「魂のジェノサイド」――ウガンダ「反同性愛法案」とその起源

米国の「グローバル平等基金」が示す一つの道

 

「グローバル平等基金」のロゴマーク

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この問題に取り組む上で一つの示唆となりうるのが、米国オバマ政権の取り組みであろう。2011年のウガンダのゲイ活動家デイヴィッド・カトー氏の惨殺と、アフリカ南部マラウイ共和国での、刑法反ソドミー条項を用いた同性愛者の逮捕・刑事訴追という事態を踏まえて、米国は同年12月に「グローバル平等基金」(Global Equality Fund)を設立した。そしてアフリカを含む世界のLGBTの人権運動を支援するとともに、この基金や各国においた米国大使館をベースに、こうした人権運動と各国政府などの連携を促進する活動を行うこととなった。

 

この活動は、米国の国際的なエイズ対策枠組みである「大統領エイズ救済緊急計画」(PEPFAR)による、各国のゲイ・コミュニティでのエイズ対策支援と共に、アフリカにおけるLGBTの状況を具体的に改善するうえで一定の役割を果たしている。

 

対照的なのは英国である。マラウイ政府による同性愛者への迫害を前に、保守党のキャメロン首相は「同性愛者を迫害する国への財政支援を停止する」と脅迫した。マラウイ政府が同性愛者迫害に用いたのは、植民地時代に英国が持ち込んだ「反ソドミー条項」であったことも相まって、英国保守党政権の対応はアフリカの支配層を怒らせ、反ゲイ的傾向を加速させた。ナイジェリアでの「反同性婚法」制定の動きは、こうしたやり方への支配層の反発が背景にあるということもできる。

 

英国は、植民地時代に「反ソドミー条項」を旧英領諸国に持ち込み、同性愛嫌悪を世界化したことの責任を、「植民地責任」として認める必要がある。そのうえで、各国の「反ソドミー条項」の撤廃を呼びかけ、また、同性愛者の人権運動を支援するプロセスに乗り出すことが必要だ。

 

本論考では、ウガンダの「反同性愛法」の問題を手掛かりに、アフリカにおける同性愛者の迫害の問題が、アフリカと欧米の近現代の関係史に端を発する根の深い問題であることを見てきた。ウガンダの「反同性愛法」は、まさにウガンダの同性愛者たちを干上がらせ、その生存空間を実質的に奪い、暴力と迫害の標的に仕向けるものである。

 

<今・ここ>の暴力に対して、国際社会は明確な「ノー」を言う必要がある。その一方で、歴史的に構築されてきたこの問題に対して、中長期的に、その歴史的負債を解消していくプロセスも必要だ。国際社会には、アフリカにおける同性愛者の迫害の問題を単に「アフリカ」の責任に帰するのでなく、自らに内在する歴史的責任として向き合い、解決に向けて現地のLGBTの運動を積極的に支援していくことが求められている。

 

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.276 

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