風営法にまつわる基礎知識Q&A

Q8. 都市清浄化作戦とは何ですか?

 

全国の都市部を中心に主に風営法違反の店舗を中心とした摘発を行い、夜の繁華街の一掃を行おうとする政策の俗称です。この俗称がもっとも有名となったのが、石原都政下で進められた新宿・歌舞伎町の清浄化作戦であり、それを境に歌舞伎町の治安は一気に回復したと言われています。

 

一方、多くの風俗営業店が一気に歌舞伎町から撤退したことで、かつて「東洋一の繁華街」と呼ばれた歌舞伎町はかつてのにぎわいを失い、その魅力が減退したという意見も存在します。

 

 

Q9. クラブ一斉摘発とは何ですか?

 

クラブ一斉摘発とは、都市清浄化作戦のなかでもとくに違法ダンスクラブの摘発を目的に実施される一連の摘発事案を指します。クラブ一斉摘発は、2010年末に関西の繁華街を中心に始まり、それが全国に広がりました。現在では、東京、大阪、名古屋、福岡など全国の主要な繁華街において、地域の主だったクラブが一斉に摘発を受けるという事案が発生しています。

 

 

Q10. 「レッツダンス署名推進委員会」とは何ですか?

 

レッツダンス署名推進委員会(http://www.letsdance.jp/)とは、関西で始まったクラブ一斉摘発をキッカケとして組成された風営法の改正運動を推進する組織です。レッツダンスの主な要求は以下の通りです。

 

 

1) 風営法の規制対象から「ダンス」を削除してください。

2) 行政上の指導は、「国民の基本的人権を不当に侵害しないよう」に努め、「いやしくも職権の乱用や正当な営業をしている者に無用の負担をかけることがないよう」とする「第101国会付帯決議」(衆院1984年7月5日)や「解釈運用基準」(2008年7月10日)にもとづき適正に運用してください。

3)表現の自由、芸術・文化を守り、健全な文化発信の施策を拡充して下さい。

 

Let’s DANCE署名推進委員会について(http://www.letsdance.jp/about/)より

 

 

レッツダンス署名推進委員会は、坂本龍一氏など著名なアーティストを呼び掛け人として、2012年から約一年をかけて上記の要望を支持する約15万筆の署名を集め、2013年の通常国会に法改正に向けた請願提出を行いました。しかし、残念ながら同請願は衆参両院における担当委員会によって不採択となっています。

 

 

Q11. 第101国会付帯決議(衆院1984年7月5日)とは何ですか?

 

第101国会付帯決議とは、1984年の風営法の抜本改正にともなって国会で決議された法執行にあたって前提とされる確認事項です。付帯決議は、法的な拘束力をゆうするものではありませんが、行政にはその内容の尊重が求められており、「レッツダンス」はその遵守を国に求めています。以下が当時の国会で行われた付帯決議の全文です。

 

 

風俗営業等取締法の一部を改正する法律等の施行について(例規)

 

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について善処すべきである。

一 現下の世相にかんがみ、少年の健全な保護育成及び善良の風俗の保持等を図るため、総合的、科学的調査の上少年非行の防止、性病の予防及び売春の防止等を更に徹底する総合的な施策を速やかに講ずるべきであること。

二 本法の運用に当たっては、表現の自由、営業の自由等憲法で保障されている基本的人権を侵害することのないよう慎重に配慮すること。

三 風俗営業者への指導に当たっては、営業の自由を最大限尊重するとともに、管理者制度が営業の自主性を損うことのないよう特に慎重に運用すること。

四 「接待」の意義については、風俗営業の重要な要件に当たるので、その具体的な内容について明確な基準を定め、都道府県警察の第一線に至るまで周知徹底すること。

五 ゲーム機の規制の在り方について引き続き検討すること。

六 遊技機の技術革新が著しい現状にかんがみ、技術上の規格の検討に際しては、学識経験者及び業界代表等第三者の意見を聴取して尊重し、機械の画一化を招いたり、時代のニーズにマッチした技術開発を遅滞させることのないよう運用に特段の配慮をすること。

七 広告及び宣伝の規制に当たっては、適正かつ効果的に行われるようその基準の明確化を図り、都道府県警察の第一線に至るまで周知徹底すること。

八 風俗関連営業については、今後とも有効適切な取締りに努めることはもちろん、法の網を逃れる脱法的な形態でこれらの営業が営まれることのないよう人的欠格事由、構造設備規制等本法による規制の対象、規制の内容についても、逐次強化を図っていくべきであること。

九 本法に基づく政令等の制定及び本法の運用に当たっては、研究会等を設置し、地方公共団体の関係者を含め各界の意見を聞くこと等により、法の運用に誤りなきを期すこと。

十 警察職員の立入りに当たっては、次の点に留意して、いやしくも職権の乱用や正当に営業している者に無用の負担をかけることのないよう適正に運用すべきであり、その旨都道府県警察の第一線に至るまで周知徹底すること。

1 報告又は資料の提出によってできる限り済ませるものとするとともに、報告又は提出書類等については、法の趣旨に照らし必要最小限のものに限定すること。

2 本法の指導に当たる旨を明示する特別の証明書を提示するものであること。

3 本法の運用に関係のない経理帳簿等を提出させ又はみることのないようにすること。

4 立入りの行使は個人の恣意的判断によることがあってはならず、その結果は必ず上司に報告してその判断を仰ぐものであること。

十一 少年指導委員の活動はあくまで任意の活動に限られるものであり、その内容も少年の犯罪を摘発するのではなく、有害環境から少年を守り、その健全育成を図るものであることを周知徹底すること。

十二 風俗環境浄化協会は、民間における環境浄化の機運を一層盛り上げるためにあくまで啓発活動等任意的な活動を行うものであり、その運営に当たっては、業界との協力を促進しその自主性を最大限尊重するとともに、寄附の強制は行わないこと。また、行政書士等の権限を侵すことのないよう配慮すべきであり、更に、行政改革の趣旨に反することのないようその指定に当たっては、既存の防犯協会連合会等を活用すること。

右決議する。

 

 

法の執行にあたってこれ程のボリュームの付帯決議がなされた背景には、前出の風営法そのものの「曖昧さ」が存在します。一部からの批判が存在するとおり、これら法規定の曖昧さは「行政による法の恣意的な運用を生む」ということは風営法の抜本改正が行われた1984年当時の国会においても懸念されており、その執行に際して行政府にたいして上記のようなさまざまな事項の尊重が求められました。

 

 

Q12. 「1984年の風営法抜本改正」とは何ですか?

 

風営法は1948年に成立した法律ですが、これまで幾度となく改正が行われています。そのなかでも、「法の目的」までもを含む大幅な変更が行われた改正が「1984年風営法の抜本改正」として知られています。

 

風営法の1984年改正は当時の世相を反映し、社会問題化していた「青少年の不良化」問題を背景に(当時の日本は空前の「ヤンキーブーム」でした)、法の目的のなかに「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」という文言が付け加えられました。また、その改正に伴って、風俗営業種の深夜12時以降(条例がある場合は深夜1時以降)の営業の禁止規定など、新たな規制強化が行われました。

 

 

Q13. 「クラブとクラブカルチャーを守る会」とは何ですか?

 

「クラブとクラブカルチャーを守る会」とは、関東圏のクラブ関係者が中心となって2013年に設立した業界組織です。先述の「レッツダンス署名推進委員会」が、法改正に向けた署名収集をその活動の主軸に置いているのにたいして、クラブとクラブカルチャーを守る会は法改正の前提となるクラブ業界の健全化、自浄努力のための自主ルールの設置などを考えることもその設立の趣旨に含んでいます。

 

 

Q14. 「ダンス文化振興議員連盟」とは何ですか?

 

上記のような業界側の風営法改正に向けた要望を受けて、衆参の国会議員によって2013年に組織された議員連盟です。会長には元・文部科学大臣の小坂憲次議員、幹事長には元警察官僚の平沢勝栄議員が就任しており、超党派議連として自民・民主・みんな・社民・共産などから約60人の国会議員が集まっています。

 

 

Q15. なぜいま、とくにクラブが摘発にあっているのですか?

 

警察庁はその摘発の理由を、クラブ事業者自身による騒音や酔客の巻き起こすさまざまなトラブルによる近隣苦情によるものと説明していますが、その種の苦情発生は伝統的に存在するものであり、いまに始まったわけではありません。

 

近年、ダンスクラブにたいする摘発が急に強化された背景には、いまだ記憶に新しい六本木のクラブにおける「金属バット撲殺事件」や「酒井法子氏による薬物事件」など、クラブを舞台として発生したさまざまな事件が社会問題化したことにあるともいわれています。

 

一連のクラブ一斉摘発の発端となった2010年の関西における摘発も、その年の初頭に近隣クラブ内で客同士の争いによる死亡事件が発生しており、それが一斉摘発の主たる要因となったとの説もあります。

 

 

Q16. クラブ業界が抱える最大の問題は何なのでしょう?

 

ダンスクラブ業界が現在抱えている根源的問題は、現存するほとんどのクラブが風営法の許可を取っておらず、無許可営業状態のまま長年存続してきたことにあります。

 

そもそも風営法におけるダンスクラブの規定は、営業者側がイベントを企画し、DJやスタッフを直接雇用して運営する「ディスコ」と呼ばれる大型のダンス施設を想定して制定されたものです。しかし、特に1984年の風営法大改正によって風俗営業種に対する営業規制強化が行われた後、市中では飲食業としてのみの営業許可を保持しながら「飲食店とし音楽ファンにパーティスペース貸しているだけ」という名目で営業を行う業態が出現し、「クラブ」という名称で日本全国に広まります。これら営業は、法律上はディスコと同じく「客にダンスをさせ、かつ客に飲食をさせる営業」として風営法上の許可営業種となるのですが、長らく摘発の対象とならず、そのまま社会に定着してしまいました。

 

 

Q17. なぜクラブ事業者は風営法の許可を取らないのですか?

 

現存するダンスクラブのなかには、そもそも風営法の定める立地要件や店舗としての構造要件を満たしておらず、許可を取ることができない業者もあります。しかし、多くの事業者にとっては「許可を取ると、そもそも営業が成り立たない」というのが無許可営業を続ける主たる理由となっています。

 

風営法は、そこに規定される各風俗営業種の深夜12時以降(特別に条例がある場合には深夜1時以降)の営業を禁じています。しかし長らく摘発の対象とならず、深夜も営業を行うものとしてその存在が社会に定着してしまったこともあり、クラブは深夜営業が当たり前の業態としてファンのなかで認知され、またそれを前提として業界構造が形づくられてきました。

 

周辺にいくらでも深夜営業を行う競合業者がいるなかで事業主が現在の営業を許可営業(すなわち深夜12時以降の営業を行わない事業)へと移行すれば、事業を維持するのに十分な収益を生むことができなくなるのが実態となっており、この営業時間の規制が結果的に無許可営業が存続し続ける要因となっています。

 

 

Q18. この問題は、クラブ事業者だけのものなのでしょうか?

 

とくにこの風営法の定める深夜営業禁止規定にかんしては、クラブ事業者のみならず多くの風俗営業種にとって共通の課題になっています。身近なところでは、全国の街の路地裏等に多数存在するスナックなども同様です。

 

古今を問わず多くのオジサマ世代に愛されてきた街場のスナックですが、ただ酒類を提供するだけのカウンターバーとは異なり、「顧客と談笑する」など一定の接客要素が存在しており、風営法の定める許可営業種となっています。ところが、これら業態も伝統的に無許可営業のまま放置されてきたものであり、多くの営業者が無許可営業状態にあります。同時にそのような業態としてすでに社会に定着してしまっているなかで、深夜12時以降の営業なくして事業が成り立たないというのもクラブ事業者とほぼ同じ状態です。この他、類似する問題はホステスクラブや雀荘の業界などでも見られます。

 

 

 

 

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