せめぎ合いのなか友好的敵対に軟着陸したシリア和平会議

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誰のための和平会議だったのか

 

1月22日にモントルーで始まったジュネーブ2会議は、初日の全体会合にシリア政府、シリア国民連合のほか、米英仏露中、サウジアラビア、カタール、トルコ、イラク、レバノン、ヨルダン、アラブ連盟、国連など合わせて45の国と機関の代表が出席し基調演説を行った後、2日目以降、ジュネーブの国連本部に会場を移し、ブラーヒーミー合同特別代表主催のもと、シリア政府とシリア国民連合の代表団が直接・間接の交渉を繰り返した。しかし、交渉は、双方が持論をぶつけ合うだけで平行線をたどった。

 

軍事、外交の両面で優位を回復したアサド政権は、紛争の政治解決を実現するためには「テロとの戦い」が必要だと主張し、「シリアの友」による「テロ支援」とサラフィー・ジハード主義武装集団の暴力を批判、ロシア、中国、イラク、レバノン、IPSA諸国がこれに同調した。一方、シリア国民連合は、移行期統治機関の設置を最優先議題として位置づけるとともに、アサド大統領と政権幹部の退陣がその前提条件となると訴え、「シリアの友」がこれを後援した。

 

両者の歩み寄りが見られないなか、ブラーヒーミー共同特別代表は、シリア軍が包囲を続けるヒムス市旧市街への人道支援物資配給を目的とした部分停戦や、逮捕者・捕虜釈放を実現すべく調整を続けた。しかし、シリア国民連合の代表団が「武装集団に対して何らの権威も有さず、連絡経路があるだけ」と吐露した通り、彼らは実務的な交渉において政府代表団とわたり合えるだけの実行力を持ち合わせていなかった。言い換えると、ジュネーブ2会議が成果をあげるには、アサド政権に譲歩を強いるような圧力、ないしは「英断」を促すための「見返り」が不可欠で、それを提示できるのは会議への出席をシリア国民連合に強要した「シリアの友」だけだった。

 

ジュネーブ2会議は1月31日に一旦閉会となり、シリア政府とシリア国民連合の双方を歩み寄らせるべく、米露が中心となって水面下での折衝が続けられているとされるが、同会議が「内戦」や「真の戦争状態」の抜本的な解決策を導出しないままに失速するであろうことは、誰の目からも明らかである。

 

そして、紛争当事者が明確なコンセンサスに至らないままでの交渉の継続は、現下の紛争におけるアサド政権の優位を既成事実化するとともに、シリア国民連合をはじめとする反体制政治組織や武装集団の無力を露呈させることになっている。つまり、ジュネーブ2会議は、アサド政権主導のもとでの「内戦」の軍事的解決に向けた動きを加速させる一方で、国際紛争のレベルにおいては、政権打倒をめざしてきた「シリアの友」の影響力低下という結果をもたらしたと言える。

 

しかし、「シリアの友」、なかでも欧米諸国が外交的な敗北を被ったかのようにも見えるこの結果は、これらの国々の政府にとっては歓迎に値するものかもしれない。なぜなら、欧米諸国は、非妥協的なかたちで政権打倒を追求するシリア国民連合や自由シリア軍参謀委員会への支持を継続することで、「人道」的観点からアサド政権をバッシングしてきた従来の姿勢を引き続き正当化できる一方、これらの反体制組織が無力であることで、政権による「テロとの戦い」を妨害せずに済むからである。

 

欧米諸国は、反体制勢力への支援が意味をなさないことによって、「自由」や「民主」といった理念に抵触することなく、ヌスラ戦線やダーイシュなど、シリアだけでなく、イラクやレバノンでも活発な動きを見せるようになっている「テロ組織」の封じ込めに寄与できるのである。

 

米国をはじめとする欧米諸国とシリアの関係は、「友好的敵対」、ないしは「敵対的友好」とでも呼ぶべき関係を特徴としてきた。これは、中東地域のさまざまな問題をめぐって表面上は対立しつつも、水面下では双方の国益を極大化するために協調し合うさまを指す。「友好的敵対」は、2005年2月のレバノンでのラフィーク・ハリーリー元首相暗殺事件や2006年7月のレバノン紛争(イスラエルとヒズブッラーが主導するレジスタンス勢力の戦闘)の発生以降、長らく低迷していた。だが、化学兵器問題を機にパラダイム転換が生じるなか、シリアをめぐる紛争は「友好的敵対」関係の復調という曖昧なかたちで最終決着しようとしているのかもしれない。

 

サムネイル「Geneva International Conference on Syria」UN Geneva

http://www.flickr.com/photos/unisgeneva/12121229343/

 

 

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