教育は誰が統治しているんだろう?――教育を構造的に眺める

大人気コーナー「高校生のための教養入門」。今回お話を伺ったのは教育行政学者の村上祐介先生。あまり馴染みのない教育行政学について、基本的なお話を聞いてきました。教育行政学には「教育の行政学」と「教育行政の学」という考え方がある!? 教育委員会ってどうしてあるの? 教育行政学のマニアックな面白さとは? いままさに高校に通っている高校生に、ぜひお読みいただきたいインタビューです。(聞き手・構成/金子昂)

 

 

「教育行政の学」と「教育の行政学」

 

―― 最初に先生のご専門である教育行政学がどんな学問なのかをお教えください。

 

教育行政学でよく議論になるのが、「教育行政の学」なのか「教育の行政学」なのかなんですよね。これまでは「教育行政の学」として発展してきたのですが、最近は「教育の行政学」も必要なのではないかと考える研究者も出てきていて、ぼくもそのひとりです。

 

 

―― ふたつの違いをお聞きする前に、まずは「行政学」と「教育行政」について教えてください。

 

行政学は、簡単にいえば、公務員集団や官僚制をどうやって政治家や市民がコントロールするか、あるいはモチベーションを高めるかを考える学問です。教育行政学は、「公務員」「官僚」の部分が、教職員集団に置き換わっているものだと思ってください。

 

それから「教育行政」ですが、教科書を読むと、「教育に関する行政」と書いてあって、ほとんど説明になっていない……(笑)。でも実際、教育行政ってそうとしか言いようがないんですよね。教育制度とか法律、政策を扱うものが教育行政だと思ってください。

 

 

―― 「教育行政の学」と「教育の行政学」にはどんな違いがあるのでしょうか?

 

例えば、先生のお給料はいくらぐらいがいいか考えるときに、「先生は教育という重要な役割を果たしているので、一般公務員と給料は違う。もっと上げたほうがいい」と考えるのが、「教育行政の学」ですね。教育行政の学には、教育行政は、福祉行政や土木行政など、さまざまな行政分野の中でも、特殊性を帯びているという前提があるんです。

 

一方で「教育の行政学」は、教育行政を行政学の一分野としてみたときに教育にはどのような特徴があるかを考えるんですね。だから他の公務員と比較して、なにが同じでなにが違うのかを考えた上で、お給料を決めます。

 

やや乱暴な言い方をすると、教育は特殊であるという前提があるのが、「教育行政の学」であり、いままでの教育行政学のスタンス。いやいや、特殊であることを前提にしないほうがむしろ教育行政の特徴がみえることもあるんじゃないの? と考えるのが「教育の行政学」なんです。もちろん、どちらも教育行政学ではあるのですが。

 

 

教育の外側にいる人たちとの対話

 

―― 先生はどうして「教育の行政学」の方に関心をお持ちになったのでしょうか?

 

うーん、いろいろ理由はあるんですけど、ぼくは学部も大学院も教育学部なんですね。そのなかで「教育は特殊だ!」と言っていても、外部の人は納得してくれないだろうと疑問に思ったんです。なぜ教育が特殊なのかを証明しないと対話が噛み合わない。まずは外側の人たちにわかるような言葉で、教育の特殊性を語らないと意味がないと思って。

 

もともと教育学と政治学の中間みたいなことをやりたかったんですよ。それで大学に入ってから、教育行政学のコースに進学したんです。でも実際に勉強してみると、先ほどお話したような「行政学」とはまったく違う、ほとんど別の学問だったですね。しかもお互い対話もなければ、使っている言葉も通じていない。

 

閉鎖的なままでは駄目だよなあって思って。教育の中に閉じこもって、自分たちだけに通じる言葉で喋っていても意味ないですよね。そのときに、じゃあ政治学や行政学の言葉を使って研究すれば、教育の外側にいる人たちとも対話ができるようになると思ったんです。いまは20年前に比べればじょじょに行き来も増えてきて、対話も成立してきたと思います。

 

 

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なんで学校がこんなことになっちゃってるんだ?

 

―― やはり高校生のときから、教育や政治に興味があったのでしょうか?

 

そうですね、教育学と政治学、どっちを勉強するか悩みました。でも、教育の方が関心が強かったんだと思います。

 

 

―― きっかけはなんですか?

 

中学校や高校生のときの体験がきっかけだと思います。当時、ぼくの出身地は管理教育が強かったんですよね。教師の独善が前面にでていて、コントロールが利いていなかった。ようは学校で生徒を殴り飛ばしているような先生が普通にいたんですよ。

 

「なんでこんなことになっちゃってるんだろうなあ」と思ったのが最初です。それからいろいろと本を読んでみたら、ひたすら「自民党と文部省が悪い!」とか書いてあって(笑)。それって本当なのかな? って思っていたんです。

 

いま振り返ってみると「教育はいったい誰が統治しているんだろう?」という疑問を持っていたんだと思います。「誰が統治していて、なんでこんなことになっちゃったんだ」って。これはまさに政治学が考えることなんですね。ぼくの場合は、その中でも教育分野の関心が強かった。教師が統治しているのか、政治家なのか、それとも官僚なのか……それが教育行政学に関心をもった理由です。

 

 

 

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