2016.08.24
テロの連鎖を断ち切るには――現代テロリズムの傾向と対策
2016年7月1日、バングラデシュの首都ダッカで武装集団が飲食店を襲撃し、日本人7人を含む20人が亡くなった。また7月15日、フランスの都市ニースで革命記念日の祭りでにぎわう見物客の中に大型トラックが突っ込み、少なくとも84人が死亡、100人以上が負傷した。今回は、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏と日本大学危機管理学部教授の福田充氏を招き、世界各国で発生しているテロに対して今後いかなる備えが必要なのか、その傾向と対策を考える。2016年07月18日放送TBSラジオ荻上チキ・Session-22「世界各地でテロ相次ぐ。現代テロリズム、その傾向と対策」より抄録(構成/畠山美香)
■荻上チキ・Session22とは
TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。さまざまな形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。番組ホームページはこちら→ http://www.tbsradio.jp/ss954/
トルコクーデター未遂事件の影響
荻上 今日のゲストをご紹介いたします。軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんと日本大学危機管理学部教授の福田充さんです。
先日、トルコでクーデター未遂が起きました。国際情勢やISIL対策などに、今後どういった影響が及ぶでしょうか?
黒井 基本的な対策に大きな変更はないと思います。トルコは対テロでは最前線ですので、もっと大きな影響を予想していましたが、早い段階で落ち着いたという印象です。短期的にアメリカとの関係はギクシャクしましたが、今は回復に向かってきています。エルドアン政権はISILやPKKに対しても強気できていて、その点は軍の主導部ともある程度一致していますから、その路線が崩れることはないと思います。
荻上 福田さんは今回のトルコの件について、どのようにお感じになっていますか。
福田 国民を味方にすることに失敗したことが大きかったと思います。エルドアン政権はISILの掃討作戦も強化しなくてはいけないですし、国内を引き締めるために強権化を進めていくことになります。EUに向けた国際的な立ち位置と、国内の強権化のギャップというジレンマが極大化したときに今後どうなっていくのかという心配があります。
荻上 これからもトルコが重要な地域であることは変わらないということですね。
黒井 トルコは大量の難民が入ってきていますし、ISILの出入り口になっていますから、そこがこけてしまうと世界のテロ対策自体がこけてしまうことになります。福田先生がおっしゃったように、トルコの国内で不満が介在しているようであれば、その行方が今後重要になってくると思います。
荻上 「不満」はテロを考える上で重要なキーワードになると思います。また後ほどそのあたりも国内情勢とどのように関係してくるのか読み解いていきたいと思います。
「テロ」とは何か
荻上 「テロ」という言葉について、さまざまな意見がきています。
「テロという言葉について定義もなく、いい加減に使われているというのが私の意見です。テロという分かったようで分からない言葉を用いることは、それこそ政治的目的を持った国家による印象操作を許すだけです。」
「テロの定義を示してください」
「政治目的を持ったテロと自殺志願者が冥土の土産にひと暴れする通り魔を整理してほしい。」
「テロ」の使われ方や定義についてどのようにお感じになりますか。
福田 テラー(terror)は本来「恐怖」を意味しますから、テロは「恐怖」を利用した政治的コミュニケーションと言えるでしょう。
私自身の定義としては、政治的目的というものを持って、爆弾や銃撃事件などを起こすことで、社会から注目を集めて自分たちのメッセージを世界に宣伝し、それによって一国の政策を変更させたり、社会を混乱させる暴力行為のことを「テロリズム」としています。
しかし、政治的目的がなくても、大規模な事件を起こしたらテロと呼ぶべきだという意見もありますから、研究者の中でも色々な立場があります。たとえば、ニースでの事件の場合、フランスの革命記念日の花火大会が狙われたため、フランス国民にとっては政治的なダメージがありました。そのとき、容疑者が政治的目的を持っていたかは関係ありません。意図はなくても政治的な効果が発生するのであれば、「テロリズム」であると考えることもできます。
荻上 黒井さんは「テロ」の定義についてどうお感じになられますか。
黒井 学問上のテロリズムと報道上のテロリズムはちょっと違います。社会側から見て政治的背景にあるものは「テロ」と呼んでいるというのが報道上の慣習だと思います。特に定義は決まっていません。犯罪度が高いかどうかでテロか抵抗運動か、あるいはゲリラ運動かという区別もあります。
また、「テロ」には、言う側の悪意が含まれているように思います。政治的な対立構造の中でやっている本人たちを、一方的に悪いものとして扱うような意味があるのではないでしょうか。
荻上 では、先週の末に起きたニースでの出来事はテロと考えて良いのでしょうか。
福田 容疑者が亡くなっているので本人の目的は分かりませんが、「フランスの革命記念日が標的になっている」という政治的効果が発生した時点で、テロと言えます。社会も国家権力もメディアも一緒に「テロ」を作り上げていく共犯関係的な部分もあります。
テロリズムという現象を語っていく「行為」自体も政治的なコミュニケーションといえるでしょう。「テロ」とせずに、「独立運動の英雄」とみなすこともできますし、「テロ」かどうかは解釈する人の立場によって変わります。
「ホームグローン」と「ローンウルフ」
荻上 ニースのテロについて、容疑者のタイプや犯行の手口についてはどのように見ていらっしゃいますか。
黒井 自殺志願者の心境は個人それぞれで違うと思います。1つのパターンとして想定できるのは、「たくさんのひとを道連れにしたい」「すがるものが欲しい」という破滅願望が先にあり、イスラム化した可能性です。
福田 犯行の手口自体は特に新しいものではないと思っています。トラックを使って轢き殺していく方法は、日本でも秋葉原の事件の際に加藤容疑者が使った手段でもあります。自動車爆弾を使ったテロは世界中で起きていますし、中東でも連日起きています。
荻上 亡くなってしまった容疑者の心理は分からないにしても、犯人のタイプをどのように考えればよいでしょうか。
黒井 おそらく、思想背景は少ないけれども、大きなことをやってやろうという風潮に感化されたのではないでしょうか。今後こういったテロの形が危惧されていくのではないかと思います。
荻上 海外の過激思想に共鳴した国内出身者が起こすテロを「ホームグローン」と呼びますよね。彼らがなにかしらのはけ口をテロに結びつけるようになってしまった。さらには、団体に所属していないにも関わらず、思想的に感染してテロを起こす「ローンウルフ(一匹狼)」というひとたちも最近では目立ってきていますよね。
福田 今回のニースのテロについてもホームグローン的であるし、ローンウルフ的であるという意味では、最近増えてきている無差別テロのパターンの一つだろうと思います。
荻上 ホームグローンとローンウルフがセットでよく語られますが、ホームグローンでありながら国内で感染組織を独自で作って数人、数十人などでテロを行うということも想定しておいた方がよいのでしょうか。
福田 今月起きたバグダットでのダッカの日本人人質テロ事件は、その傾向があります。そうではなくても、たとえばアメリカのボストンマラソンの爆弾テロ事件は、ローンウルフ型でありながら、二人の移民の兄弟が実行したという「ホームグローン」の側面もあります。今回のニースのように、ISILなどのテロ組織とは直接的に関係がないようなタイプがこれから増えてくると思います。
ソフトターゲットへのテロ
荻上 テロにおけるターゲットの選び方というのはどう考えれば良いのでしょうか。
黒井 警備の手薄なイベント会場や建物、民間人などを「ソフトターゲット」と呼びます。これまで、ソフトターゲットへのテロは、軽い感じで扱われていて話題にもならなかった。しかしISILの登場から、「ジハードの成果」として、ソフトターゲットであっても多くののひとを殺した方が評価され、英雄視される傾向があります。
福田 現在のテロの潮流は無差別テロに明らかにシフトしているでしょう。ぼくは「ソフトターゲット」には3つの要素があると思っています。
1つ目は伊勢志摩サミットやオリンピックのような、世界中の要人やメディアや観客が集まるメディアイベント。
2つ目は9.11で狙われていたワールドトレードセンタービルのようなランドマーク。そういった象徴的なもの、観光地などは狙われやすい。
3つ目はレストランやイベント会場、もしくは駅など不特定多数のひとが集まっている集客施設や交通機関。そこに紛れてしまえば簡単にテロを起こすことができる。これからの潮流として、3つ目を狙うテロが多くなると考えられます。
荻上 象徴的な効果はないけれども、たくさんひとを殺したという意味で潮流になっているということですね。
黒井 そうですね。また、イスラムに敵対する勢力と認識されるような、文化やイデオロギーが加味された政治性のあるものが狙われやすくなると思います。
荻上 その政治性については一貫していない印象があります。巻き添えを食ってしまうムスリムのひとたちもいると思うのですが。
福田 選別して本当のターゲットを殺害するのではなく、ISILやアルカイダなどに影響を受けた一般人が過激化し、簡単な方法でテロをやってしまいます。だから無差別になるという杜撰な部分があるのです。「大雑把なテロリズム」という言い方もできるかもしれません。
荻上 テロ対策の対象として、ソフトターゲットを入れることは現実的に考えられるのでしょうか。
黒井 ソフトなところを全部やるというのは人為的にも予算的にも無理なので難しいでしょう。特に今のテロリストとは、過去と違って自殺前提の犯行ですから、そこを防御していくのは難しいでしょう。
荻上 リスナーから質問が来ております。
「ソフトターゲットへのテロ対策について質問です。一見普通のひとに見えるひとの暴力によるテロが問題について、どのような対策を講じれば防ぐことができるのでしょうか。」
黒井 我々一般にできることはほとんどないと思います。いわゆる普通のひとに対しての事前察知はまず無理でしょう。インターネットの書き込みを全て監視するのは不可能ですから、それはしょうがないのかなと思います。
福田 さまざまな危機において言える事ですが、リスクをゼロにするのは不可能に近いので、一般人が急に過激化して社会の中でテロを起こすことを防ごうと思ったら、強大な監視社会を作るしかありません。 安全安心のための監視を強化していくのか、自由、人権を守るために考えていくのかというバランスが必要だと思います。
セキュリティとケア
荻上 過激思想の伝播そのものを抑止することについてはどのようにお考えでしょうか。
黒井 ある程度やらなければいけないと思います。一番良くないのは、「イスラムフォビア」(イスラム恐怖症)の差別です。欧米社会でそれが一般化してしまうと、イスラム過激派の裾野を広げてしまいますから、まずはそれを止めるのが大前提です。イスラム過激派のコアな部分に関して言うと、徹底した治安取り締まりで対処していくというのが現実的な対応だと思います。
福田 これは今まさに問題になっているヘイトの問題に繋がってくると思います。なぜテロリズムが起きるのか、そこに存在する宗教の対立や、民族の問題に対する理解が日本人には難しいのではないでしょうか。日本国内に限って言えば、社会教育をどんどん広めていって理解を深めていくしかないと思います。
荻上 格差を減らし、福祉を拡充するような政策には、過激思想が伝播しにくい社会をつくる効果があるのでしょうか。
福田 テロ対策には、さまざまな側面があります。1つ目は国内の監視や、警備を強化していくようなホームラウンドセキュリティ。2つ目には、対テロ戦争という過激派を壊滅させるようなアメリカ的なアプローチもあります。3つ目は貧困問題、教育の格差、差別の問題を国際的にどう解決していくのかを考えるもの、コミュニティの中でどうやって実践していくかという根本的な解決方法がないと、究極的にテロの連鎖は止まらないと思います。
荻上 テロの可能性に備えたセキュリティの議論も行いつつ、不満を持っているひとたちに対するケアを積極的に行う。この両輪が少なくともどの国にも求められるということですね。
テロリズムとメディアの関係
荻上 ISILが犯行声明を出したりしますよね。「自分たちの同士だ、仲間だ、戦士だ」と言うのと同時に、ネット上で自分たちのアピールをしている。ISILの意図はどこにあるのでしょうか。
黒井 テロには勢いが必要です。ISILのひとたちが海外のテロを宣伝として利用することで、「世界中でまだこの熱が続いているんだ」と他のひとが感化されやすくなる効果があると思います。
福田 平等で同質的なコミュニティのなかこそ、集団極性化しやすいという条件を持っているというのがインターネットであったり、ソーシャルメディアの特性ですが、ISILはその特性を知っているからか、それを上手く活用して世界中のひとを動員していく構造があると思います。
荻上 テロ組織のリクルーティングもネット上で行われているといます。テロ組織、ジハード主義者たちはこうしたSNSの特徴というのを適切に理解した上でフル活用しているように思えるのですが。
黒井 ISILに関して言うと、リクルート活動にそれほどネットは使われていません。だれでもウェルカムでは組織として問題もありますよね。ただ、SNSなどを利用し、映像を出したり、宣伝に使っていくことで、ISILに入るひとの裾野を広げてる作用はあります。
荻上 それらの情報をネット上で削除する動きはあるのでしょうか?
黒井 もちろん出ています。大手のツイッターではどんどん削除をしていますが、追いついていません。なんでもかんでも削除というわけでもなく、ある程度は透明化されているものもあります。
荻上 そうした書き込みがテレビで取り上げられることによって、プロパガンダに活用されている点を、警戒しなくてはいけませんね。
海外では、報道する際のガイドラインや注意事項はあるのでしょうか。テロを報じる際に、メディアの報道の仕方で注意するべき点はありますか。
黒井 ガイドラインは特にないと思います。欧米のメディアでは、ある程度のものは報道されていますが、日本のそうしたものが少ないと思います。
テロの報道に関わる際に感じる点が2点あります。1つ目は危険が正等に評価されていなことです。「ここは危ない」と、過剰反応をして簡単に話が終わっています。もう1つは、テロ事件が起こったときに日本人が「いかにすれば巻き込まれないか」という話だけに終始してしまうことです。
福田 日本人が巻き込まれていないテロは世界中で毎日起こっています。
日本人が死ななければ報道されない、逆に日本人が巻き込まれれば集団的に過熱するのではなく、日本人であろうと何人であろうとひとの命が失われていくテロリズムという現象をどうやって解決していくか、グローバルな視点で考えていく必要があるのではないでしょうか。
ブライアン・ジェンキンスという研究者が1970年代に「テロリズムは劇場だ」と言っています。テロリズムが起きた瞬間に人々はそれを話題にして盛り上がって観客になってしまう。ぼくたち自身も加担しているし、消費している。実はメディアもそれを商売にしている部分があるのではないかと感じています。
荻上 そうした劇場を提供することによって、そこでまたテロが繰り返しやすいような条件をメディアそのものが作るということに慎重でなくてはいけないということですね。
アジア圏でのテロについて
荻上 こんな質問がきています。
「日本は島国だからテロリストが入国しにくいとよく聞きますが、私もそう思います。実際どうなのでしょうか。」
アジア圏でのテロについてどう考えればよいのでしょうか。
黒井 アジア圏のテロにおいても、ISILにレスポンスとしてテロをする形が流行しています。中でも、インドネシアやマレーシア、フィリピンといったイスラム系の社会ではすでに戦闘員がシリアやイラクなどに入ってきています。そういった国で、テロは起こりやすいと言えるでしょう。また、「ホームグローン」のような、国内在住者が起こすテロは、日本のイスラム移民社会の中では起こりにくいでしょう。
黒井 幸いにも今の日本では移民社会の中に過激なグループが出てきて、大きな話になるということはありません。自分探しみたいなところで、ISILに興味持つひとはいますが、今のところ自発的にホームグローンに育つというような可能性はほとんどないと思います。
荻上 これから、オリンピック、パラリンピックなどの国際イベントが行われれますが、そのリスクについてはどう考えることができるでしょうか。
黒井 日本はセキュリティが厳しいですし、島国ですので潜伏できる場所もない、言葉も通じない。ハードルが高いことは事実ですね。なので、わざわざ日本にまで行って、テロは起こさないでしょう。動機付けとしても、日本でテロが起こる可能性は非常に少ないと考えられます。
荻上 逆に言えば、これから強い動機付けが生まれないような外交や、国内情勢の維持を続けていくことも必要になっていくわけですよね。
黒井 テロの話になると、いつも「グローバルなテロ対策をやらないで良いのか」という話になり、対策をやるべきか否かの両極端な意見ばっかり出てきてしまいます。ですので、今後はもう少し具体的な議論をする必要があるのではないかと思います。
荻上 経済的支援と人道的支援、シリア難民ですと留学生を受け入れるという話がありますよね。ここからさらに進めるべき議論についてどうお感じになりますか。
黒井 海外の標準と比べると、日本では話にならないくらい、難民受け入れや経済支援が少ないです。関わらなければいいという話ではなく、どういう関り方をするのかを今後考える必要があるのではないでしょうか。
対話の必要性
荻上 日本の安全保障の観点から、ISIL問題に関り方についてどうお感じになりますか。
福田 日本人の一般市民よりも、国際政治の中でなにをするのかを焦って考えて一生懸命頑張ろうとしているのが、今の安倍政権の状況なのだと思います。世界でどのように平和を構築していくのか、日本はどのように積極的に貢献していくのか、これまで日本人は議論してこなかったし、教育も進んでいません。日本人が、今の安倍政権の議論についていけないのは、そのギャップがあるからでしょうね。
荻上 そうしたギャップを、今後どういった議論で埋めていく必要がありますか。
福田 大学でも教育していく必要がありますし、テレビやラジオ、新聞といったメディアの中で、国民を巻き込んで議論をしていくことが大事でしょうね。残念ながら、安全保障やテロ対策について、国民が国際的な感覚で議論するプラットホームが提供できているとは思いません。安全保障法制について、「戦争法」と言える側面はあるかもしれませんが、そこで思考停止してしまうと異なる立場のひとたちが全く議論できない状況になります。メディアや研究者、ジャーリストの役割が求められていくでしょう。
荻上 ご指摘の通り、昨年の安全保障関連法案に関しては、政府も含めて、国民と対話をする機会がつくれなかったと感じられます。そうした中で、情報収集をし、情報発信をすることが必要になっていくとは思いますが、これからもっと注目してほしい議論はありますでしょうか。
福田 これからは、出入国管理がとても重要になってくると思います。法務省が出入国管理インテリジェンス・センター、外務省も国際テロ情報収集ユニットというものを作りました。そこで国際的な情報機関と、どれくらいきちんと情報共有ができているか、その結果どうやってテロ事件を抑止できたのか。このような効果の検証も非常に重要になっていきます。
荻上 黒井さんは今後どんな議論が必要だとお感じになりますか。
黒井 2点あります。1点目は、日本が世界のインテリジェンスコミュニティの外にいる点です。たとえば、日本人の人質案件が出た時に、海外の情報機関と連携して、チャンネルがあれば交渉ができるのですが、いまのところそういったものが全くない。
それと、テロ対策の90パーセント以上が盗聴ハッキングです。それを日本の中でやるべきか否か、賛否が分かれていますので、現実的な議論が今後は必要でしょう。
プロフィール
福田充
日本大学危機管理学部教授。日本大学大学院新聞学研究科教授。1969年、兵庫県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。専門は危機管理学、リスク・コミュニケーション。内閣官房委員会委員、コロンビア大学戦争と平和研究所客員研究員などを歴任。著書に『メディアとテロリズム』(新潮新書)、『テロとインテリジェンス~覇権国家アメリカのジレンマ』(慶應義塾大学出版会)、『大震災とメディア~東日本大震災の教訓』(北樹出版)など。
黒井文太郎
1963年福島県生まれ。フォトジャーナリスト(紛争地専門)、「軍事研究」記者、「ワールド・インテリジェンス」編集長などを経て軍事ジャーナリスト。専門はインテリジェンス、国際テロ、情報戦、中東情勢、北朝鮮情勢、安全保障、旧軍特務機関など。ニューヨーク、モスクワ、カイロを拠点に海外取材多数。著書に『イスラム国「世界同時テロ」』『イスラム国の正体』(ともにKKベストセラーズ)『イスラムのテロリスト』『世界のテロリスト』『日本の情報機関』『北朝鮮に備える軍事学』(いずれも講談社)『アルカイダの全貌』(三修社)『インテリジェンスの極意』(宝島社)など。
荻上チキ
「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『未来をつくる権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『日本の大問題』(ダイヤモンド社)、『彼女たちの売春(ワリキリ)』(新潮文庫)、『ネットいじめ』『いじめを生む教室』(以上、PHP新書)ほか、共著に『いじめの直し方』(朝日新聞出版)、『夜の経済学』(扶桑社)ほか多数。TBSラジオ「荻上チキ Session-22」メインパーソナリティ。同番組にて2015年ギャラクシー賞(ラジオ部門DJ賞)、2016年にギャラクシー賞(ラジオ部門大賞)を受賞。