ただの復興支援に留まらない物語のあるプロダクトを目指して

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経営面での成功の秘訣

 

―― 震災復興事業は収益面で成立させるのがなかなか難しいと思うのですが、つむぎやのプロジェクトはいかがでしょうか。

 

現在のところ、「マーマメイド」と「OCICA」の両プロジェクトともに順調に動いています。

 

マーマメイドでは、ミサンガを1,000円という価格設定で販売してきました。今は生産ペースはかなり落ちていますが。売上の半分はお母さんたちの収入に、もう半分は「ぼっぽら食堂」の運営資金に当てています。ぼっぽら食堂のオープン当初は経費が大きかったのですが、満足度を落とさずにコストを下げる方法をいろいろと試行錯誤した結果、2012年10月にはひとつの目標である金額を給料として取ってもらえるところまできました。

 

一方、OCICAはネックレスを2,800円、ピアスを5,800円という価格に設定しています。それぞれ、1,000円、2,200円が地元に渡るようになっており、それ以外は小売手数料やデザイン料、材料費やつむぎやの運営資金になります。お母さんによってつくる数が違うのでバラバラですが、平均すると月3~5万円くらいの収入を生み出しています。

 

ぼくたちはお母さんたちに均等にお給料を渡すのではなく、一つひとつの商品に屋号をつけて誰がつくったものかを管理し、それが売れた分の報酬をお渡しするというシステムにしています。お母さんたちがつくったものを代理で預かって、それを委託で販売しているという関係です。商品を一度すべて買い上げてから販売するという一般的な方法では、資金力がないとスタートできませんが、この方法であればその必要はありません。

 

また、結果的に、つくった人の個性が可視化されることで、買う人によっては魅力に感じてもらえますし、自分の屋号が押されて誰かの手に渡るということでモチベーションも上がります。現場に遊びに来てくれたお客さんが「わたし、○○さんの買いました!」って言ってくれると、やっぱり作った人は嬉しいですよね。

 

 

信頼できるところで販売する

 

―― つむぎやのプロダクトの販売店は非常にお洒落なところが多いという印象を受けるのですが、販売戦略があったりするのでしょうか。

 

OCICAの場合、もちろんプロダクト自体にも魅力があると思っているけれど、そこに至るまでにある物語をどれくらいお客さんと共有できるかが大事だと思っています。そうすると、規模は小さくても、オーナーさんがいるお店というのが親和性が高い。オーナーさんが一人ひとりのお客様にしっかりと物語を伝えて届けてくれるからです。

 

OCICAはこれまで、こちらから営業したことってほとんどないんです。制作現場に遊びに来てくれた人や買ってくれた人などが、行きつけのお店の方を勝手に説得してくれたりして、徐々に販売店舗が増えてきました。その結果、ぼくたちが信頼できて、物語を共有してくれるお店が多いという状況になっています。

 

最近はベネッセのスマイルバスケット(http://shop.benesse.ne.jp/mall/smilebasket/)とコラボレーションして、新色のOCICAネックレスを販売し始めました。大企業の方ですが、すぐに現場に訪ねてきてくれて、ただ売る以上の関係をつくろうとしてくださる。そういう方と一緒に仕事ができると嬉しいですね。

 

 

この一年で蓄積された知見をどう活かすか

 

―― 最後に今後の展望をお聞かせください。

 

具体的なことはあまり考えていません。ざっくり言うと、「やるべきことで、やれることで、やりたいと思うことをやっていく」ということに尽きますね。この一年でふたつのプロジェクトを継続的な見通しが立つところまで持ってくることができた。体当たり的な挑戦でしたが、これらの経験のなかでさまざまなノウハウや知見が溜まってきていると感じています。

 

東北の課題は、創業する人をいかに増やせるかだという声をよく耳にしますが、やりようによってはまだまだ可能性が眠っていると思うんです。このふたつの事業にしても、地域に眠っている資源を活用しているため、仕入れコストを低く抑えることができる。ここをうまく抑えられれば、先ほど話したような人件費の扱い次第で、赤字にならないビジネスがつくれるはず。

 

規模の大きいビジネスは難しくても、地域の人たちが主体的につくりあげて継続的に育てていくスモールビジネスの可能性はまだまだあると思うので、ご縁のあった方々と一緒に何かできないかと考えているところです。もちろん、やる気のある人がいて、ぼくらの条件が整えばの話ですけど(笑)。

 

また、ぼくはいわゆる“被災地復興”がやりたいと思ってやってきたわけではありません。やるべきこと、やれること、やりたいことの優先順位が高いことをやっていたいという思いで活動しているので、他の地域でもそういったことに出会えれば関わっていきたいと思っています。

 

すでに動いているプロジェクトでは、高知県室戸市では、市場価値がとても低い小さいカツオが大量に揚がるんですが、それを商品化できないかということで、さまざまな方の力を借りて「コンフィ」というかたちで商品化しました。漁師さんたちが水揚げしたものを、地元のお母さんたちが一匹ずつ手でさばいて、調理して、商品をつくっています。相談を受けたところから、一年経ってようやくプロジェクトが動き出したので、これから少しずつ体制を整えて展開していきたいと思っています。

 

(2012年12月3日 東向島珈琲店にて)

 

 

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