福島レポート

2019.10.04

福島第一原発の「処理水」の長期保管は可能か?

基礎知識

東京電力福島第一原子力発電所で発生する「汚染水」を浄化した後の、技術的に除去の難しいトリチウムを含む「処理水」の処分について、長期保管を求める声があります。これは、実現可能なのでしょうか?

処理水に関しては、専門家で構成する「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」が、処分について議論しています。2018年8月30、31日に福島県富岡町と郡山市、東京都内で計3回開かれた説明・公聴会で、長期保管を求める意見があったため、2019年8月9日、9月27日の会合で、長期保管についての議論をしました。

東京電力によると、2019年9月19日時点の処理水の保管総量は約116万トンで、約1000基のタンクで保管しています。現在、1日あたり約170トンの汚染水が新たに発生しており、汚染水浄化後の処理水も日々増加しています。東京電力の計画によれば、タンク増設により2020年12月末までに約137万トンを保管できるとされています。

東京電力は小委員会で処理水の量の今後の見通しも示しました。処理水の増加量は、現在の約170トンから約150トンに減るものの、増加を止めることができないため、2022年夏頃には満杯になってしまう見通しです。

では、タンクが満杯になるのを防ぐため、計画を上回るタンク増設は可能なのでしょうか。

福島第一原発の敷地内には、利用可能なスペースがあります。ところが、今後の廃炉作業で必要となる施設をつくらなければなりません。東京電力が今後建設の必要な施設をリストアップしたところ、使用済み核燃料や燃料デブリの一時保管施設など計12種類に及びました。利用可能なスペースはこれらの施設建設で使うため、タンク増設に使える場所は多くありません。その結果、計画を大幅に超えるタンク増設は厳しいと見られています。

敷地内での、計画を超えるタンク増設が難しいのであれば、敷地外にタンクを設置することはできるのでしょうか。

敷地外にタンクを設置する場合、自治体や地権者の了解が必要となります。福島第一原発の周りで整備が進む中間貯蔵施設の敷地を活用する案もありました。しかし、中間貯蔵施設は、「除染土の一時保管のため」として、地権者の理解を得て進めてきた経緯があり、環境省は否定的な見解を示しています。

では、敷地外に処理水を移送するのはどうでしょうか。

移送する場合、途中の事故のリスクを考慮しなければなりません。もし移送リスクを下げるために水を薄めるとすれば、大量の水の輸送が必要になります。陸上で大量の水をすべて安全に運ぶことも難しいと考えられています。

このように、処理水の長期保管は簡単ではありません。経済産業省の設けた小委員会は、今後も長期保管について議論する方針ですが、委員からは「永久保管は不可能」という声も出ており、具体的な処分方法の検討が必要になる見通しです。

出典:東京電力ホールディングス株式会社

参考

「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第13回)」

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/013_haifu.html

「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第14回)」

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/014_haifu.html