空き家率40%時代に備えよ! 田原総一朗が迫る、日本の空き家問題

日本の空き家率は増加の一途――。7月に総務省発表によると、全国の「空き家率」は820万戸となり、総住宅数に占める割合が13・5%と過去最高を更新した。社会問題化しつつあるこの「空き家問題」に、どう対処すべきなのか。田原総一朗氏が、『「空き家」が蝕む日本』の著者・長嶋修氏にインタビューし、不透明な不動産取引の実態、「新築ありき」の政策や人口減少との関連など、「空き家問題」の本質に迫った。

 

 

都心部マンションの異様な空き家率、なぜ?

 

田原 まず、長嶋さんの『「空き家」が蝕む日本』を読んでびっくりしたのは、マンションの空き家率が、千代田区36%、中央区28%、荒川区19%。なんでこんなに高いんですか? 地方や東京の郊外ではね、古くなった公団住宅や都営住宅があって、空き家が相当あると聞いていたけど。

 

長嶋 はい。それは分譲マンションに限っての数字なのですが、都心のいい立地、千代田区とか中央区とかに、80年代後半から、ワンルームマンションがたくさん建ったんですね。

 

田原 ワンルームマンションというと何平米くらい?

 

長嶋 いま空き家になっているような当時の物件は、18平米から25平米くらいまででしょうか。いわゆる投資用のマンションです。買った方たちは、地方の公務員の方とか、遠方にいらっしゃるお医者さんとかで、自分は住まないで投資用として買っています。なので、不動産そのものにはあまり関心がありませんし、空き家になっても賃料を下げるようなこともしない方が多い。だんだん空き家になってしまうんですよね。

 

田原 最初から空き家なんですか?

 

長嶋 いえいえ。もちろん、新築のときは満室でスタートしているんですけど、建物が陳腐化し、老朽化していくなかで、本来は、お金をかけてきれいにするか、あるいは賃料を下げるか、なんらか経営努力をしないといけないのですが、そういうことをやらないわけですね。

 

田原 仮に千代田区のワンルームマンションで、20平米としますね、だいたい家賃はいくらくらいですか。

 

長嶋 6万円から8万円くらいでしょうか。

 

田原 空き家にしたままでは、一銭も入ってこないんでしょ。だったら家賃を下げるくらいはやればいいじゃないですか。4万だって3万だって、入ったほうがゼロよりはいい。

 

長嶋 そうなんですけども、これが不思議なんですね。あるアンケートによりますと、空き家にしている人たちの70%以上が「特に理由はなく空き家にしている」と回答しているんです。そもそも、投資用のマンションをお持ちの方は3万、4万円にこだわっていない人が多いんでしょうね。もうひとつは、マンションはあくまでも共有財産ですから、マンション全体の改修・補修などのリフレッシュをするには話し合いが必要です。でも、その話し合いがうまくいかないんですね。

 

田原 なぜ? 僕の知り合いのマンションでもやってますよ、20年、30年経つから新しくつくりかえる、補修しなきゃいけない、という話を。千代田区や中央区のマンションは、そういう話がうまくいかない?

 

長嶋 そもそも所有者全員がそこに住んでいるマンションでも、建て替えはすごく難しいですね。投資用マンションの場合は、所有者の皆さんが遠方に住んでいることも多く、なおさら難しくなりますね。

 

田原 なるほど。ただ、「空き家」の問題は、そういうマンションの話に限りませんね。これから人口が減ってきて、空き家はどんどん増える。この本に書いてあるんですが、「今年、小学校に入学したこどもが三〇歳を少しこえた頃に、三件に一件、三六%が空き家」になると。これはさっきの都心部のマンションの話ではないんですね?

 

長嶋 はい。これは一戸建てもマンションもひっくるめた日本全体の話で、野村総研の試算によりますと、2040年、26年後ですが、このままいくと36%から40%が空き家になる。「お隣は空き家」の時代です。

 

田原 大都市も地方の都市も関係なく?

 

長嶋 すべての地域の平均ですね。なので、実際には地方ではほとんど誰も住まないような自治体も出てくると思うんです。人が都市部へ都市部へと集まる流れが続いていますから。東京23区でも空き家対策をしている時代です。人が集まるような地域でも、そのなかでの格差が大きくなる。場所によっては、空き家率が20、30%になるというのは、もはや現実的な未来なんですよね。

 

 

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売り物件の査定額、どんなふうに決まるか?

 

田原 どうすればいいのかは大問題ですが、その前に、長嶋さんの本によると、価格査定にインチキがあると。どういうことですか?

 

長嶋 インチキというわけではないんですが(笑)。とにかく日本の住宅というのは建てた時、買ったときがいちばん高いですよね。買って人が住んだ瞬間から、物件は中古住宅マーケットに移ってしまうので、いきなり2割くらい下がる。2000万円のものがいきなり1600万円になる。10年でだいたい半値ですから、1000万円も下がり、25年でほぼゼロ、と。そういうことをずっとやっているんですね。

 

田原 いや、そんなことないと思うな。僕の住んでるマンションは、建って20年以上たつけど、ゼロじゃないですよ。

 

長嶋 それは立地がいいからですね。立地のいいマンション、あるいは物件総額の高いマンションは、中古になっても価値が下がらない唯一の市場なんですよ。それだけが例外なんですね。買ったタイミングもあります。それ以外の、99パーセントの物件、ふつうの郊外のマンションとか、郊外にある一戸建などは、今いったような市場になっています。【次ページにつづく】

 

 

 

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