雇用を生み出せ! 被災地における「キャッシュ・フォー・ワーク」

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長期的な雇用を生まなければ、復興は生まれない

 

工藤 ワールドインテックの工藤と申します。わが社は製造業を中心とした人材派遣をしている会社です。現在、雇用を通じた復興事業に取り組んでいます。

 

ワールドインテック;http://www.witc.co.jp/

 

2011年6月に、いま関わっている「福島絆づくり応援事業」の案が県から出され、当社が手をあげました。長期的な視点で継続雇用を生み出せないと自立は生まれない。自立をすることが最終的な復興に繋がるんだ、という考え方でやっています。

 

これはぼく個人の考えなんですが、震災が発生した直後はボランティアの人たちの力がすごく重要なんです。被災者だけではどうにもできないことが沢山あります。でも、ある場面をきっかけに地域の人が自分でお金を稼ぐというフェーズに入っていかないといけません。だからこそ長期的な仕事を意識しました。

 

事業スキームとしては、各自治体であがって来た仕事に対し、県が窓口になり一括で管理するかたちを取っています。その雇用の部分を行政の代わりに、われわれが担います。人を集めたり労務管理をしたりするのはわれわれ人材派遣会社ですから、得意な業務なんですね。協力させてもらうことで、各自治体の雇用の仕事を排除することができ、自治体は機能回復に集中できるようになります。ちなみに、2011年度の、のべ雇用実績は2053名です。

 

基本的に時期ごと地域ごとに仕事が変わっていきました。6月~8月の段階は避難所の仕事が多く、被災証明の発行などが忙しい時期もありました。その後、避難所から仮設住宅に仕事が移っていくと、そのタイミングで仕事が変化します。

 

たとえば川内村をあげると、村には入ることができるけど、皆さん別の所に避難されている。ですので、現地のパトロールのニーズが増えてきました。実際に不審者を捕まえて新聞に載ったりもしています。こういった仕事が9月~12月の間で増えてきました。

 

後半はアンケートなどの実態調査が多いですね。県などからも要請があって進めています。このあたりから、イベントのお手伝いだったり、職人育成のお手伝いも増やしていきました。また、買い物支援や、避難所の皆さんが談話できるような集会所の運営なども行っています。

 

2011年に雇用した方々の約66%が再就職困難な41歳以上の方々です。その方たちの比率がとても多かったというのが、とても良い結果だったのではと思っています。やはり、年齢の高い方が自分たちの生きがいを閉ざさないために仕事をしているのではないかと。たとえば、80歳のお婆さんが孫のために小学校のプールを掃除したという話もあります。

 

昨年に入ると避難所がほとんどなくなったので、仕事の内容が変わっていきます。とくに3月以降は学校に対する給食の線量測定だとか、まちの管理だとか、前年よりも治安管理や食などの「安心」「安全」に関わる仕事にシフトしているように感じています。

 

今後の課題としては高齢者に対しての雇用維持ですね。それから、若い人に対しては、いかに就業意欲を向上させて、民間の企業に輩出していくかということも考えなければいけません。やはり若い人が県内の事業所で働いて、県内の事業所が活性化し、県内でお金が循環することが起きないかぎり、復興には繋がらないと思っています。

 

また、先ほど申しましたように、「福島絆づくり応援事業」は市町村の仕事を請け負って働いていますので、その方たちが民間企業に就職してもらうような流れもつくる必要があります。

 

また、緊急雇用ではなく、正社員雇用を生み出していけるかも課題になってきます。しかし、そこにもネックがありまして、正社員になるというのは、その土地で根づくということも意味しているんですね。帰れるのか、帰れないのか、国の避難政策がまだ曖昧なままですから、正社員の選択をしづらい状況があると思います。

 

以上が短期的な就労支援の話でしたが、われわれは長期的な施策として「成長産業等人材バンク事業」にも取り組んでいます。

 

民間の事業所にわれわれが雇用した人材を実習生として派遣し、6か月間の教育訓練の後に直接雇用してもらおうというものです。地元企業に就職を斡旋し、そのために必要な費用は県が負担しています。派遣会社からすると人を継続雇用できないので本来の事業からは外れてしまうのですが、就労支援のためには必要な仕事だと考え、取り組んでいます。現在、実習生は330名程います。企業も大手だけではなく、美容室や農業法人、デザイナーなど、いろいろな業種で雇用を生み出しています。

 

最後になりますが、去年2000名雇用したといっても、やはり短期的な雇用なんです。この事業の成功が復興に繋がるかというと、決してイコールではないと思います。やはり長期的に根づいて仕事をしながら、経済活動をしていくことが、最終的な復興に繋がるかと思いますので、これからも就労支援を続けていきたいと思います。

 

永松 ありがとうございました。被災者の方々の雇用を創出する上で、人材ビジネスの方々が今回大活躍しているということがよく分かりました。短期の雇用ではなく、長期の正社員としての雇用が必要ということはよく聞かれる話ではありますが、福島のように長期的な復興の道筋が描けないなかでは、被災者自身も長期の雇用を選択しづらいという状況があるということもなるほどと思いました。

 

本日のセッションでは「製業生活再建」ということで、非常に特徴的な活動をされている6つの団体についてご紹介しました。それぞれの、キャッシュ・フォー・ワークのかたちと、これからの課題についても共有することができたと思います。今後、ますます被災地内の経済復興が重要なキーワードになってきます。これからのみなさんの活動に期待しつつ、本分科会を終了したいと思います。ありがとうございました。

 

(2012年10月7日 日本災害復興文科会「製業生活再建」より)

 

 

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