トリチウムを含む水の規制値は?

放射線から人や環境を護るため、国際機関や各国は放射性物質や放射線被ばく線量を規制しています。放射性物質の「トリチウム」(https://synodos.jp/fukushima_report/21554)も、飲料水や排水中の濃度が規制されています。

 

トリチウム濃度の規制値の根拠は、公衆の年間被ばく線量を1ミリシーベルトとするICRP(国際放射線防護委員会)の勧告です。ただし、機関や国ごとに、具体的なトリチウム濃度の規制値を決める際の考え方が異なるため、実際の規制値も異なります。

 

 

飲料水の規制値

 

オーストラリアは、トリチウムの飲料水中の濃度を7万6,103ベクレル/リットルとしています。これは、国際機関や各国が設ける規制値のうち、もっとも高いものです。「この水を1年間毎日2リットル飲んだ場合の被ばく線量を1ミリシーベルトとする」という想定に基づいて単純計算した値です。

 

WHO(世界保健機関)は、トリチウムの飲料水中の濃度を1万ベクレル/リットルとしています。この水を1年間毎日2リットル飲んだ場合の被ばく線量は0.13ミリシーベルトで、1ミリシーベルトを大きく下回っています。飲料水がトリチウム以外の放射性物質を含むことを想定したり、大人と子どもでの放射線に対する感受性が違うことを考慮したりした結果の値です。

 

日本では、飲料水に関するトリチウムの濃度の規制値は設定されていません。その代わり、日本は排水中のトリチウムの濃度を設定しています。

 

 

排水の規制値

 

日本は、トリチウムの排水中の濃度を6万ベクレル/リットルとしています。トリチウムを環境中に排水すると、ほかの水と混ざって濃度が薄まります。規制値は、「排水直後(環境中で薄まる前)の濃度」として定められています。

 

日本では、トリチウムの排水中の濃度を、「この水を0~70歳までの70年間毎日2リットル飲み続けた場合の被ばく線量を平均1ミリシーベルト/年とする」と想定して計算しています。この想定で計算することそのものは、オーストラリアの飲料水(7万6,103ベクレル/リットル)と同じですが、70年間の期間で考えるために結果の値は異なります。

 

アメリカのトリチウムの濃度規制値は、飲料水中と排水中とで比較すると、飲料水は排水の50倍厳しく設定されています。飲料水は「人が飲む」ことを前提とし、排水は「その水をそのまま人が飲む」という前提ではないためであると考えられます。

 

2011年3月に事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所では、「地下水バイパス」や「サブドレン」などにより地下水を海に排水しています。東京電力は、この排水中のトリチウムの濃度の運用目標を、1,500ベクレル/リットルと定め、必ずこれを下回るように管理しています。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

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