セウォル号沈没をめぐる「不都合」――独立メディア記者が問う報道と倫理

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——釜山国際映画祭で、釜山市長から上映中止の声が上がるなど、大きな波紋を呼びましたが、その中でのやりとりについて、お聞かせください。

 

放送局や新聞など、巨大メディアは、真実を追究しようとする報道から目を逸らしていました。放送局は今回の映画のような報道を拒んでいたのです。だから映画を作りました。映画は、真実について発言するための最後の砦だったのかもしれません。

 

世界の映画関係者が集う釜山国際映画祭は『ダイビング・ベル』を上映するには最適な空間でした。しかし、釜山国際映画祭の組織委員長(釜山市長が兼任)は『ダイビング・ベル』が公正さに欠けているとし、上映の中止を要請しました。しかし、釜山国際映画祭側(実行委員会)はすでに招聘が決まった作品の上映取り消しはありえず上映するとの意思を明らかにしました。

 

釜山国際映画祭が開催され、『ダイビング・ベル』は多くのメディアの関心を集め、上映されました。しかし、釜山国際映画祭が終わった後、釜山市は映画祭に対する特別会計監査を実施しました。その結果、映画祭に会計上の問題があるとし、イ・ヨングァン実行委員長を検察に告発しました。現在、イ・ヨングァン実行委員長は任期を終え、不当に解職された状態です。

 

釜山国際映画祭側は、招聘された映画の上映は、映画と芸術の表現の自由であることを宣言し、これに対する不当な政治的介入を排除するとして、釜山市と対立している状態です。世界の有名映画祭や映画関係者は釜山国際映画祭に対する釜山市の不当な介入について、非難の声を上げています。

 

 

釜山国際映画祭定期総会の様子_成河訓

釜山国際映画祭定期総会の様子(C)成河訓

 

映画は共感を築く強力な武器

 

——映画の可能性について、どのような思いがありますか?

 

映画はとても興味深い媒体です。私は主にドキュメンタリーを制作していますが、映画館で上映する時が、もっとも刺激的でしょう。一人でモニターを通じて映像を観るのではなく、映画館という客席で他の人たちと一緒に観る。一緒に感じて、気持ちを行き交わせます。私は、映画館は広場だと思います。個人の閉じた空間ではなく、さまざまな人々とともにする開かれた空間。われわれは広場で呼吸しなければいけません。

 

 

——最後に、今回の映画上映に際して、日本の人たちへのメッセージをお願いします。 

 

私は政治家や官僚が、われわれの安全を守ってくれるという信頼を捨てました。セウォル号事件に対する関係者の態度を見るとすぐわかります。セウォル号事件で責任を取った政府関係者はいませんでした。

 

日本でも福島の原発事故に対して責任を取った官僚や政治家はいませんでした。被害は誰が被っているのでしょうか。国民です。政治家は資本家を擁護し、官僚は自らのポストを守ることしか考えていません。国民は彼らの眼中にはありません。日本の方も福島の原発事故を経たことで感じていらっしゃると思います。

 

事なかれ主義で責任を回避し続ける政治家や官僚に、国民のための政治や行政サービスを優先するよう、国民が明確に意思表示する必要があります。責任を取る社会にしなければいけません。

 

セウォル号惨事は、国家が国民の安全を守ってくれるという信頼を崩壊させました。東日本大震災や福島の原発事故によって韓国人よりも先に同じ経験を日本の方はしたと思います。国民の安全を守らなければいけない原則をないがしろにした国家が国民の信頼を得ることができるでしょうか?

 

「国家が国民のために何をしなければならないのか」を、韓国と日本の国民は歴史の経験を通じて共通点を発見し、互いに学んで、連帯のためのきっかけを見つけなければならないのです。国家や権力が自らの責任を放棄しているとき、両国の市民はこれに立ち返る必要があります。映画は共感を築く強力な武器なのです。

 

映画が投げかけた簡単な問いに対しても、権力は口をつぐんでいます。この過程を、映画を通じて日本の観客に理解していただければ幸いです。

 

この映画は韓国社会の恥部をさらけ出すモノローグです。この映画が、今の日本はどうなのだろうと問いかけるきっかけになればうれしく思います。

 

 

安海龍2

安海龍監督

 

 

『ダイビング・ベル』日本特別上映会

 

◆上映日時・会場

■福岡

日  時:2016年4月24日(日)13:00〜/16:00〜

会  場:アンスティチュ・フランセ九州5Fホール(福岡市中央区大名2-12-6)

アクセス:福岡市営地下鉄赤坂駅3番出口すぐ

定  員:各回50名

問 合 せ:福岡アジア映画祭実行委員会

      TEL 092-733-0949、090-9579-8051

e-mail faff@gol.com

http://www2.gol.com/users/faff

 

■大阪

日  時:2016年4月25日(月)19:00〜

会  場:ビジュアルアーツ専門学校・大阪 VD-1校舎3階「アーツホール」

     (大阪市北区曽根崎新地2-5-23)

アクセス:JR大阪駅から徒歩10分、京阪渡辺橋駅から徒歩約7分

定  員:100名

問 合 せ:アジアプレス大阪事務所

    TEL 06-6373-2444

 

■東京

日  時:2016年4月27日(水)19:00〜21:00

     ★岩上安身氏(IWJ代表)と安海龍監督によるアフタートークあり

会  場:なかのZERO小ホール

アクセス:JR/東西線中野駅南口徒歩8分

定  員:500名

問 合 せ:Artist Action 

     E-mail artistaction1229@gmail.com

◆チケット

3会場とも、前売券1500円、当日券1800円

※前売券は、チケットぴあにて発売中

(Pコード:福岡466−670、大阪466−671、東京466−672)

 

◆information

題目 | ダイビング・ベル-The Truth Shall Not Sink With Sewol

ジャンル | ドキュメンタリー

監督 | イ・サンホ、アン・ヘリョン      

制作 | アジアプレス、シネポート

提供 | (株)ダイビング・ベル

配給 | (株)シネマダル

上映時間 | 77分

公開日 | 2014年10月23日(韓国)

観覧等級 |R15+                        

これまでの上映 | 2014年第19回釜山国際映画祭、2015年福岡アジア映画祭他

 

『ダイビング・ベル』日本特別上映に関する詳細情報はこちら

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