在日外国人と共生する地域社会への途――社会福祉に関わる論点から

日本における外国人の増加をめぐって、社会福祉に関わる論点を以下のように設定しておきたい。

 

第一は、サービス供給主体の確保に関するものであり、介護労働力の獲得に代表される。団塊世代が後期高齢期に入る2025年までの介護人材確保のための一つの有力な方途として移民に目が向けられている。第二は、日本で暮らす在留外国人が、生活者・労働者などとしてさまざまな問題に直面した時、日本人と同様、公的サービスを利用したり、インフォーマルなサポート(制度や専門職の手の届かない領域でのボランティアなどによるニーズ充足)を受けたりしながら生活を維持するためにはどうするかというものである。

 

在留外国人数は今もって人口比2%に満たないものの、ほぼ右肩上がりの増加傾向にある(図表1)。「出入国を管理する政策はあっても社会的統合を進める政策がない」といわれる日本においては、日本人と外国人との間で対等な関係構築のできる見通しのないまま受け入れを増加させれば、摩擦やトラブルも増え、状況悪化を安易に招来しかねない。

 

この問題は、現代の社会的孤立・社会的排除の一つの様相としても看過すべきでないものであり、その克服・改善(つまり、社会的包摂の希求)を企図するため、本稿では、上の二点について検討する。

 

 

図表1 在留外国人数の推移と我が国の総人口に占める割合の推移

図表1

(出典)法務省「平成28年版『出入国管理』」p.20

 

 

外国からの介護人材移入の課題

 

2025年まで十年を切り、高齢化の進行に対して明らかな介護人材不足が予測されている。これを見据え、政府はEPA(経済連携協定)による受け入れとは別に、外国人技能実習生の枠組みを広げることなどで対策を講じている。2016年の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、「技能実習法」)の公布により、技能実習生の拡大(最長実習期間を3年から5年までに延長する「技能実習3号」の創設、「外国人技能実習機構」の設置による受け入れの適正性の審査など)を図るほか、「出入国管理及び難民認定法」(以下、「入管法」)の改正によって、在留資格に「介護」を追加した。

 

こうした政策は、いわば日本の人口構造の変化に対する“特効薬”として国外から労働力を移入しようとするものであり、介護人材についてもその文脈に位置づけられている。2014年、安倍政権は、建設・介護・農業・家事サービスなどの諸分野で外国人労働者受け入れの拡大の方針を示したのだが、同年、「選択する未来」委員会(内閣府に設置)は、毎年20万人規模の移民受け入れを即時に開始する必要性について提起している。そして、それを実現すれば100年後にも人口を1億人超に維持できるが、実現しなければ2110年に4000万人台前半まで落ち込むだろうと試算した(注)

 

(注)この試算は、合計特殊出生率を2.07に回復させることが前提条件となっている。よって子育て環境の向上がセットである。

 

なお、かつて国連人口部は、日本が1995年の“総人口”を維持するためには2000~2050年の間に毎年34.4万人、同年の“生産年齢人口”を維持するには毎年64.7万人の移民受け入れが必要だとシミュレートしているので、もし、日本の生産力維持の手段として移民労働力を呼び込むのだと割り切るのであれば、委員会の試算をさらに上回る規模が必要かもしれない。

 

だが注意したいのは、こうした議論で「補充移民」(replacement migration)の概念が持ち出されることである。先の安倍政権の方針は、技能実習法や入管法改正に先んじたものであったが、「実習から労働へ」の転換を促しながらも「移民政策とはしない」点が強調された。外国人労働者への門戸を広げることが、結局は産業界のスケール・ダウンを回避するための「止むを得ない」かつ「一時的な」対応に過ぎないのだとすれば、単なる数合わせやその場凌ぎに終わるのではないかという懸念が拭えないのである。

 

非正規雇用の拡張が、当該労働者の生活を直撃すると同時に将来におよぶ不安やストレスをもたらしていることに照らしても、外国人労働者の場合も同様に不安定な境遇に置かれ得ることは想像に難くなく、まして言語や文化のハンディ、心理的な障壁などがある分、日々の労働や育児などのストレスは日本人以上となりかねない。外国人を受け入れる雇用先や地域に、彼ら彼女らを対等なパートナーとして迎える姿勢がないかぎりは、新たに差別や排除を生むリスクがある。実際、1989年の入管法改正に伴う大規模な日系人受け入れの時にもこのような問題が起きている。このことについては、できるだけ早い段階で具体的に検討しておかなければならない。

 

外国人の定住化に伴い、言語・文化の習得、教育、職業訓練、住居確保、保健・医療・福祉サービスなどさまざまな分野での多文化化、さらには差別・排除の解消などといった社会的コストが発生するのだが、現状では十分勘案されているとは言い難い(中本2009)。こういう点も想定して移民政策は展開させる必要がある。

 

 

日本で暮らす外国人に対する福祉的支援

 

他方、日本で暮らす外国人を社会福祉の支援対象としてとらえる視点や方法は、比較的新しい実践・研究分野ではあるものの、着実に取り組まれてきた。日本社会福祉士会は、外国人が直面する生活ニーズや問題に対応する相談援助を「多文化ソーシャルワーク」と呼び、そのカテゴリーを現行制度や実践課題に即して、「医療」「メンタルヘルス」「不就学児童」「児童虐待」「国際結婚」「ドメスティック・バイオレンス」「労働」「難民」「高齢者」「障害者」「犯罪・更生保護」に分類し、職能団体として実践者の専門性向上を促している。

 

多文化ソーシャルワークの定義は、「多様な文化的背景をもつクライエントに対して行われるソーシャルワーク」「クライエントとワーカーが異なる文化に属する援助関係において行われるソーシャルワーク」「クライエントが自分の文化と違う文化と異なる環境に移住、生活することにより生じる心理的・社会的問題に対応するソーシャルワーク」(石河久美子2012)だと理解されている。

 

同会も、これに依拠して実践化を促進する立場であり、問題解決やニーズ充足にあたる社会資源として、「公的サービス」(医療保険、年金保険、社会福祉・労働・教育など)、「自治体・公的機関」(市区町村窓口、国際交流協会、教育機関、労働基準監督署、大使館など)、「インフォーマルサービス」(通訳・翻訳、NPO・ボランティア団体、同国人の協会・ネットワーク、宗教関連、職場、家族・親戚・友人など)を挙げている。

 

当然ながら、こうした理論に基づく施策・サービスや実践は、外国籍住民が多く住む(外国人集住地区をもつ)自治体や地域で進んでいる。新宿区は、「しんじゅく多文化共生プラザ」を設置し、外国人への相談対応、生活に必要な各種情報の提供、日本語学習などを行っている。鈴鹿市社会福祉協議会(三重県)では、公的支援ではカバーできないニーズをもつ外国人を手厚く支援している(外国人支援のNPOとのネットワーク化、外国人向けのサロンや介護教室、意識調査、支援するための任意団体の設置など)。美濃加茂市(岐阜県)では、住民組織である自治会が率先して外国人の生活や問題について学ぶ機会を設け、自治会の担い手として外国籍住民に期待し、その受け入れを図っている。

 

これらを見ると、ニーズや問題を抱えた外国人を支援する時の内容としては、言語や在留資格、同郷出身者の組織化などのように、(1)外国人に〈固有の課題〉に対応するタイプと、子育てや医療・介護などのような、いわば(2)国籍を問わず誰もが直面しうる〈普遍的な課題〉に多文化的要素を加味するタイプ(行政などの窓口で多言語対応できるようにする、提供するサービスを「日本人向け」のみにしないことなど)といった対応がある。

 

また、相談援助、介護・保育、就労支援といった(A)対面接触(フェイス・トゥ・フェイス)の場面による〈直接的援助〉とカテゴライズされるソーシャルワークもあれば、外国人の組織化・ネットワーキングや周囲の日本人コミュニティとの関係づくり、差別撤廃運動、政策・計画立案、財源形成などのような(B)〈間接的援助〉と呼ばれるソーシャルワークも必要とされている。

 

それらを概念上、図表2に整理しておく。社会福祉分野にかぎらず、これまでの日本の社会サービスは、ともすれば「日本国籍を有し」「日本の言語や習慣を解し」「これからもずっと日本に住み続ける人」に偏って設計される面が少なくなかったのではないか。それだと真のニーズ充足ができない住民層がいることを、これまで以上に念頭に置く必要がある。【次ページにつづく】

 

図表2文化的背景異なる人々へのソーシャルワークの分類

 

 

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