福島レポート

2018.05.20

全国新酒鑑評会で福島県が6年連続日本一――日本酒購入額もトップ

遠藤乃亜 / ライター

福島の暮らし

2018年の「全国新酒鑑評会」で、福島県の金賞受賞数が19銘柄に上り、兵庫県と並んで日本一に輝きました。日本一となるのは6年連続で、広島県が1987年に打ち立てた記録を31年ぶりに更新しました。

この鑑評会は1911年(明治44年)に始まり、これまでに106回開かれています。審査項目は主に香りや味で、蔵元の技術レベルを測ることができます。出品は一つの蔵元につき一つの銘柄に限られ、各蔵元の渾身の1本。都道府県の酒造りの総合力の目安と言ってよいでしょう。今年は、全国から850銘柄が出品され、そのうち27%に当たる232銘柄が金賞に輝きました。

福島県は、海沿いを「浜通り」、東北新幹線が通る福島、郡山市を含む地域を「中通り」、新潟県と接する西側を「会津」の3地域に分けています。それら地域別でみると、11銘柄が会津、7銘柄が中通り、1銘柄が浜通りでした。会津の酒造りの底力がうかがえます。

日本一に輝き続ける理由のひとつは、蔵元同士の切磋琢磨と言われます。福島県では、1993年に職業訓練校「福島県清酒アカデミー職業能力開発校」が開設されました。県の酒造組合が運営し、現在、多くの卒業生が酒造りの最前線で活躍しています。

アカデミー設立から13年後の2006年、89回目の全国新酒鑑評会で、福島は初めて日本一に輝きました。前例に頼ることなく、スーパースターが偶然生まれたわけでもありません。ただただ互いに競い高めあい、一人一人が高い成果を残す――。福島の日本酒が全国一を獲得した背景に学ぶものは少なくありません。

福島の蔵元が高い技術を誇ることは間違いありませんが、福島の人々と日本酒を巡るもうひとつの興味深いデータがあります。

総務省が実施した家計調査によると、福島市の世帯(2人以上)が清酒を購入した金額は1年間で1万500円と、調査対象の52都市でトップでした。全都市の平均は5815円ですから、福島では2倍ほど多く清酒を買っていることになります。

酒類全体の購入額でみると、福島市の4万7927円は全国8番目。日本酒の割合が高いです。(実際、福島市では、焼酎、ビール、ウイスキー、ワインなどの日本酒以外で、ベスト10に入っているものは一つもありません)。「よい客が良い造り手を育てる」と言われますが、福島の蔵元の快挙は、お酒を楽しむ福島の人たちに支えられてきたのでしょう。

ところで、そもそも出品をしていなかったり、惜しくも金賞を逃したりなどの銘柄にも、都内でも人気の高い曙酒造(「天明」「スノードロップ」など)や、幻の酒と慶ばれる「飛露喜」で有名な「廣木酒造」などがあります。

6年連続日本一の節目に福島県庁が作成した資料には、県内の全蔵元リストがありました。そのうち、かつて浪江町と双葉町で酒造りをしていた4つの蔵元は「避難中」とされています。山形県で酒造りを再開し、「ゴールデンスランバー」など次々とチャレンジングな美味しい酒を醸す「鈴木酒造」のほか、海外で再開に挑戦する蔵元もあります。しかしその苦難に思いをはせれば、東京電力福島第一原発事故の爪痕の大きさを感じます。

最後に、福島のお酒に関する三つの場所・サイトを紹介します。東京にある福島情報発信拠点「日本橋ふくしま館」では、日本酒を始めとした福島県産品がずらりとそろっています。「福の酒」では、東京都内で福島のお酒が飲めるお店を検索できます。JR福島駅西口近くにあるビル「コラッセふくしま」1階の「福島県観光物産館」には、福島県産品が勢ぞろいしています。ラウンジコーナーでは福島のお酒の飲み比べができます。

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