南相馬市の内部被曝はどうなっているか?

わたしは東日本大震災以降、福島県・浜通りの医療支援をしている。これまで現地で、被災地の健康診断や放射線の相談会、医師派遣といった活動をしてきた。 現地の状況は時々刻々と変化しているが、現在、問題となっているのは、放射線対策と、被災地で長期的に勤務してくれる医師の確保だ。

 

 

ホールボディーカウンター(WBC)による内部被曝調査

 

10月28日、南相馬市は、小児を対象としたホールボディーカウンター(WBC)による内部被曝調査の結果を公表した。この検査は、南相馬市立総合病院で行われたもので、8月1日から10月11日までに2884人の小児(6才~15才)が受診した。

 

特筆すべきは、9月以降に検査を受けた小児 527人のうち、268人(51%)にセシウム137の内部被曝が認められたことだ。マスメディアが大きく取り上げたため、ご記憶の方も多いだろう。8月以前にセシウムが検出されたのは、2357人中、わずか6人だった。桁違いに検出者が多い。

 

このような差が生じたのは、南相馬市立総合病院がWBCの機種を変更したためだ。新しく導入されたWBCはキャンベラ社製のもの。この器機を用いた場合、セシウム137の検出感度は約200ベクレルで、8月まで使っていた国産WBCの7倍の感度となる。キャンベラ社とは、フランス原子力庁のもとに設立されたアレバ社のグループ会社。国産WBCでは物足りないと感じた地元の産科医である高橋亨平医師らが中心となって導入した。

 

キャンベラ社製WBC 被験者は、この中に入り二分ほど起立。その間、体内から発するガンマ線をカウントする

キャンベラ社製WBC
被験者は、この中に入り二分ほど起立。その間、体内から発するガンマ線をカウントする

 

 

今回の発表で注目すべきは、セシウム137の検出量が、1.6~31.3 ベクレル/kg(中央値7.2 ベクレル/kg)と低いことだ。京都大学の今中哲二氏は、朝日新聞の取材に答え、「人体には1キロあたり50-60ベクレルのカリウム40という放射能が自然にある。その変動の範囲の10や20なら、神経質になっても仕方ないだろう」とコメントしている。政府・福島県の放射線対策に否定的であった今中氏の発言だけに、説得力がある。

 

ただ、ここで問題になるのは、4人の子どもで、20 ベクレル/kg以上のセシウム137が検出されたことだ。最高は30-35 ベクレル/kgに達する。今中氏も「30ベクレルあったら、少し気になるので、減らした方がいい」と慎重な見解を付け加えている。

 

 

チェルノブイリと比較して

 

内部被曝調査を担当した坪倉正治医師(東大医科研、南相馬市立総合病院非常勤医師)は、「(南相馬市とは)別の地域ですが、セシウムが検出された子どもの中には、野山の野草や山菜を食べつづけていた子がいます。また、服装が汚れていたので、試しにガイガーカウンターで測定したところ 、1000ベクレル程度のガンマ線が検出された子どもいました。服を脱いでもらったところ半分になりました」という。いずれも、親が放射線に関する知識が十分でなく、適切な放射能対策を施していなかったのだろう。その保護者に対して、放射能対策について十分に説明したらしい。除染や避難などが話題に上がりやすいが、現実に生活を営んでいる市民に対しては、このような個別の対応によって、少しでも子どもの被曝を減らすことも重要だ。

 

じつは、原発事故でWBCを稼働させるのは、今回がはじめてだ。よく、福島とチェルノブイリが比較されるが、チェルノブイリでWBCが導入されたのは1991年。原発事故から5年も経てば、急性被曝の推計などやりようがないため、おもに食事からの慢性被曝を評価するのが目的だった。

 

「当時、ソ連は体制崩壊が進み、チェルノブイリ周囲は食糧難だった。このため、汚染食品の流通を規制することができず、内部被曝が広まった」そうだ(ウクライナ在住、放射線専門家)。一方で、日本では原発事故後、食の流通に対して多くの関係者や市民が注意を高めている。そのため 福島県において、原発周辺の放射能汚染はチェルノブイリの厳戒制限区域(55.5万Bq/m2)と遜色ないが 、内部被曝は遙かに軽い。

 

余談だが、ウクライナの専門家は「現時点でセシウムが発癌を起こすことを示す証拠はないが、ソ連政府がすべての情報を開示しなかった可能性は十分にある」と指摘する。また、幼少時の被曝が、高齢化してからの発癌に影響するか否かは、十分に検証できているとは言い難い。被曝に対するわたしたちの知識は、まだまだ不十分だ。

 

今回の南相馬の内部被曝調査は貴重だ。南相馬市で行われている内部被曝調査は、検査を受けた市民にとってはもちろんのこと、医学的に貴重な資料でもある 。わたしはこのようなデータを発表した南相馬市立総合病院のスタッフの皆さんに、最大限の敬意を払いたい。

 

 

 

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