シノドス・トークラウンジ

2022.09.26

2022年10月19日(水)開催

持続可能性のためのエシックスとは?――サンドラー『環境徳倫理学』を読む

熊坂元大 環境倫理学・政治哲学 ホスト:橋本努

開催日時
2022年10月19日(水)20:00~21:30
講師
熊坂元大
ホスト
橋本努
場所
Zoom【後日、アーカイブでの視聴も可能です】
料金
1500円(税込)

対象書籍

環境徳倫理学

ロナルド・L・サンドラー / 熊坂元大 (翻訳)

ここ数年、地球温暖化の影響で雨による被害が多くなったように思います。私たちの暮らしはますます環境のリスクを抱えるようになりました。いったい、炭素の排出量を減らして持続可能な社会を実現するためには、何をすればいいのでしょう。「地球にやさしい生活をする」というのは分かりますが、では「地球にやさしい」というのは、どういうことなのでしょう。

最近、環境倫理学の基本文献とされる、ロナルド・サンドラー著『環境徳倫理学』の邦訳が刊行されました(原書は2007年)。本書は、持続可能な社会を実現するために、私たちがどんなエシックス(倫理)を必要とするのかについて、多角的に検討しています。たんに「地球にやさしい」と言うのでなく、その背後で考えるべきさまざまな美徳と悪徳を整理・検討しています。

従来、美徳というのは、人間の利己心を克服して、社会の繁栄に資するような道徳的気質とされてきました。しかし、社会の繁栄や人類の繁栄とは別に、地球環境の持続性に資する美徳というのは、あるのでしょうか。これは倫理上の大問題です。

例えば「節制」は、社会が繁栄するために必要な美徳です。では節制は、社会が衰退して、地球環境が維持されるレベルにまで、強化されるべきでしょうか?本書は、このような大きな問題に迫ります。

むろん、環境問題は、人間の美徳だけで解決できるものではなく、技術的な問題や費用便益の問題についても合わせて検討すべきでしょう。しかし環境問題の多くは、技術的・経済的に考えても、適切な答えを出すことが難しい。

例えば遺伝子組み換え作物を食べてもよいのでしょうか。法律の観点からは食べてもよいとされますが、では倫理の観点から、遺伝子組み換え作物をどう評価すべきなのでしょう。私たちはどんな行動指針をもつべきなのでしょうか。

こうした問題を考えるときに、環境「徳」倫理学が役に立ちます。シノドス・トークラウンジでは、本書『環境徳倫理学』を素材に、環境と倫理の関係について掘り下げたいと思います。私たちの生活意識について語り合います。皆様、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

熊坂元大環境倫理学・政治哲学

1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。康寧大學兼任助理教授、國立高雄大學兼任助理教授(どちらも台湾)などを経て、現在は徳島大学大学院社会産業理工学研究部准教授。近著に「『動物のいのち』におけるエリザベス・コステロの振る舞いから考える交感と受傷性の倫理」(環境思想・教育研究10号、136-143頁)など、共著に『「環境を守る」とはどういうことか――環境思想入門』(岩波ブックレット、2016年)、『未来の環境倫理学:災後から未来を語るメソッド』(勁草書房、2018年)など。

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