ネット選挙運動解禁の意義とは何か?

インターネット選挙解禁で投票率が上がる?

 

来たる参議院選挙から、ネット選挙運動解禁となる。以前より、ネット選挙運動解禁を求めるOne Voice Campaignのメンバーとして活動していたこともあって、私も取材をお受けすることが多くなってきている。

 

そういうときに、かならず聞かれることのひとつに「ネット選挙運動解禁によって、投票率は上がりますか? 」といった質問がある。

 

この質問を受けるたびに、私が心のなかで思うことは、日本政治の変わらなさ、抱える問題の根深さである。

 

その理由については最後に述べるとして、せっかくなので、このよく問われる「ネット選挙運動解禁で、参議院選挙の投票率は上がるか?」という質問に答えることから、議論を展開してみよう。

 

私の答えは、「正直いってわからない。しかしおそらくは、ネット選挙運動が解禁されたからといって、参議院選挙の投票率に影響を与えることはないのではないか」というものである。

 

このような議論には既視感がある。それは小選挙区制度導入の際の議論である。90年代、佐川急便事件によって「政治と金」の問題が浮上したときに、あたかも小選挙区さえ導入すれば、そうした問題がすぐに霧消するかのような言説があった。

 

もちろんそんなことはなかった。その理由は単純である。制度が変わったからといって、急に人間の行動そのものが変わるわけではないからである。実際に多くの関係者は、制度設計者の意図とは関係なく、何とか制度の穴を見つけ、慣れた方法で、政治を行う道を探したのである。

 

まして今回のインターネット選挙運動解禁では、これまでの選挙運動が何か禁止されるというわけではない。法定ビラや葉書の頒布、選挙カーでの連呼もそのまま認められる。それどころか、たとえば選挙カーについては、ガソリン代からレンタル代、人件費まで公費の補助が出るのである。もちろんネット選挙運動には公費の補助などつかない。日本の後援会を中心とした選挙のやり方は、一種独特であり「日本の伝統芸能」とも揶揄されることもある。とくに制限がなされないにもかかわらず、伝統が早々廃れるとはとても思えない。

 

何か革新的なネットを使った選挙運動、それをやらないと圧倒的な差がつくと誰もが認めるような手法が出てくれば話は別である。しかし今回の参議院選挙はネットが使えるようになる初めての国政選挙である。有権者も、候補者も、あらゆる関係者が手探りを続けるなかで、いきなり選挙の主役に飛び出るとは考えられない。そうであれば、やはりネット選挙運動が解禁されたからといって、すぐに投票率が上がるとは、このままでは考えられないのではないだろうか?(もちろんこの予想は外れてほしいと思っているし、そのために、最近では「主体的な選挙をつくる会」というネットワークの設立にも私自身かかわっている。)

 

 

有権者の主体性の回復へむけて

 

では、ネット選挙運動解禁は意味がないかというと、まったくそうではない。以下、ネット選挙運動解禁の意義について述べていくが、近視眼的な視点ではなく、長期的な視点から見ていくと、そこには大きな可能性が広がっていることがわかる。そうした観点から改めて今回のネット選挙解禁の意義について述べていこう。

 

まず、今回の公職選挙法改正によって、法律上、あきらかに有権者の主体的に選挙にかかわる余地は広まっている。

 

インターネットが普及した現在、何かわからないことがあればインターネットを使って調べる、あるいは商品を比較したり、ネットを通じて問い合わせることは、多くの人が普通に行っていることだろう。

 

しかし、こと選挙に限ってはそれができない。選挙が近くなって興味を持ち、ネットで調べても、候補者や政党のウェブページの更新は止まり、何か質問しても、まずネットを通じて回答を得られることはなかった(もし回答してしまうと、公職選挙法違反に問われる可能性があるため)。もちろん有権者も、応援したいと思う候補者がいたとしても、ネットを使って支援を呼びかけることはできなかったのである。

 

つまり現在の公職選挙法のもとでは、多くの有権者は、ビラや葉書、ポスター、選挙カーからの連呼、立会演説といった限られた情報、限られた情報を「消費」するぐらいしかできなかったのである。

 

それがネット選挙運動解禁によって、より「自分らしく」選挙にかかわることができるようになったのである。ネットを使って調べ、問い合わせ、そして応援する。これこそが、じつは最大の意義であると思える。こう述べると、あまりにも普通のことじゃないかと思われるかもしれないが、その普通のことすら、いままでできなかったのである。いわばマイナスがゼロになったことの意義ともいえるが、それすらも定着して、さらに有権者が創意工夫をして選挙にかかわったり、候補者も有権者とのコミュニケーションに重きを置くような使い方をしだすには、やはり時間がかかるのではないだろうか。

 

 

 

 

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