中ロ間の蜜月関係と両国間石油パイプラインの本格始動  

近年の中ロ関係の発展

 

近年、中ロ関係が着々と深化している。ソ連時代は、1950年代後半に、ソ連共産党第一書記だったフルシチョフによってスターリン批判がなされて以降、ソ連と中国の関係は悪化、中ソ対立により政治路線や国境問題での対立が先鋭化し、武力衝突すら生じた。しかし、ソ連が解体すると、中ロ両国は関係改善に相互の利を見出すようになった。

 

1996年4月には、中国、ロシア、中央アジア3カ国(カザフスタン、タジキスタン、キルギス)が安全保障、経済、文化など各方面での協力を推進するために「上海ファイブ」を結成し、2001年にはウズベキスタンも加え、上海協力機構(SCO)として拡大・改組し、関係を深化させている。

 

また、2004年10月14日には、最終的な中ロ国境協定が妥結し、ここから中ロ関係が一気に深まっていく。両国はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国という経済成長が著しい四か国を示す)の筆頭として、世界経済に大きな影響を与える存在となっており、米ドルを基軸通貨とする米国の一極的経済体制に強く反発している。両国は自国のルーブル(ロシア)や元(中国)が世界の基軸通貨のひとつになることを望み、少なくとも中ロ間では自国通貨での決済を行うようになってきている。

 

また、米国の政治的一極支配にも反対し、対旧ユーゴスラヴィア政策などにみられるように、政治的な側面でも中ロが共同歩調を取るなど、近年、中ロの協力分野は政治、経済やエネルギー、安全保障などなどと多面的になってきている。そして、ロシアはアジアでの経済発展のパートナーに、日本ではなく中国を選んだといわれている。

 

とはいえ、ロシアは中国の世界進出には警戒感を隠していない。とくにロシアが自国の勢力圏と考える旧ソ連諸国、つまり、ロシアが「近い外国」と呼ぶ地域への中国の進出はロシアにとって大きな脅威となっている。なかでも、中国の最近の中央アジアへの進出は目覚ましく、中央アジア諸国から中国にパイプラインが引かれ、2009年末からは中国が中央アジア諸国から直接エネルギーを買うことができるようになったことも、これまで中央アジアの資源を独占的に安く買いたたき、欧州に売っていたロシアにとってはきわめて不愉快な展開なのである。

 

 

2010年、戦略的関係を強化

 

しかし、そのようなロシアの微妙な感情を差し引いてもなお、中ロ関係の最近の深化は顕著であり、とくに2010年には両国の戦略的関係がさらに強化された。

 

まず2010年9月28日の拙稿(https://synodos.jp/international/1585)で述べたように、ロシアのメドヴェージェフ大統領は、9月26日から3日間、訪中し、1904~05年の激戦地だった大連・旅順口を訪問。日ロ戦争および第二次世界大戦におけるソ連軍・ロシア人の犠牲者追悼行事に参加し、北京で首脳会談を行なって、第二次世界大戦での対日戦勝65周年に関する共同声明を出した。

 

その共同声明は、中ロ(当時は中ソ)両国は、軍国主義の日本とファシズム政権のドイツに対して共闘した同盟国であり、日本に対する勝利を共に祝うという趣旨となるが、中ロ両国が第二次世界大戦の結果を同様に受け止め、その見直しはあり得ない、つまり両国の歴史観が不変であるということを盛り込み、両国がいうところの歴史の真実を共に守っていくことが重視されている。そして、その後に、メドヴェージェフ大統領は北方領土の国後島を訪問し、日本の大きな反発を買うことになるのである。

 

日本が領土問題で中ロ両国との関係を緊張させた一方、中ロ関係の進展は、中国人の意識にも明確に刻まれたようだ。たとえば、中国紙「光明日報」は、中国の主要な政治家を対象にした調査の結果をもとに「今年の人」を選んでいるが、その上位10人にメドヴェージェフ大統領が選出されている。同紙は、メドヴェージェフ大統領の北方領土訪問にも言及しており、「大統領は、南クリル(北方領土のこと)はロシアの重要な地域だと述べ、この問題におけるロシアの強硬な立場を主張した」と記している。

 

また、2010年12月31日に、中国の胡錦濤国家主席は、メドヴェージェフ大統領に新年の祝電を送った。胡主席は、2010年の中ロ関係の発展に鑑み、両国が全理入稿協力条約を締結してから10年を迎えることを指摘し、「2011年、中国はロシアとの関係をより素晴らしいものにするため、あらゆる分野において全面的な協力を発展させ、戦略的パートナー関係と相互信頼を深化させていく」と述べる一方、2011年が両国にとって意義ある年となることを強調した。そして、この10年間で、両国の政治分野の信頼関係は次第に深まり、戦略的パートナー関係もより成熟したものとなり、あらゆる分野での協力の質とレベルも高まって、友好関係も強化されたことにより、両国関係は史上最高レベルに達したとも言及した。

 

2010年に中ロ関係が深化したという見解はロシア側も共有しているといえる。たとえば、ロシア科学アカデミー極東研究所のセルゲイ・ルジャニン副所長は、2010年の中ロ関係は、(1)戦略的パートナーシップの精神にもとづき、それぞれの国益と国際政治における課題の共通性を明確にしながら、アジアの安全保障を共同で推進したこと、(2)原子力、電気エネルギー、液化天然ガス供給、ガスパイプラインの敷設、エネルギー関係のハイテク分野の協力という各分野での進展、エネルギー設備の共同開発についての重要な契約やシベリア、極東における天然資源開発に対する中国からの大型投資についての契約などエネルギー分野の協力深化、(3)中国におけるロシアの中小企業ブームに象徴されるような両国間の投資関係の強化、という3つのポイントを中心に進展したと分析し、両国関係のさらなる関係発展の潜在的な可能性を強調する。

 

 

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