NATOとロシアの和解? 

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アフガン政策での協力

 

他方、アフガニスタンの安定化政策での協力は、MD協力の前提ともいえるNATOとロシアのあいだの信頼醸成に役立ちそうである。

 

サミットでは、米軍を中心とし、NATOの指揮下で展開している国際部隊を2014年末までに撤退させ、その治安権限をアフガン側に全面移譲することが決定された。そして、その目標に向けロシアも、NATOの物資・人員をアフガニスタン前線にロシア領経由で移送すること(撤収を見越して帰路のルートも保障)、ロシア製ヘリのアフガニスタンへの有償供給、アフガニスタン部隊の育成などへの協力を約束した。パキスタン経由の物資輸送が治安悪化により困難となっていたことから、ロシアの協力はNATOにとって渡りに船であった。

 

 

今後の展望 ―― 一筋縄にはいかない?

 

このように、さまざまな問題が残されているとはいえ、ロシアとNATOは協力関係構築の重要な一歩を踏み出した。

 

本稿では触れなかったが、NATOは今回のリスボンサミットで、1999年4月以来、約11年ぶりに「新戦略概念」を採択した。新たな脅威としてテロやミサイル攻撃を規定したほか、欧州全域を網羅するMD構築や、非加盟国・国際機関とも緊密に協力する「協調的安全保障」の推進などを明記した点が特徴である。

 

冷戦終結によって存在意義が揺らいでいたNATOは、「新戦略概念」によって存在意義を確立したいところだ。しかし、「新戦略概念」の成功にはロシアの協力が不可欠だということは、規定からも自明である。しかし、ロシアの確たる協力を得ることは容易ではなさそうだ。

 

ロシア、NATOの相互の不信感はまだ根深い。そのようななかで、ロシアがNATOに対して同等の権利を要求したことからも明らかなように、ロシアは欧州諸国に対してエネルギーというカードのみならず、MDやアフガン対策での協力という新たなカードを握ったといえ、ロシアのNATOに対する外交的立場は強化されたかに思われる。

 

そうだとすると、欧米諸国にとっては、対ロシア政策での慎重な対応を余儀なくされることだろう。他方で、ロシアが欧米との協力を必要としているのも事実である。今回の協力についての合意がスムーズに履行できるかが、今後の真の協力の試金石になるといえるが、これからも相互の駆け引きはつづくものと思われ、両者の信頼構築は一筋縄にはいかなさそうである。

 

 

推薦図書

 

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最近のNATO・ロシアの関係について論じている包括的な本はなく、論文や報道などを頼りにしていくしかないが、このような問題を正しく捉える前提として、NATOの成立とは切り離せない「冷戦」をきちんと理解しておく必要がある。その際にお勧めなのが本書である。本書は冷戦の流れをとても分かりやすく論じているだけでなく、冷戦後の状況や日本の立場などについても記しており、現在を分析し、今後の展望を考えるための視座を与えてくれる。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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