福島レポート

2020.01.21

福島第一原発の汚染水の増加は抑えられているのか?

基礎知識

東京電力福島第一原子力発電所では、放射性物質を高濃度に含む汚染水が日々発生しています。2014年5月には、1日540トンの汚染水が発生していました。汚染水が増える大きな原因は、原子炉建屋などへの地下水流入です。地下水の流入を防ぐために、陸側遮水壁(凍土壁)をつくるなどの対策をとり、2018年度には、汚染水の発生は1日170トンにまで減少しています。

汚染水は、次のように発生します。福島第一原発1~3号機の原子炉内には、事故により溶けて固まった燃料(燃料デブリ)が残っています。燃料デブリに冷却水をかけて冷やすことで、燃料デブリは安定した状態を保っています。ただ、冷却水は燃料デブリに触れると、放射性物質を含んでしまいます。こうして発生した汚染水が、1~4号機の建屋の地下などにたまっています。

デブリの冷却によって発生した汚染水は、地下水や雨水の流入によって増加します。1~4号機周辺の地中には地下水が流れ、その一部が地下にたまった汚染水に流入することで、汚染水が増えます。また、原発の敷地内に降った雨水が、建屋の壊れた部分から流入することでも汚染水は増えます。

東京電力はこれまで、汚染水が増えるのを抑えるために、地下水が汚染源に触れるのを防ぐ対策をとってきました。

・地下水バイパス:内陸側から海側へ流れる地下水を、原子炉建屋から離れたところでくみ上げて、海に放出するための井戸。

・サブドレン:内陸側から海側へ流れる地下水を、原子炉建屋の近くでくみ上げて、浄化処理し、海へ放出するための井戸。

・陸側遮水壁(凍土壁):地中に1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋を囲うように地盤を凍らせて、内陸側から海側へ流れる地下水を遮断する。

・敷地舗装(フェーシング):地表面から地下に染みこむ水を抑制するために、敷地の地表面を舗装する。

(経済産業省「廃炉の大切な話2019」より」)

政府は2011年12月以降、福島第一原発廃炉に関して「福島第一原子力発電所の廃炉に向けた中長期ロードマップ」を策定しています。このロードマップではこれまで、汚染水の発生量に関して、「2020年内に1日当たり150トン程度に抑制する」としていました。2019年12月27日に行われた5回目の改訂では、新たな目標を掲げ、「2025年内には1日当たり100トン以下に抑制する」としました。

福島第一原発では、多核種除去設備(ALPS)などを使って、汚染水に含まれている放射性物質を取り除いています。ただ、放射性物質トリチウムの除去は技術的に困難なため、汚染水の発生抑制は今後も重要な課題となります。

参考サイト

処理水ポータルサイト(東京電力)

http://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/

汚染水対策の状況(東京電力)

http://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watermanagement/

廃炉・汚染水ポータルサイト(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/

廃炉の大切な話2019(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/images/reactorpamph2019.pdf

福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議(第4回))
https://www.kantei.go.jp/…/hairo_osensui/dai4/index.html