2017.05.02
若者の政治参加と社会運動――シノドス国際社会動向研究所シンポジウム01
2011年の東日本大震災以降、若者たちを中心として、路上での抗議行動が盛り上がった。脱原発運動や特定秘密保護法に対する反対運動、安保法制反対デモである。ところで、かつてゼロ年代にも、若者たちは反貧困運動や反グローバル運動に従事している。それでは、ゼロ年代の若者たちと、震災後の若者たちのあいだには、一体どのような違いがあるのか?
ゼロ年代に見られた運動の担い手には、問題の当事者性をめぐってふたつの類型がみられた。ひとつは、問題の当事者でないにもかかわらず、途上国や貧困層のボランティアや支援にあたる人びと。もうひとつは、自らが「貧困」「不幸」であるという強いフレームを掲げて、当事者としての立場から貧困運動に携わる人びとであった。
ゼロ年代の運動参加者たちと、2011年以降の運動に参加する人びとは、同じく社会運動を担う「若者」であるが、社会問題への関わり方が大きく異なっている。
かつての反貧困運動の中では、運動に従事した者たちは、格差・貧困問題に即して「若者」というアイデンティティを構成した。しかし、安全保障・特定秘密法案というテーマに即すとき、それとは別の構成の仕方が必要になる。そこでサブカルチャーを共有していること、デモに用いられる「パロディ」や「ネタ」を共有していることが、「若者の運動」であるとアイデンティファイするひとつの要素になった。
さらに重要な点として、自分を社会の中でいかに位置づけるかという問題がある。安保法案反対デモ、特定秘密保護法反対運動に従事する若者たちは、自分たちを「不幸」とは捉えない。自らは幸福で豊かだが、しかし安保法案や特定秘密保護法のもたらす問題を、将来的に自分の生活に被害をもたらす課題として捉え、運動に関わった。それは典型的な中道左派的運動でもある。
これまでの中道左派的な運動は、普段から政治に関心を持たないような人びとへの要求をそれほど行ってこなかった。なぜ2011年以降の若者たちは、「普通の人びと」への訴えかけを熱心にしたのか? そこには、震災後の社会や市民の見方における転換があるのではないか?
以上のような動きは、市民が自らの「声」を政治に届けようとする試みであり、シノドス国際社会動向研究所(シノドス・ラボ)が目指すところの「新しいリベラル」や「オルタナティブな市民」像を構想する上でも重要な事例である。そこで、富永京子による新刊『社会運動と若者――日常と出来事を往還する政治』(ナカニシヤ出版)を題材とし、「若者の政治参加と社会運動」をテーマにシンポジウムを開催する。
震災後の若者の社会運動は、どのような社会変動を映し出しているのか? また、日本にかぎらず近年、台湾・香港の社会運動や、アメリカから世界に広がったオキュパイムーブメント(占拠運動)など、国内外でさまざまな若者の運動が見られたが、これらは果たして「新しいリベラル」の台頭と言えるのだろうか?
シンポジウムでは、『「ボランティア」の誕生と終焉』(名古屋大学出版会)の著者、仁平典宏氏をお招きし、シノドス・ラボ理事の富永京子と橋本努が、社会運動のみならずボランティアという形を含めての政治参加、それらが提示するオルタナティブな社会のありようについて、議論を通じて考えていく。
シンポジウム詳細
日時:5月20日 15時30分~17時30分
定員:80名 参加費:無料
下記フォームよりお申し込みください。