づけ】

 

Q3  障害者差別解消法は、どのように位置づけられますか?

 

この法律は、障害者基本法4条の差別禁止規定を具体化する新規立法として位置づけられます。日本国憲法や障害者基本法等の現行法だけでは障害差別を効果的に解消することができなかったため、このような新規立法が必要となったのです。また、この法律は、障害者権利条約の批准にむけた国内法整備の一環としても位置づけられます(衆内閣委と参内閣委の附帯決議を参照)。

 

 

Q4  障害者基本法4条は、どのような規定ですか?

 

本条は、つぎの3つをさだめています。すなわち、障害を理由とする差別等の権利侵害行為を禁止すること(1項)、社会的障壁の除去をおこたることによって権利侵害行為をすることがないように、合理的配慮の提供を義務づけること(2項)、国が啓発と知識普及をはかること(3項)です。これらを一定程度具体化しているのが、障害者差別解消法です。

 

 

【法律の構成】

 

Q5  障害者差別解消法は、どのようにして、障害者差別の解消を推進するのですか?

 

この法律は、政府の基本方針にそくして作成される、対応要領・対応指針にもとづいて、差別解消措置と差別解消支援措置とを義務主体にこうじさせることによって、障害者差別の解消を推進しようとしています。ここでいう「基本方針」、「対応要領」、「対応指針」、「差別解消措置」、「差別解消支援措置」は、この法律の重要なキータームとなります。この法律の構成は以下のとおりです。

 

 

第1章 総則(1条-5条)

第2章 基本方針(6条)

第3章 差別解消措置(7条-13条)

第4章 差別解消支援措置(14条-20条)

第5章 雑則(21条-24条)

第6章 罰則(25条、26条)

附則

 

 

【障害者の定義】

 

Q6  障害者差別解消法の保護対象となる障害者とは、どのような人々ですか?

 

この法律にいう「障害者」は、障害者基本法2条1項にさだめる「障害者」の定義とおなじです。すなわち法律は、「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害又は社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義しています(2条)。障害者には、もちろん障害児がふくまれます。そして、参内閣委で、政府参考人は、障害者手帳をもたない難病のある者もこの法律の対象になる、とのべています。

 

この法律は、1)過去に障害をもっていた者、2)疾患の遺伝的素因ゆえに将来障害がしょうじる可能性のある者、3)実際には障害はないが障害があると他者から誤解されている者、について明示的に言及していません。また、この法律は、4)障害者の関係者(親族、同居者、介助者、事業交流者、文化交流者)を保護対象として明記していません。しかし、1)から4)までの人々も、障害を理由に差別をこうむる場合があることに留意する必要があるでしょう。以上の諸点については、今後の具体的な事例のなかで対応することになるとおもわれますが、基本方針、対応要領、対応指針のなかにもしるしておくべきでしょう。

 

なお、「障害者」という表記については、さまざまな議論があります。参内閣委で政府参考人は、この法律が「障害者」という表記をもちいている理由を、障害者基本法が「障害者」という表記をもちいており、この法律は障害者基本法を具体化したものである、という点に求めています。

 

 

Q7 ここでいう社会的障壁とは、どのようなものですか?

 

この法律にいう社会的障壁とは、障害者の生活に支障をもたらすバリア全般を意味します。この法律は、「社会的障壁」を「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行その他一切のもの」と定義しています(2条)。これは、障害者基本法2条2項にさだめる社会的障壁の定義とおなじです。

 

 

Q8  政府の基本方針は、なにを目的にしているのですか?

 

政府の基本方針は、障害者差別解消の推進施策を総合的・一体的に実施することを目的にしています(6条1項)。そもそも障害者差別解消の推進は、各府省横断的な大規模施策です。したがって、この施策は総合的・一体的に推進される必要があります。そこで、政府は、そのための基本方針をさだめるのです(衆内閣委での政府参考人の答弁を参照)。

 

 

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