和解だけが救いの形ではない――『聲の形』作者・大今良時氏の目指すもの

なにも解決しない物語が好き

 

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荻上 2巻以降で、小学校時代が過去のものになり、読み切りでは描かれなかった小学校以降の物語が始まりました。過去と折り合いをつけていく物語として進むのか、恋愛ものとして読める漫画になるのか、気になります。

 

大今 うーん。私も悩みながら描いています。主人公と一緒に生活している感じなので、あるべき姿がまだ全然わかっていないですね。

 

荻上 描きはじめた段階で、着地点は見据えているものですか?

 

大今 なんとなく見えています。ただ読者が満足してくれるか正直わからないので、反応を見ながら変えるかもしれないですけど。

 

荻上 逆に、描かないと決めているものもあるんですよね?

 

大今 ええ、決めています。具体的なことは言えないんですけど、「和解することがもっとも正しいことだ」みたいな描き方はしたくないなあ、とは思っています。和解できたらできたで素晴らしいことですけど、できなかった場合にどうするのか、救いはあるのかを描きたいです。

 

荻上 ああ、それは、「それでこそ」という気がします。「それぞれの物語」を描いている多声的な描写で進んできたものが、例えば「石田と西宮が恋人になりました、よかったね、ちゃんちゃん」って描いた場合、いままで描かれてきた絶妙な距離感が、恋愛の成就というゴールのためのプロセス、背景に過ぎなかったんだ、となる危険性もある。それを求めている読者もいる中で、とてもプレッシャーを感じていらっしゃると思うのですが(笑)。

 

大今 そうなんですよー。恋愛漫画として描いたら捗ると思います(笑)。やっぱりわかりやすいものが求められてもいるとは思うので。誰と誰がくっつくか考えながら読むのは、面白いに決まっていますよね。ただそういう話じゃないと示しているつもりです。読者サービスもいれたりはしますが……。

 

荻上 そのあたりは、媒体によって制約条件って違いますよね。月刊誌、青年誌、週刊誌、それぞれ描けるものが違う。『週刊少年マガジン』だからこそ、描けるもの、描けないものもある。

 

大今 私はディズニーやジブリのような子どもが観る作品が好きなんです。尊敬しています。本当に素晴らしい。あそこを目指していればとりあえず上手に運転できると思っています。

 

荻上 子どもを読者として想定しつつ、制約の中で、どこに着地させるか。

 

大今 何も解決しない、すっきりしない状況が一番苦しいので、そこに救いを与えたいと思っています。もしかしたら自分が救われたいと思っているだけなのかもしれないんですけど。

 

荻上 他に好きな作品ってありますか?

 

大今 「リトル・ミス・サンシャイン」って映画が好きです。あの映画から半分は教わったくらい。なにも解決しないんですよ。ケンカとトラブルばかりの家族で、おじいちゃんが死んじゃったり、夢がかなわなかったりするんです。

 

荻上 素晴らしいロードムービーですよね。旅を通じての和解、有るべき形への回帰、みたいな結末を上手に避けていますよね。旅の目的は達成されないんだけど、それでも車は進んでいく、みたいな。

 

大今 達成されなかったことで伝わるものもあって。描かないことで浮き立つものもある。そういうものが表現されている映画だと思います。きっとあの家族は、これからもいつものように喧嘩しているんだろうな、って。

 

荻上 それでも物語は終わる。「続きが見たい」と「結末が見たい」とで連載の読者を引っ張っていく中で、やはりエンディングの形は……悩みですね。

 

大今 いやあ、エンディングを描き終えたら、「これはエンディングじゃない!」って言われちゃうかもしれないなあ……。

 

荻上 「打ち切りだろ!」とか(笑)。

 

大今 消化不良だって言われるかもしれないなあ、いやだなあ。こわいなあ……。

 

荻上 どうやって描かれるのか期待しつつ、いまの高校生になった登場人物が、今後どういった関係になっていくのかも楽しみにしています!

 

 

 

聲の形(1) (講談社コミックス)

著者/訳者:大今 良時

出版社:講談社( 2013-11-15 )

定価:

Amazon価格:¥ 463

コミック ( 192 ページ )

ISBN-10 : 4063949737

ISBN-13 : 9784063949735


 

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