2026.10.29
TOEIC高得点でも英語の会議で発言できない理由
英語の会議で、言いたいことが頭に浮かぶ。
でも、英語でどう言えばいいかを考えているうちに、話は先へ進んでしまう。
結局、ひと言も発言できないまま会議が終わる。
そんなことはないでしょうか。
英会話のコーチングをしていると、こうした悩みをよく聞きます。
しかも、そう話してくれるのは、英語が苦手な人ではありません。
TOEICで高いスコアをもち、文法もきちんと理解している人ほど、この悩みを抱えています。
なぜでしょうか。
原因は、正しい英語を話そうとして、そこに頭を使いすぎているからです。
会議では、何を言うかを考え、それを英語にして、口に出さなければなりません。
そのうえ英語の正しさまで気にしていたら、頭が追いつかなくなります。
会議で発言できるようになるために、まず必要なのは、正しく話す力ではなく、止まらずに話す力です。
英語ができる人が黙り、英語が苦手な人が会議を動かす
たとえば、こんな場面を考えてみましょう。
海外のマネージャーも参加するリモート会議。
話題は、新しいサービスのリリース時期です。
マーケティング担当のAさんには、言いたいことがありました。
「ユーザーテストの結果を見るかぎり、リリースは予定どおり来週にすべきだ。」
ところが、英語にしようとすると、迷いはじめます。
「見るかぎり」は、Considering か、Given か、Based on か。
「すべきだ」は、should か、need to か。
「リリースする」は、release でいいのか、launch のほうがいいのか。
そうしているうちに、営業担当のBさんが話しはじめました。
Bさんの英語は、Aさんよりも明らかに下です。
文法はかなり怪しく、発音も日本語のアクセントのまま。
それでも、Bさんはまったく迷いませんでした。
Wait, wait. Next month is better. Still many bugs. Customer angry. Understand?
文になっていないところもあります。
それでも、マネージャーはすぐに反応しました。
Oh, you mean there are still some bugs? Okay, tell me more.
会議はここから、Bさんのペースで進みました。
リリースは翌月に延期になり、Aさんは最後まで発言できませんでした。
英語ができるはずのAさんが黙り、英語が苦手なBさんが会議を動かす。
仕事の場では、こうしたことがめずらしくありません。
正しく話そうとすると、頭が追いつかない
Aさんは、何をしようとしていたのでしょうか。
まず、言いたいことを日本語で考える。
つぎに、それを正しい英語の文に組み立てる。
そして、口に出す。
しかもAさんは、これを、話が進んでいく会議のなかで一度にこなそうとしていました。
会議の最中に、頭のなかでかなり難しい英作文をし、それを話そうとしていたわけです。
応用言語学者のピーター・スキーハンは、人が一度に向けられる注意にはかぎりがある、と考えました。
そのため、外国語で話すときには、正確さ、流暢さ、内容の複雑さが、互いに注意を奪い合うと論じています。
Aさんは、複雑な内容を、しかも正しい英語で言おうとしていました。
内容の複雑さにも、正確さにも、注意を向けていたわけです。
その結果、流暢さに回す注意が残らなかった。
口を開くことさえ、できなくなってしまったのです。
Bさんは逆でした。
内容は単純にし、正しさも気にせず、とにかく口に出しました。
正確に言えば、気にしようにも、Bさんには正しい英語が身についていなかったのでしょう。
でも、だからこそ、Bさんは議論に加わることができたのです。
会議室に採点者はいない
では、Aさんはなぜ、そこまで正しさを気にしてしまうのでしょうか。
私たちは学校で、英語を「正しさ」で評価されてきました。
三単現のsを忘れたら減点、前置詞を間違えたらバツ。
英語の知識がどれだけ正しく身についているかを、ずっと採点されてきたわけです。
そのため、いまでも頭のどこかに採点者がいます。
「Considering か、Given か」とAさんに問いかけていたのは、この採点者です。
言語学者のスティーブン・クラッシェンは、学んだ文法の知識で自分の発話をチェックするはたらきを「モニター」と呼びました。
そして、話すたびにモニターを働かせ、正しいかどうかを確かめずにはいられない学習者は、正しさを気にするあまり、ためらいがちになり、なめらかに話せなくなると指摘しています。
しかし、会議室に採点者はいません。
いるのは、相手の話を理解しようとしている人だけです。
Bさんの英語は、学校のテストなら赤点でしょう。
それでも、マネージャーはすぐに理解しました。
そもそも、英語が正しいかどうかなど、気にしてもいなかったはずです。
会話で相手が気にしているのは、「何を言っているのか」、それだけです。
正しさは、あとからついてくる
では、どうすればいいのでしょうか。
まず、日本語で言いたいことをまとめてから英語にする、というやり方をやめてください。
そして、話しはじめたら、細かい間違いは気にせずに話しつづける。
これをつづけていると、よく使う表現や文のかたちが、考えなくても口から出てくるようになります。
すると、頭に余裕ができる。
この余裕があってはじめて、話しながら言葉選びや文法に気を配れるようになるのです。
まず身につけるべきは、止まらずに話す力です。
正しさは、そのあとからついてきます。
長い一文を、短い文に分ける
ただし、止まらずに話せるようになっても、Aさんが言おうとしたような英語がすらすら出てくるわけではありません。
「ユーザーテストの結果を見るかぎり、リリースは予定どおり来週にすべきだ。」
この日本語をそのまま英語にしようとしているかぎり、止まらずに話すことはできません。
止まらずに話す人は、これをいくつかの短い文に分けます。
I think we should release it next week.
The user tests went well.
I don’t see any reason to wait.
どれも、ごく簡単な文です。
まず「来週リリースすべきだ」と言ってしまい、そのあとで理由を足しています。
これなら、Aさんが言いたかったことは伝わります。
「見るかぎり」を英語でどう言うかを、考える必要はなかったのです。
日本語の複雑な一文を、そのまま英語にしようとしない。
言えることから短く口に出し、そこに必要なことを足していく。
これが、会議で発言できるようになるための基本です。
シノドス英会話では、実際に英語で話してもらいながら、
どこで正しさを気にして止まっているのか。
頭の中で、どんな日本語を英語にしようとしているのか。
それを、どんな短い英語に分ければ話しつづけられるのか。
そうしたことを、ひとつずつ見ていきます。
英語の知識はある。
TOEICのスコアもそれなりにある。
それでも、
「会議になると、いつも発言のタイミングを逃してしまう」
「自分より英語ができない人のほうが、会議で存在感がある」
と感じているのであれば、一度、実際にあなたが英語を話しているところを見せてください。
シノドス英会話の現状診断セッションでは、あなたが会議で発言できない原因を分析します。
そして、止まらずに話す力を身につけるために、何をどう練習すればいいのかを具体的に提案します。
