3・11から2年半 被災地仙台の復興は進んだか? ―― 現地の大学・NPOの共同調査から見る被災地の現状と課題

東日本大震災から2年半が経過した。被災地への関心は低下しつつあるが、仮設住宅での生活を余儀なくされている被災者が仙台市には現在でも約2万人いる。被災地仙台の状況とは? 被災者の生活再建は進んでいるのだろうか? どのような政策や支援が必要なのか? 震災後から現在に至るまで、現場で被災者支援に携わってきた仙台POSSE代表の渡辺寛人氏と東北学院大学経済学部准教授の佐藤滋氏が被災地仙台の現状とこれからの課題について話し合った。

 

 

見えにくい被災地=仙台

渡辺 震災から2年半が経過しましたが、被災地仙台の現状と課題は何か。多くの支援団体が撤退するなかで、今必要な支援とは? 今日話し合いたいのはこうしたテーマです。

仙台POSSEでは東北学院大経済学部の佐藤ゼミと、共同で仮設住宅の生活実態調査を進めています。調査自体はまだ完了していないので、途中経過にはなりますが、そこからどのような示唆が得られるのかということも含めて議論できればと思います。

 

佐藤 まずは、調査をするに至った問題意識とも関係してくるのですが、仙台=被災地という言説の少なさを感じています。「被災地」といったときに語られるのは、福島、あるいは津波の被害を強く受けた岩手の沿岸部のことで、仙台が被災地として取り上げられることはあまりないように思います。

 

渡辺 現実には、仙台市では約2万人の被災者がいまだに仮設住宅での生活を強いられているわけです。

 

佐藤 一方では被災前の生活に徐々に移行し始めて、普通に生活をしている人もいる。こういう断層がなぜ生じているのか。これを明らかにする目的で、我々は調査に着手したわけですね。

 

渡辺 現場で支援を続けていると、仮設住宅にお住まいの方から、先の見通しが立たない、仮設住宅を出ても住むところがないと不安を訴える声をよく耳にします。こうした実態を外に発信していく必要があるとずっと感じていました。

 

 

「求人好調」の裏で広がる貧困

佐藤 仙台が被災地としてとりあげられることが少ない背景には、「東北三県、求人好調」といったことを強調するメディアの影響もあるかもしれません。実際、今年の7月末のニュースによれば、宮城県は15か月連続で有効求人倍率が1倍を超えていて、全国で4位、8月だと全国3位といったことが報じられています。

 

それと、有効求人倍率の話とはそれますが、被災三県の生活保護率の低さもあげられます。東北三県の生活保護率は全国的にみてかなり低いんです。ですから、経済的にみて仙台はあまり問題は抱えていないのだろうと。被災地として論じるべき対象ではないのではないかという意識がどこかにあるのかもしれません。

 

渡辺 そうしたイメージと実態との乖離を感じています。ぼくは、被災地仙台では、貧困の問題が現れていると考えてきました。

一つ例をあげましょう。仙台POSSEでは、就学支援事業といって、被災した子どもたちの勉強を見ています。この子は、高校一年生の女の子で、母子家庭です。2年前から支援をしています。震災前の時点での収入が月五万円と、かなり大変な生活をしていたのですが、母と祖母の三人暮らしでなんとか生活が成り立っていました。もともといじめや不登校があり低学力でした。抑うつと躁を繰り返している様子があり、学校に行くと頭痛がしてしまう。学校に行くと1日、2日寝込んでしまうというんですね。

震災後、この子は祖母と離れ親子で仮設住宅に入居します。そこで母親が病気を抱えて寝たきり状態になり、家事も洗濯もできなくなってしまうんです。支援も受けられずに見放された状況でこの子は生活していました。こうした状況にあったところ、ぼくたちの支援に継続してつながるようになり、精神的な面もサポートしながらなんとか高校に進学しました。

被災地の子どもの抱えている問題について、多くは被災のショックなど精神面だけで説明されがちです。しかし、その背景には貧困状態などの経済苦があり、その中で親が子どもの勉強を見ることもできず、子どもの低学力という問題が生じているのではないかと思いました。そこで、ぼくたちは、たんに勉強を教えるだけではなく、生活面も含めた支援をしています。

 

佐藤 実際、「復興需要で潤う仙台」という良く言われることとは別に、仙台では貧困がどんどん増加しています。これは生活保護率を見ても明らかです。仙台市だけをとりあげた場合、東京と遜色のないレベルです。震災前の2011年2月における人口に対する生活保護受給者の割合は15.8‰、2013年7月の統計では16.14‰です。実は、人口流入によって分母が増大しているにもかかわらず、保護率が上昇している。分母が大きくなれば保護率が減りそうなものですが、逆に保護率は増えている。これは受給世帯、受給人員が増えているからです。受給世帯数は11,382人から12,167人まで増えている。

 

渡辺 こうした貧困が広がりつつある中で、仮設住宅の人々の生活はどうなっているのか、調査事例を見ていきたいと思います。その前にぼくたちが調査しているプレハブ仮設住宅に住んでいる人の構成はどのようになっているのでしょうか。

 

佐藤 とりわけ注目できるのは65歳以上です。たとえば一般社団法人パーソナルサポートセンターが1年前に公表しているデータでは、仙台市のプレハブ仮設の居住者は、33.6%が高齢者です。仙台市全体の平均は16.1%、民間アパートの借り上げ仮設住宅は23.0%であるのに対し、プレハブ仮設では三割を超える高齢化率です。

 

渡辺 支援している現場の感覚でも、高齢の方は多いです。POSSEでは、仙台市内の仮設住宅で送迎事業というのを行っています。無料の送迎バスを運行して、仮設住宅に住む人たちの通院や買い物のサポートをするんです。月平均で300人の被災者が利用されているのですが、高齢者が95%以上を占め、なかでも70歳以上の方が5割以上です。若い方では被災した自宅を自力再建して仮設を離れていく人もいるのですが、仮設住宅に取り残されているのはとりわけ高齢者が多いという印象です。

 

 

 

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