2024.12.23
『財政・金融政策の転換点 日本経済の再生プラン』(飯田泰之)
コロナ禍を経て世の中の関心は「デフレ」から「物価高」へと移りました。そうした中にあっても経済の停滞は続いていますが、私たちの経済に大きな変化が生じつつあるのも確かでしょう。
ここでは、そのような経済の動きを読み解くうえで有益な視点を与えてくれる1冊をおすすめしたいと思います。
飯田泰之著『財政・金融政策の転換点 日本経済の再生プラン』(中公新書)
財政・金融政策のこれまでの経過を振り返りつつ、最近の経済政策をめぐるさまざまな論点について、見通しのよい解説と政策対応のあり方が提示されています。
本書の特徴や類書との違いを表すキーワードを選ぶとしたら、財政政策と金融政策の「一体化」と「高圧経済論」。
拙速な政策転換を避け、粘り強く需要刺激を続けることが、経済の構造調整を容易にし、供給力の強化にもつながるという「高圧経済論」は、各方面において注目されていますが(今年の5月に開催された日本銀行の「多角的レビュー」の会場でも話題になっていました)、本書ではそのポイントがわかりやすく解説されています。
現実の課題に即した経済政策論のテキストとして読むこともできます。ぜひ年末・年始の読書の候補の1冊に!
プロフィール
中里透
1965年生まれ。1988年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)設備投資研究所、東京大学経済学部助手を経て、現在、上智大学経済学部准教授、一橋大学国際・公共政策大学院客員准教授。専門はマクロ経済学・財政運営。最近は消費増税後の消費動向などについて分析を行っている。最近の論文に「デフレ脱却と財政健全化」(原田泰・齊藤誠編『徹底分析 アベノミクス』所収)、「出生率の決定要因 都道府県別データによる分析」(『日本経済研究』第75号、日本経済研究センター)など。