2012.11.07

「災害復興法学」のすすめ ―― 東日本大震災を伝承する危機管理のデザイン

岡本正 弁護士

社会 #震災復興#リーガル・ニーズ#災害復興法学#危機管理デザイン

「災害復興法学」は4万件以上の無料法律相談データ・ベースを、現実の災害復興支援や法改正の実績をベースに解析し、東日本大震災の「真実」と学ぶべき「教訓」を明らかにすることを目指している。それは、4万件の声の、その当事者に対する法律家からのメッセージである。

――声は届く。ともに歩んでいこう。――

災害復興『法』学という選択

3月11日の東日本大震災の直後から、弁護士は無料法律相談活動を展開してきた。避難所、仮設住宅、電話相談等による相談件数は、2012年5月までに集約できたものだけを数えても、実に40,000件を超えた。

全国から集められた法律相談カルテ(相談票)は、全件について、集約担当の弁護士らによるダブルチェックを経てデータ・ベース化されている。2012年10月には、集大成版として「東日本大震災無料法律相談情報分析結果(第5次分析)」が日弁連から発表されている(http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/shinsai/proposal.html)。

膨大な法律相談データ・ベースは、地域や時間経過によるリーガル・ニーズの差異やインパクトなどを「見える化」することになった。これにより、阪神・淡路大震災や新潟中越沖地震当時には、実現することのなかった、様々な被災者・被災企業の再建制度が新設された。確かな数字とデータにより、法改正や制度創設の裏付け事実を証明できたことによる。

「災害復興法学」(Disaster Recovery and Revitalization Law)とは、膨大な無料法律相談のデータ・ベース、すなわち被災者の「生の声」をバック・グラウンドとしている。

 被災者の悩み(リーガル・ニーズ)に対し、法律を駆使して如何に応えてきたかを追体験し、現在の復興支援にもフィードバックする「法律実務学」である。

 現行制度の壁にぶつかり悩む被災者・被災企業の声を集約し、法改正に繋げたその軌跡を描き出す「立法政策学」である。

 来るべき首都直下型地震、東南海沖地震に備えるべく、既存の制度の課題を検証する「防災・危機管理学」である。

 東日本大震災のという災害の教訓を後世に伝え続ける「復興教育」である。

避難所における無料法律相談の準備風景。生活再建に資する制度がわかりやすく記載された岩手弁護士会作成のチラシを用意する。立ち話しから場所を移して法律相談へ移行することがほとんど(2011年6月、大槌町)
避難所における無料法律相談の準備風景。生活再建に資する制度がわかりやすく記載された岩手弁護士会作成のチラシを用意する。立ち話しから場所を移して法律相談へ移行することがほとんど(2011年6月、大槌町)

その声を絶対無駄にしないという誓い

震災から間もない東北沿岸部のある避難所。

「仕事もない、家もない、家族もいなくなった。何をしたらいいのか。どうやって生きていくのか。どうするのか。何が問題なのかもわからない。」「津波で住宅が流されてしまった。土地も水浸し、職場も流されてしまったので解雇された。住宅ローンは500万円以上残っている。どうしたらいいのか。すべてを手放して破産するしかないのか」。

津波で壊滅的ともいうべき被害を受けたある集落において、全くの「想定外」の相談内容に弁護士をはじめ専門家たちは驚いた。被災者の切実な叫び。声。現行法を解釈・適用するだけではリーガル・ニーズに応えることができない現状を思い知ることになった。法律家としてこれほど無力を痛感することはない(被災地における代表的な法律相談のモデルケースは【表1】のとおりである。)。

既存のルールにだけ頼れない。新しい制度が必要だ。なければ創るしかない。こうして法律家の挑戦が始まった。

【表1】代表的な法律相談のモデルケース (日本弁護士連合会「東日本大震災無料法律相談情報分析結果」(第5次分析)記載のモデル事例を抜粋して一覧表にしたもの)

「5不動産賃貸借(借家)」

・「津波で借家が全壊して住めなくなったが家賃を払い続ける必要があるのか」。

・「地震で壁にヒビが入ったが、大家と借家人のどっちが修繕する義務があるのか。費用援助は」。

・「まだ使える・住める状態だが、建て替え費用がないから退去を求められているが妥当か」。

・「建物全壊で退去する場合の敷金は。立退料は貰えるか」。

「6工作物責任・相隣関係(妨害排除・予防・相隣関係)」

・「地震で自宅の屋根瓦が落下し、隣家や隣家の壁や自動車を損壊したが、損害賠償責任を負うのか」。

・「商店の壁が崩れてパーキングに駐車していた自動車が損壊したが、誰かに損害賠償請求できるのか」。

・「マンションの上階から水漏れがあった場合の責任関係はどうなるのか」。

「9住宅・車・船等のローン、リース」

・「津波により自宅の土地建物が流されてしまった。職場も失ったので住宅ローンが支払えない。再建の支援はないのか。既存の債務は破産しない限り残ってしまうのか」。

・「原子力発電所事故等で避難指示を受け、住めなくなった住宅の住宅ローンも支払う必要があるのか」。

「12震災関連法令」

・「被災者生活再建支援金をもらうにはどういう手続が必要か。罹災証明はどういう場合に取得できるのか、どこで、どうやって取得するのか」。

・「借家に住んでいる場合でも罹災証明書を取得して生活再建支援金が取得できるのか」。

・「家計を別にしている親夫婦と、住民票の記載だけをみて同一世帯と認定された支援・義援金が一世帯分しかもらえないのは納得がいかない」

・「何十年も一緒に生活してきた唯一の親族である兄弟が地震で亡くなったのに災害弔慰金は兄弟に出ない法制度になっているのは納得がいかない」(当時)。

・「支援金や義援金をもらうと生活保護が打ち切られるという説明を行政から受けたが本当か」。

「16遺言・相続」

・「家族や親戚が何人も亡くなったが、相続人は誰なのか。行方不明者がいる場合には手続はどうすればいいのか。行方不明の家族の死亡届を出すべきかどうかで家族でも意見が分かれている」。

・「家族が亡くなってから3ヶ月間何もしないでいると、借金も相続してしまうので、相続放棄が必要だと聞いた。しかし、そもそも亡くなった家族にどんな資産があるのか、津波にさらわれた地域の不動産の評価はどうなるのか、はっきりしない。相続放棄したらよいかどうかの判断が出来ない」。

・「遠方の相続人と義援金や支援金の配分で紛争になりそう。しかし、津波で全てを失って、交通手段もなく、裁判所に出頭しての手続などとてもできない」。

巨大災害発生時に法律家の果たすべき役割

そもそも巨大災害発生時において、法律家はいかなる役割を果たすことができるだろうか。「法律」に関する問題は目に見えないため、その役割を的確に表現することは難しい。しかし、被災者・被災企業の抱える真実の悩みは、つまるところ法律問題である。災害復興法学の創設に至る経緯は、法律家の果たすべき役割そのものと言えるのではないか。

第1は、「動く」役割である。

代表的な例は無料法律相談活動である。既存の法律を適切に解釈し、あてはめ、悩み事や紛争を解決へ導く。典型的な法律家の役割である。巨大災害時における無料法律相談には、(1)自主的紛争解決機能(紛争予防機能)、(2)精神的支援機能(カウンセリング機能)、(3)パニック防止機能(混乱抑止機能)、(4)情報整理提供機能(目的別の有益情報の提供機能)、(5)立法事実(立法根拠事実)集約機能を見出すことができるはずだ。

第2は、「創る」役割である。

まちづくりや生活再建に資する法制度を提言し、実現する役割である。そのためには、膨大な無料法律相談データを集約・分析し、数値に基づき説明をする必要がある。法律家による様々な立法提言とその実績は、この「創る」役割の重要性を証明している。

第3は、「伝える」役割である。

東日本大震災後に創られた制度とその軌跡から学ぶべき教訓がある。将来の巨大災害に備えるために次の世代へ伝承する。そして、今なお残る制度的課題についても検証と改善を訴え続けることが必要である。「災害復興法学」の創設と展開は、この「伝える」役割のひとつである。

東日本大震災のリーガル・ニーズを「視覚化」

「災害復興法学」のバック・グラウンドでもある、無料法律相談を分析した結果について解説する。
「(1)地域ごとの明確な差異」「(2)時間経過による顕著な変化」がキーワードになる。東日本大震災の被災地域を「被災地」と一括りにできないことが一目瞭然である。

(1)地域ごとの明確なリーガル・ニーズの差異

【図1】から【図3】は、「東日本大震災無料法律相談分析結果(第5次分析)」のうち県や市町村単位の分析結果の一部を抜粋したものである(第5次分析では80の地域のグラフを作成している)。これらを例に、地域の差異を見ていくと、被災態様によって傾向が大きく異なっていることがわかる。

【図1】の宮城県女川町は、津波により集落の多くが壊滅的ともいえる被害を受けた。津波の犠牲になった方、生業を失い途方に暮れる漁業者、そのようなニーズを反映し、生活再建制度の情報提供を求める「12震災関連法令」や、相続・行方不明者に関する相談を含む「16遺言・相続」の相談割合が高い。

【図2】宮城県仙台市青葉区は、仙台市の中心地であり、海に面していない。一方で、地震による建物・道路の被害が甚大であった。「5賃貸借契約(借家)」の相談が多いのは、都市部の契約関係の多さを反映している。全体の相談傾向も、沿岸部とは全く異なる様相である。

【図3】の岩手県陸前高田市は、津波による人的被害の割合が突出して高く、かつ中心街を含む市街地の全域が甚大な被害を受けた。【図1】の宮城県女川町と比べると、同じ津波被害では共通しているが「住宅ローン等」に関する相談割合も多い。陸前高田市市の中心街が広範に被災したことが反映されている。

【図1】宮城県女川町の相談傾向
【図1】宮城県女川町の相談傾向
【図2】宮城県仙台市青葉区の相談傾向
【図2】宮城県仙台市青葉区の相談傾向
【図3】岩手県陸前高田市の相談傾向
【図3】岩手県陸前高田市の相談傾向

(2)時間経過によるリーガル・ニーズの顕著な変化

地域の法律相談の割合を月次で分析すると、時間経過とともにリーガル・ニーズが大きく変遷していることが明確になる。【図4】と【図5】は、「東日本大震災無料法律相談情報分析結果(第5次分析)」に掲載されているデータから筆者が作成した。

【図4】は、岩手県における「16遺言・相続」の相談の月次推移をグラフにしたものである。「亡くなったことを知ってから3か月まで」という相続放棄をするかどうかの判断のタイムリミット問題を受けて、震災から数か月の間に急増し、その後も高止まり傾向にあった相談である。相続に関しては、単発の法律相談だけではなく長期的なサポートが必要であることも見て取れる。特に、初期段階のデータを用いて、2011年6月には、相続放棄を判断するタイムリミットを延長する民法の特例法が成立している。国会を動かしたのは、急増する被災者の声そのものだった。

【図5】は、宮城県における「5賃貸借契約(借家)」の相談の月次推移をグラフにしたものである。震災直後から割合が高く、収束することがなかった相談である。紛争内容は、オフィスや借家の賃料や修繕の問題、立ち退きの問題などである。しかし、当事者は賃借人も賃貸人も、いずれも被災者である。被災者どうしが紛争を抱えたままであることは地域全体にとってもマイナスとなることは明らかだ。そこで、仙台弁護士会は、無料で話し合いの解決を目指す組織として「震災ADR」を立ち上げた。その効果は目覚ましく、2011年4月から12月までに間に400件ほど申し立てがあり、うち100件近くを解決するという目を見張る成果を上げた。今後は、費用やマンパワーから、持続可能性が課題である。

【図5】岩手県の相続・行方不明者に関する相談割合の変化
【図5】岩手県の相続・行方不明者に関する相談割合の変化
【図6】宮城県の建物賃貸借契約(借家)に関する相談割合の変化
【図6】宮城県の建物賃貸借契約(借家)に関する相談割合の変化

リーガル・ニーズの視覚化モデル

被災地域・態様ごとに時宜に適ったきめ細やかな支援が必要となることは言うまでもない。しかし、どの地域、どの時期にいかなる政策(制度の構築や防災・復興事業)が必要かを見極めることは容易ではない。

そこで、前述の【図1】から【図5】のように、地域差、時間経過による詳細な分析が必要になる。このような傾向分析は、何も今回の特定の地域のみであてはまる問題ではないだろう。東南海沖地震などの被害想定をする際にも、大いに役立つはずだ。

そこで、【図6】のように、「リーガル・ニーズの視覚化モデル」として、新しい防災・危機管理デザインを提案したい。

【図6】リーガル・ニーズから導く政策モデル(プロトタイプ)
【図6】リーガル・ニーズから導く政策モデル(プロトタイプ)

C型(CITY)…宮城県仙台市青葉区など

T型(TSUNAMI)…宮城県女川町など

A型(ALL)…岩手県陸前高田市など

(フェーズ1):地域や時期によって異なるリーガル・ニーズを抽象化・視覚化し、〔リーガル・ニーズモデル〕を策定する。

(フェース2):リーガル・ニーズの地域・時期ごとのモデルに対応する政策についてもモデル化し、〔政策モデル〕を策定する。

(フェーズ3):「リーガル・ニーズモデル」と、対応する「政策モデル」を、将来の都市直下型地震や東南海沖地震の想定地域における防災・減災政策に応用する(地域防災計画や業務継続計画への組み込み)

例として、岩手県陸前高田市【図1】で説明する。同地域では、「相続」や「住宅ローン」に関する相談が、ともに目に見えて高い割合となっている(視覚化)。抽象化すれば、「都市津波型リーガル・ニーズモデル」ともいえる地域である(フェーズ1)。

そして、これに対応する復興支援政策は、「拠点設置による継続的法的支援政策モデル」となろう。相続や住宅ローンに関する手続きは、一回的な無料法律相談だけでは解決が不可能であり、遺産分割協議、相続放棄続、住宅ローン減免等の法的手続についての専門家の継続的支援が不可欠だからである。なお、現実に2012年3月、陸前高田市に日弁連公設事務所が開設された)(フェーズ2)。

さらに、公官庁データや法律相談傾向をクロス集計し、全国各地域の同種の想定被害とリーガル・ニーズを重ね合わせ、防災(減災)対策に活用する(フェーズ3)。

「災害復興法学」は、このような被災態様に応じた「リーガル・ニーズモデル」とそれに応じた「政策モデル」をリンクさせるという、新たな視点での、防災(減災)・危機管理のデザインを構築することを目指している。地域防災計画や行政の業務継続計画(BCP)への定着も目指したい。

法律家だから気が付く「制度のボトルネック

2012年4月、慶應義塾大学法科大学院の選択科目として災害復興法学がスタートした。当時はまだ正式な科目名は付されていなかったが、2013年度からは「災害復興法学」(Disaster Recovery and Revitalization Law)が正式採用された。講義のメインとなるのは、ケース・スタディーである。

筆者の経験や各種発表資料等から構成した、被災者の生の相談の声をモデルケースにして紹介する。現行法制度の正確な理解を問いつつ、立法政策的課題を抽出し、ケースごとに討論と解説を実施した。

被災地における無料法律相談の中で、特に頻出する相談内容は、前述【表1】とおりである。以下、ケース・スタディーのモデル事例のうち、4つの課題事例を簡単に紹介しておく。

(1)不動産賃貸借(借家)の事例

建物賃貸借契約を巡る当事者間の紛争に関する相談事例である。都市部で人口が集中している地域や、オフィスが多いエリアで多い相談類型である。具体的には、建物明渡請求、賃料減額請求、修繕義務、費用償還請求等が問題になる事例を検討した。

(2)相続と行方不明者に関する事例

家族の中で行方不明者がいる場合の法律関係や相続財産に負債が多い場合の法律関係が問題となる事例を検討した。相続の相談事例は、災害から日が経過するに連れて相談の割合が増加し、その後も相談全体の中では高い割合を占めるという傾向があった。これらの傾向からどのような法的課題が生じたか、残された課題は何か等を検討した。

(3)不動産所有権と取引に関する事例

「中古で一戸建ての自宅を購入する契約をしたところ、代金支払い・引渡しの前に津波によりすべて流されてしまった。住宅ローンも組むことになっていた。」という場合に、売買代金の支払義務を負うのかという事例である。民法では、「危険負担」という概念である。日常取引では、そもそもこのような問題が発生することはごくごく稀であると思われる。

(4)被災マンションの事例

被災したマンションを例にとって、マンションを修繕して「復旧」し、同時に「耐震化」する事例や、区分所有関係を解消して更地売却を目指す際の問題を検討した。実は、民法や区分所有法においては、耐震化や区分所有関係の解消を図ろうとすると、現行法ではかなり要件が厳しい。将来の都市直下型地震を考え、耐震化や建物区分所有関係の解消促進のための法改正や政策等を検討した。

災害復興法学の講義風景。受講生によるレポート発表を毎回板書化。授業終了時は黒板が文字と図表で埋め尽くされる。初年度は約80名が全15回の講義を欠かすことなく出席した。講義を契機として、被災地のスタディーツアーに参加する受講生も出た(2012年7月、慶應義塾大学)。
災害復興法学の講義風景。受講生によるレポート発表を毎回板書化。授業終了時は黒板が文字と図表で埋め尽くされる。初年度は約80名が全15回の講義を欠かすことなく出席した。講義を契機として、被災地のスタディーツアーに参加する受講生も出た(2012年7月、慶應義塾大学)。

一般教養・危機管理デザインとしての「災害復興法学」

2012年度に慶應義塾大学法科大学院で実施された「災害復興法学」は、法律の専門家を養成する法科大学院の授業として実施したことから、法律や制度の解釈が中心になる講義プログラムとなった。もっとも、既存法制度の限界が見えたとき、立法事実の裏付けを基にして、立法・公共政策的な課題を提示できるかどうかという点にも重点を置いた。

この点を発展させると、社会的事実の調査結果から政策や法律が立案される過程も体感することが可能となる。すなわち、「立法学」や「公共政策学」に重点を置いた講義の展開も可能であると考える。したがって、筆者の提案する災害復興法学(あるいは災害復興政策学)は、公共政策大学院やビジネス・スクールのプログラムとしても親和性を有するものと考えられる。

さらには、より若い年代への復興教育としても、災害対応制度の知識を教授しておくことが必要だと考えている。災害復興法学は大学の中の専門的分野として展開しつつも、その基礎となる知識は「一般教養」科目であるべきだ。各大学での今後の展開を期待したい。

次への課題

今回は、東日本大震災で地震や津波の被害がクローズアップされているエリアの問題を中心に紹介させていただいたが、機会をいただけるなら「原子力発電所事故」等に関する法律相談の分析結果についても、そのリーガル・ニーズの発生と変遷過程について紹介させていただきたい。また、巨大災害後の「情報防災」の観点から、「行政、企業、NPO、専門家の連携による情報提供ルートの複線化」のシステムデザインも考えなければならない。本稿では題目の紹介にとどめておく。

参考文献・メディア

永井幸寿(2012):「東日本大震災での弁護士会の被災者支援活動」(NBL、No.974)

岡本正(2012):「東日本大震災無料法律相談解析結果から導く行政機関の新業務継続計画(新行政BCP)」(関西学院大学災害復興研究第4号)

岡本正・小山治ほか(2012):「3.11大震災暮らしの再生と法律家の仕事」(日本評論社)

岡本正(2012):「『災害復興法学』の創設と展開~東日本大震災の教訓を未来の担い手へ」(法学セミナー、No.694)

小山治・岡本正:「宮城県における東日本大震災に関するリーガル・ニーズの実態-市町村単位の分析(一)」(自治研究、第88巻第11号)

朝日新聞(2012):「大震災を教訓に「災害復興法学」立法・被災地の法律相談まとめ講義」(8月7日朝刊)

東北復興新聞TOMORROW(2012):「『災害復興法学』の創設 大学における復興教育‘思い’を次の世代へ」(8月10日)

プロフィール

岡本正弁護士

弁護士。医療経営士。マンション管理士。防災士。防災介助士。中小企業庁認定経営革新等支援機関。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。慶應義塾大学法科大学院・同法学部非常勤講師。1979年生。神奈川県鎌倉市出身。2001年慶應義塾大学卒業、司法試験合格。2003年弁護士登録。企業、個人、行政、政策など幅広い法律分野を扱う。2009年10月から2011年10月まで内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員。2011年4月から12月まで日弁連災害対策本部嘱託室長兼務。東日本大震災の4万件のリーガルニーズと復興政策の軌跡をとりまとめ、法学と政策学を融合した「災害復興法学」を大学に創設。講義などの取り組みは、『危機管理デザイン賞2013』『第6回若者力大賞ユースリーダー支援賞』などを受賞。公益財団法人東日本大震災復興支援財団理事、日本組織内弁護士協会理事、各大学非常勤講師ほか公職多数。関連書籍に『災害復興法学』(慶應義塾大学出版会)、『非常時対応の社会科学 法学と経済学の共同の試み』(有斐閣)、『公務員弁護士のすべて』(レクシスネクシス・ジャパン)、『自治体の個人情報保護と共有の実務 地域における災害対策・避難支援』(ぎょうせい)などがある。

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