地方からの教育イノベーション

山口県立大学国際文化学部准教授・浅羽祐樹氏、J Institute代表・斉藤淳氏、明治大学政治経済学部准教授・飯田泰之氏によるトークイベント「朝日新聞・WEBRONZA×Synodos主催 地方からの教育イノベーション」。いま地方の教育はどうなっているのか、地方にいながらして教育者はなにができるのか、これから教育はどのように変わるべきなのかなどなどなど、誰もが一家言もつ「教育」をテーマに、縦横無尽に語り合った。(構成/金子昂)

 

 

地方だからこそのビジネスチャンス

 

飯田 本日は朝日新聞・WEBRONZA×Synodos主催「地方からの教育イノベーション」トークイベントにお越しいただきありがとうございます。今日は、日本における教育の現状など幅広く「教育」をテーマに、浅羽祐樹さん、斉藤淳さんとお話したいと思います。

 

さて、教育社会学がご専門の舞田敏彦さんによると、日本全国の各都道府県で、東大・京大に進学する生徒の割合は、奈良県では約3%、東京都では1%に対して、東北・九州では0.1%台です。

 

一方で地方の場合は、ナンバースクール(旧制中学校)のような地域の公立のトップ校以外には、なかなか有名大学へのルートがない状態なのではないでしょうか。つまり東京圏や京阪と地方では教育の環境がまったく異なっている。このような違いは、おそらく生徒の興味・関心にも現れてくると思われます。

 

斉藤さんが代表を務められているJ Instituteは、自由が丘と斉藤さんのご出身である山形県酒田市にあります。やはり自由が丘と酒田市の生徒には、家庭環境や学力、性格など違いが見られるものですか?

 

斉藤 自由が丘の親御さんは海外経験のある方もいて、学校の英語教育には期待できないし、学習塾で英語を教えている先生も発音がいまいちで、「自分の方がうまいんじゃないか……」とお話になる方が多いですね。そうした方にうちの塾を選んでいただけているのはありがたいことです。酒田市は、帰国子女も海外駐在経験のある親御さんもいません。自分が生まれ育った家庭と同じように、地方のよくある普通の家庭の生徒が通っています。

 

どちらの地頭(じあたま)が良いのかはわかりませんが、自由が丘の生徒は御三家と言われるような学校に通っていることもあって、中学受験を通して勉強の習慣を身に付けています。酒田市の生徒は、まず勉強をする習慣から指導するので、そこには違いがありますね。

 

とくに、自由が丘の場合は、英語を身に付けることで得られる期待収益を肌身で感じられる環境にありますが、酒田市は、外資系企業もありませんし、「なんで英語の勉強をしているのだろう?」と不思議に思っているところは特徴的な違いだと思いますね。

 

飯田 地方で講演をすると感じるのですが、地方の場合、意識の中で海外に行くよりも東京に行くという意識が強いように感じます。

 

斉藤 確かに東京の子どもたちは数ある選択肢の一つに「海外」があるようですが、地方の場合は、まず東京があり、その先に海外があるというイメージを持っている気がします。

 

ぼくは教育熱心じゃない地方だからこそ、伸ばす余地があり、ビジネスとしてのチャンスもあるのではないかと思っています。ネイティブの先生と共同でチーム・ティーチングできない環境の中でも、英語教育をサポートできるような仕組み作りをすることを自分に課すつもりで、酒田市で教えているんです。

 

飯田 酒田市でできる仕組みなら、他の地方でもできる、と。

 

斉藤 ええ、なんでも東京が最先端というのは大嘘なんですよね。人口統計を見ても、地方から少子高齢化している。東京でこれから起こることは、地方ではすでに起きている、そのような課題もたくさんあるわけです。

 

 

斉藤氏

斉藤氏

 

 

 

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