風営法にまつわる基礎知識Q&A

Q19. 風営法はなぜ風俗営業種の深夜営業を禁止しているのでしょうか?

 

繰り返しになりますが、風営法はそこに規定される風俗営業種そのものを害悪視しているわけではありません。

 

風営法を所管する警察庁は、風営法が風俗営業種の深夜営業を禁止している理由を「深夜は、一般的には社会生活を営む人々の静穏を確保すべき時間帯であり、また、昼間と異なり、ともすると規範を逸脱しやすく、社会の中の制御機能も弱くなり、風俗上の問題が拡散しやすい時間帯である。実際に、違法に深夜に営まれている風俗営業に関しては、騒音、酔客のい集や酔客による通行人等とのトラブル、店内外における客同士の傷害事件、未成年者の出入り等の問題が発生している」と説明しており、むしろ営業の周辺に存在するさまざまなトラブルを問題視している状況です。

 

現在の一部の風俗営業がこのようなトラブルを増長する傾向にあるのは事実です。しかし、その背景には各種トラブルが発生した場合に無許可営業であるがゆえに警察と連携してそれに対処できないという実態もあります。とくにダンスクラブやスナックなど、一部の無許可営業が常態化している業態では、店内でトラブルが起こった際、警察に相談するのではなくトラブル客をただ店外に退去させることでこれに対処しがちです。

 

しかし、そのような中途半端な対処が行われるがゆえに、本来は店内で適切に抑制されるべき問題が外部化および拡大し、それが近隣苦情を生むという構図になっています。また、営業許可を取ると事業が成り立たずに結果的に無許可営業を維持せざるを得ないという業界構造そのものが、「トラブルが起こった際に警察と連携できない→そこに社会悪が入り込む→トラブルがさらに助長される」という負の循環を生んでいるともいえます。

 

 

Q20. 「営業時間緩和提案」とは何ですか?

 

上記のような風俗営業種を取り巻く負の連鎖を解消するために、「レッツダンス」等の特定業種にたいする「規制の撤廃」を訴える動きとは別に行われているのが、風営法の営業時間緩和提案です。

 

風俗営業の営業時間緩和提案は2002年に成立した構造改革特区法にもとづき、政府にたいする特区提案というかたちで進められており、現在、所管省庁となる警察庁との協議が行われています。この提案には、各風俗営業種が許可営業に移行できない主たる要因である「深夜0時以降の営業禁止」規定を撤廃することで多くの営業種に「許可営業化」を促し、現在存在する負の循環を解消することが期待されています。

 

ただし警察の風営法改正に向けたスタンスは非常に「後ろ向き」です。同様の趣旨の特区提案は2005年および2006年にも警察庁にたいして行われたことがありますが、当時から警察庁はそれら提案の採用を拒否し続けています。

 

 

Q21. 特区提案は一部地域のみに限定して認められるものなのですか?

 

2002年に成立した構造改革特区法は、「民間事業者や地方自治体の行為を不要に制限している制度の見直し」を目的として、法改正に向けた「社会実験場」を特区として整備するための法律です。この構造改革特区において実施され、「とくに問題がない」と判断されたものは速やかに全国に適用されることが原則となっており、「社会実験」として実施される施策が永遠に特区のなかに限定されるわけではありません。

 

 

Q22. 風営法の緩和(もしくは規制除外)を受けた業種は過去にも存在するのですか?

 

過去に風営法の規制対象業種となっていたものの、その後の法改正要望によって規制緩和措置、もしくは規制除外を受けた業種としてはビリヤード場(1955年)、社交ダンス教室(1998年/当時は政令上、社交ダンスのみに限定)などがあります。

 

その改正のあり方は、規制の完全撤廃から条件付緩和まで存在しており、一様ではありません。また、それらが実現されるまでには業界による自浄化運動や、法改正要望など継続的な活動が存在しており、いずれも一朝一夕で容易に達成されたものではありません。

 

 

Q23. その他に、法改正に向けた注目すべき動きはありますか?

 

2013年、とくに近年高まりを見せるクラブ業界等による法改正運動を受けて、東京都渋谷区、東京都町田市、福岡県福岡市などでの地方議会で、風営法改正を求める要望書の決議が行われています。また東京都による「都市機能の24時間化」構想など、深夜以降の都市経済の活性化を政策として採用する地域も現れており、風営法改正に向けた機運は地方行政のなかにも生まれつつある状況です。

 

 

Q24. 今後の風営法論議のために何ができますか?

 

特定業種への規制の全面撤廃から営業時間規制の緩和まで、現在論じられている風営法の改正手法にはさまざまな様式が存在しますが、いずれの様式の法改正においても必要となるのは業界の自律的な清浄化運動です。

 

前出のとおり、風営法に定められている風俗営業種は「適正に営業が行われれば、国民の健全な社交場や憩いの場となる施設」とされており、その営業内容自体が問題視されているわけではありません。一方で問題視されているのは、その営業から派生して発生しがちな事業者自身もしくはその顧客によるさまざまなトラブルであり、それらトラブルに対応する自助努力なくして法改正に向けた社会的合意はかたち成され得ません。事業者自身による自助努力はもちろんのこと、とくに酔客等による近隣トラブルにかんしては利用者の皆様各人のモラルをもった行動が求められています。

 

 

サムネイル:『歌舞伎町一番街』Kobetsai

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