2014.02.21

風俗の安全化と活性化のための私案――セックスワーク・サミット2013

要友紀子 SWASH代表

社会 #セックスワーク#synodos#シノドス#性風俗#SWASH#セックスワーカー

「セックスワークで『食う』」をテーマに掲げたセックスワーク・サミット2013(7月28日@歌舞伎町開催)では、セックスワークを専業、あるいは副業の「職業」として捉え、中長期的に生計を立てていく方法はあるのか、そしてそのために必要なこと、その方法について議論を深めていた。本記事は当サミットの発表の中から、セックスワーカーが健康に、安全に働けるようになることを目的に活動しているSWASHメンバーの要友紀子氏の発表の抄録をお送りする。セックスワーカーのために、当事者、経営者、周辺ビジネス、そして国、社会ができることとは一体なにか。(構成/金子昂)

SWASHのセックスワーカーのための活動

 

最初にSWASH(Sex Work and Sexual Health)という団体をご存じない人もいらっしゃると思うので紹介しますね。私たちは、性風俗で働くセックスワーカーが、健康に安全に働けることを目的として活動している、当事者と支援者の団体です。99年の設立以来、2010年まで東京で活動してきましたが、2011年から大阪を拠点に活動し、現在は、大阪と東京にメンバーがいます。

主な活動は、性感染症予防パンフレットの制作と配布、風俗店に行き、現場訪問相談や講習を行うアウトリーチ、ホットライン、相談カフェ、実態調査、海外のセックスワーカー団体とのネットワーキングなどです[*1]。

パンフレットやイベントチラシを届けに風俗店に行くときは、店長さんや男性従業員と立ち話ができるくらいに仲良くなって信頼してもらって、確実にセックスワーカーに資材が届けられるように努力しています。また、アウトリーチ期間中に、男性向け風俗誌や風俗求人誌などで連載[*2]を持つなどして、風俗店への「おみやげ」を持つことで、私たちとの関係性にメリットを感じてもらうようにも心がけています。

近年は、大手のグループの幹部の方々と関係性を深め、グループ全体に情報を届けて頂くような働きかけにも力を入れています[*3]。特にデリヘルは、店舗を構えていないので介入が難しく、こうした働きかけの努力や様々な仕掛けを考えなければなりません。

海外とのネットワーク構築では、毎年いろんな国で行われているセックスワーカー団体の集まる国際会議にメンバーが参加しています[*4]。その中で、共通した問題意識やセックスワークイシューを持つ海外の団体には、日本に出稼ぎに来る外国人セックスワーカーへのアウトリーチ活動や調査に同行してもらうなどの連帯活動があります。主な活動としては、以上が挙げられると思います。

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人々に理解されやすい“救済すべきセックスワーカー”

さて、本題に入ります。今日は風俗活性化のための私案についてお話させていただきます。当事者への提案、経営者にやって欲しい努力についての提案、求人広告など周辺ビジネスをやっている人たちに協力してもらいたい提案、社会や国に対する提案などを話したいと思います。

実はちょっと前まで、今日のテーマのような、「風俗で効率的に賢く稼ぐ」とか、「風俗を活性化させる」という話はできない状況でした。セックスワーカーへの差別や偏見があり、こんなテーマで語るとフェミニストの方からバッシングされたり、問題や現場をよくわかってない人たちに「のんきなこと言ってるなあ」と言われちゃうので、なかなか話しにくかったテーマなんです。いかに風俗が悲惨な仕事かとか、どうすれば“かわいそうなセックスワーカー”を風俗から救い出せるか、という話にしか需要はなかったと思います。

だから私たちはずっと、セックスワーカーの健康と安全のことを前面に出して活動を展開してきました。今日は坂爪さんたちのお力添えと貧困社会の状況もあって、やっと、ようやくここにきて、「風俗の仕事で稼ぐためにできること、やらなければいけないこと」について話ができるので、すごく嬉しいです。

風俗で稼げなくなると不安定な働き方をすることになったり、ハイリスクなサービスをすることをやむを得ないと思うようになったりします。だから風俗活性化は、セックスワーカーの生活を守るという意味でも、セキュリティ環境の向上という意味でも、とっても大事だということをわかって欲しいです。ただ「お金持ちになりたい」という欲望を叶えるために稼ぐことにこだわると思わないでください。

[*1] SWASH Webサイト http://swashweb.sakura.ne.jp/

[*2]風俗求人情報サイト・モモコちゃんねるのSWASH連載中コラム http://momoco.ch/colum/swash/

[*3]すすきのファッションヘルス優良店組合・札幌防犯健全協力会主催、第七回講習会(2013年2月20日)に招聘頂いた。http://www.sap-kenzen.com/top.html

[*4] 第11回アジア太平洋地域国際エイズ会議 セックスワーカー会議報告会 文部科学省科学研究費補助 性産業で働く人びとの安全と人権を守る対策の研究 共同研究発表(2014年2月22日、京都) http://swashweb.sakura.ne.jp/node/82

当事者ができること

まずはセックスワーカーに向けて、経営者が用意する接客マニュアルには書いていない、仕事をする上で知っておいてほしい努力についてのアイディアを提案してみたいと思います。

最初にお店に行って面接を受けるときの努力をお話しますね。面接に落とされてしまう人の中には、どの店の面接を受けてもなかなか採用されないことがあります。面接を受ける人たちの多くは、今日稼がないといけない、今週中に20万円稼がなくちゃいけないとか、切羽詰っています。だからあちこちで面接を受ける時間的なロスは大きい。面接で気を付けることを知っているか知っていないかの差はとっても大きいのです。

店長さんたちに、どういう理由で採用しないか聞くようにしています。例えば、「面接してください。ちょっと太っているけど働けますか?」とメールがきたとしますね。店長さんが「じゃあ面接しましょう」と返事を出し、会う約束のやりとりをする中で、「どこの駅まできてもらえますか?」と女の子から返信がくる。その時点でアウトだと言っていました。「面接を受けてあげよう」という気持ちでこられても困るそうです。ちゃんと「面接をしていただく」という姿勢をとることが大事。

それからちょっと鬱っぽい人だと、「お客さんとちゃんと話できるかな」と心配されて落とされてしまう。面接は店長さんが相手でお客さんではないから、仕事でもないから気を使わなくていいやと気を抜いていたらダメなんですね。

あとは面接時のプロフィールに記入するときのタブーもあります。記入欄には、年齢や住所などいろいろ書くわけですが、最後に「講習を希望するか」という質問があったとします、そこは「希望する」と書いた方がいいそうです。お店は、実際に講習するかしないかは別として、採用するかしないかの線引きとして参考として質問しているそうです。「希望する」とあると、「この子は向上心があるし伸びるんじゃないか」と判断すると聞きました。

他にセックスワーカーができると思うのは、顧客管理データベースの構築ですね。いろいろなお客さんについて指名をたくさん手に入れたその実績は、どこで活かすんですか? 次の店でしょ! 次の店でお客さんを呼ぶときに使えるだけでなく、面接時に、顧客管理をしてきた形跡を見せるという使い方もでき、よい自己アピールにもなります。

指名をたくさんとる人は、お客さんと何を話したか、お客さんの性感帯はどこか等、忘れないようにちゃんとメモしてるといいます。「前にお話されてた〇〇はどうなったんですか?」と話せるとお客さんに気に入ってもらえる。でも、急に指名が入って10分後に接客しなくてはいけなくなったとき、大量のメモの中からお客さんを探すのって大変ですよね。

そんなときに顧客管理データベースがあったら便利だと思います。例えば「静岡県」でデータベースを検索したら、静岡県のお客さんのリストがすぐでてくるとか。検索サイトみたいに「乳首 なめる 好き」でキーワード検索できるとか。

自分の傾向と対策や、それぞれの客の来店の周期予測とかで、自分の無理のない働き方や収入の調整ができるようになるような、そういうWebアプリを作ってくださいとお願いしているんです。ログインデータベースがあれば、お客さんについてのメモを落としたり携帯見られたりして、家族に見つかっちゃって家族崩壊みたいなことも避けられますよね。

働くところがなければセックスワーカーどうしの共同経営についても考えることも必要かもしれません。ご存じの通り、店に雇われると稼ぎの半分を中間搾取されるので、自分が経営者でプレイヤーであれば、中間搾取はありません。さらに、Webサイトやブログなどでネット広告業務もできれば出費も抑えられます。海外の多くのセックスワーカーは、個人事業主としてビジネスをし、プレイルームの維持、宣伝集客、プレイヤー、一人で何役もこなしています。

日本での可能性がないなら海外の夜のお仕事求人サイトをチェックしたり、日本人も移住労働を視野に入れていく時代にもなっていると思います。客が減って稼げないという話を聞くようになって久しいですが、マーケットを海外にも広げると、需要に関しての年齢的な壁は、日本ほどではなくなります。

経営者ができること

それから経営者にやってほしいこともあります。私は、お客さんが来ない、お金を稼げない理由は、セックスワーカーが半分、お店のオーナーの経営努力が半分だと思っています。そういう視点でセックスワークを見ると、セックスワーカーにアドバイスできる経営者や男性従業員というのが全然いないんですよね。セックスワーカーに任せて自己流でやってもらっているのがほとんど。

セックスワーカー向けの講習以外にも、ときどき男性従業員向けに講習をお願いされることもあります。どういうことかというと、店長さんも女の子たちにどうやって教えればいいのかわからないんですね。だから「教え方を教えて欲しい」と言われるんです。実際に講習に行ってみると、なかには全然わかってない人もいて、よくそれで経営ができているな、と思うこともあります。

いろいろな風俗店を訪ねて、店長さんに「講習ビデオはありますか?」「研修ってやっていますか?」「マニュアルがあるなら見せてもらえますか?」とお願いしてます。大手のグループの場合、働く上で気を付けることとか、お客さんへの気遣いの仕方とかが書いてある分厚いマニュアルが置いてあることがあるのですが、あるお店のマニュアルに「“コミュニケーションのさしすせそ”」と書いてあったのですね。「さすがですね! 知らなかったー! すごいですね! 先輩ですねー! そうだったんだー!」という相槌のことでした(笑)。

お店にあるマニュアルというのは、たいてい、お客さんの気持ちや男心の解説、気配りの仕方、人気のある子はどうしてるか、お金をもらってサービスすることの正しい姿勢と心得的なことが書いてあったりするのですが、もっと個別のビジョンとインセンティブを持てるようなものがあったほうがいいと思います。

例えば、ある女の子がネイルサロンを開業する夢をもっていたら、そのためにはいくら必要か、どんな準備や勉強の時間が段階的に必要か。自分の夢や目標に関連する職種で働いているお客さんからどんな情報やアドバイスがもらえるとお得か。指名が月に何本ある場合、ない場合だと、目標金額までに働く総時間はどれくらい差がつくか。延長を何回とれば、延長なしの場合よりも何人の客につかなくて済むか。土日に何時間以上の指名予約限定で客をとるようにした場合どんな影響があるか。今風俗の仕事でやっていること(営業努力・顧客管理・ネット戦略等々)は、他の仕事にどのように援用できるか。あるいは援用可能な働き方、時間の使い方ができるか……といった、個別のファイナンシャルプラン、ワークライフプラン、セルフブランディングでまだまだできることがあるのではないでしょうか。そういった専門のコンサルタントやプランナーを設置したほうが働く人に喜ばれると思います。

これはいわゆる救済系の人たちがいうような、セックスワーカーの“社会への再統合”という意味ではありません。元セックスワーカーがいろんな職種で活躍すること、あるいは、いろんな職種にセックスワーカーがいることが当たり前になることは、セックスワーカーの差別偏見の解消につながると思います。また、隠していることがほとんどのセックスワークにとって、どんな仕事にも共通する普遍性や連続性、関連性、援用性を見出すことは、自分や仕事の社会性を認識し、自信にもつながると思います。隠さなければいけないこと、否定されるようなこと、これは無かったことにしなければならないと思いながら働くより、自分のしていることを前向きに未来にとって意味のあるものに変えていくプロセスは、心身にとってもいいのではないでしょうか。

もちろん、セックスワークの仕事に積極的になれない人や、風俗で働くことにおいて心身が持たない人もいるでしょう。そういう人には、ソーシャルワーカーやカウンセラーにつながるように、DV被害やストーカーから逃げている人には、専門の相談機関やシェルターにつながるように、セキュリティエージェントの設置が望まれます。

数年先には、オリンピックやカジノ特区構想の実現も視野に入れて、外国人客の集客努力も必要です。たとえば成田空港とか羽田空港の近くで特区ができたとしますよね。そうなると当然、外国人観光客がたくさん来日するようになります。そのとき風俗案内所で英語対応できる人がいると便利です。外国人客トラブル多言語対応のための「風俗のJAF」みたいなサービスを業界団体で設置することも必要だと思います。

あと、先ほど面接のお話をしましたが、面接で落ちてしまったセックスワーカーへのフォローのシステムもできたら嬉しいです。というのも、お店側が面接で落とした女の子に、比較的誰でも働けるお店を紹介してあげて欲しいんですね。そうすればその子のお店探しの時間的なロスをカットできますよね。

実際に、札幌の「デンジャラス札幌」や鶯谷の「鶯谷デッドボール」というお店は他のお店では落とされちゃうような子でも採用しているという話で有名ですよね[*5]。別にそこじゃなくても、「容姿ではなくてやる気で採用しています」という店長さんも実際にたくさんいるので、そういう情報を集めて、お店側に紹介できたらいいなと思っています。

ただ私たちは斡旋業者ではないんですね。電話相談で「愛知のお店はほとんど落とされちゃうので、東京に出稼ぎに行きます」といった相談をしてくる人に、必ず働けるお店を紹介することはできないんです。どこのお店が働けるとか、稼げるという話をすることは、関係を築いているお店からの信用を失ってしまうことになりますし……申し訳ないんですけど。

だから、風俗求人広告サイトに、「面接で落とされないお店」や「必ず今日から働けるお店」のリストを掲載して欲しいです。それだけで全然違うと思うんですよね。あとは男性従業員の質を良くして欲しい。

[*5]札幌デンジャラス http://www.dangerous.jp/ 鶯谷デッドボール http://www.deadball.biz/top.html

周辺ビジネスができること

それから求人サイトなどの周辺ビジネスの方にやって欲しいこともあります。

大学生って就職活動をするときにリクナビなどの就活サイトを使いますよね。あれの風俗就活サイトがあるといいなと思います。そのサイトの書き込みで、「このお店は誓約書を書かせる」とか「コンドーム使えない」とか書いてあれば、ブラック風俗店も淘汰できるんじゃないでしょうか。

以前、あるIT企業にこのアイディアをプレゼンにいったら、始まってすぐに笑われて「よくプレゼンする勇気がありましたね」って言われてしまいました。ソフトオンデマンドは(2014年2月20日現在)4618万円もかけて、覆面調査団による風俗ランキングというプロジェクトをして、いろんなテーマでセックスワーカーをランク付けしていますが[*6]、風俗嬢による覆面調査員というのができれば、就活サイトに近いことができるかもしれません。

[*6]SOD覆面調査団 風俗ランキング http://fuzoku.sod.co.jp/

社会や国ができること

昨年スイスのチューリッヒで話題になった売春ドライブイン[*7]がそうですが、自治体の行政が、各風俗エリア、風俗店にソーシャルワーカー、セキュリティエージェント、カウンセラー等産業医を設置することが高く評価されています。

セキュリティエージェントに関しては、ペルーの先行事例があります[*8]。マルチセクターグループの取り組みとして、セックスワーク地帯をマッピングし、100人のセックスワーカーに対して、HIVと人権に関するトレーニングを行い、セキュリティエージェントだけでなく、アドボカシーリーダーの養成も行っています。

このような取り組みは、例えば出所した受刑者、知的障がい者、ドラッグユーザー、多重債務者、DV被害者、鬱、高齢者のための生活支援につながるだけでなく、引退した元セックスワーカーのための雇用創出にもなります。

もうひとつ大事なことは、風俗店の営業ライセンスの取得条件の改革です。安全、健康、雇用、給与に関するガイドラインの策定と義務化、経営者研修の実施が必須です。既にニュージーランドやオーストラリアなどでお手本があります。オーストラリア・クイーンズランド州政府は、クイーンズランド州のセックスワーカー団体・Respectに委託し、経営者やマネージャーに対してトレーニングを義務付けています[*9]。風俗店の経営者になるときは、このトレーニングを受けなければ、ライセンスをとることができません。経営者向けワークショップのコンテンツメニューは以下の通りです。

「営業方針と手続き」

・ライセンス売春宿の管理

・運営計画

・規制要件

・広告

・懲戒

・罰則とセックスワーカーの管理

・書類の保持

・苦情

「職場の安全衛生」

・守秘義務

・サーベイランス

・感染対策

・応急処置の施し

・セックスワーカーの安全性の確保

・潜在的に危険なクライアントの兆候

・安全原則

・職場のいじめ

「職場でのセクシュアルヘルス」

・セーフセックス用品/PPE(Personal Protective Equipment)

・セーフセックス用品/PPEと法律

・ライセンス売春宿でのセーフセックスの供給/PPE

・コンドームが破れた場合の対処方法

・性器接触後予防(Post Exposure Prophylaxis=PEP)

・セックスワーカーのためのセクシャルヘルスチェック

・性感染症

・性感染症の症状

・性器のかゆみ

・排尿の痛み

・膣出血

・膣分泌物

・第二チェック

・クライアントが性感染症であると思われる場合の対処方法

こうした安全基準に関する情報は、セックスワーカー当事者たちにも多様な言語で提供、頒布されています[*10]。もし基準を満たさない店舗・経営者がいれば、告発者は委託団体Respectに通報することができ、告発を受けたRespectから店舗に忠告、改善措置がとられ、従わない場合はライセンス取り消しとなります。このような経営者向けガイドライン、プログラム開発は、政府や保健行政関係者にとっても理解が得やすいと思います。

ただ、日本のように、保健行政は性産業に対してエイズ対策を求めて、法執行機関は摘発、取り締まり強化に拍車をかけるというやり方では、現場の理解は得にくいかもしれません。合法、非合法の性産業にかかわらず、コンドーム/ダム使用は、すべてのセックスワーカー、客にとって、法の下に要求されることが原則として確認されなければいけません。

[*7]CNNニュースサイトより http://www.cnn.co.jp/world/35036427.html

[*8]第18回国際エイズ会議におけるセッションより(ウィーン、2010年)。

[*9] HIV予防介入におけるセックスワーカー・ピア養成プログラムの構築――日豪比較研究(2011.SWASH)

[*10] クイーンズランド州のセックスワーカー団体Respect http://www.respectqld.org.au/

民間でできること

最後に、民間でできることを考えたいと思います。

性産業の健全化と活性化を望む人はたくさんいて、セックスワーカーの不幸を減らすことはほとんどの方が賛成してくださると思います。そのためにお金が必要だったり、法改正や政策提言が必要だったりしますが、それと同じくらい重要で、しかも最も早くできることは、様々なセクターの人々が当事者と繋がることです。

そのためにSWASHも、セックスワーカーの相談にのる相談員のための手引書を作って配り始めました[*11]。セックスワークの仕事の内容や、セックスワーカーの置かれている状況や諸問題について知り、理解を深めることが、繋がる第一歩です。

セックスワーカーは、あなたのクラスメートだったり、同僚だったり、家族だったり、恋人だったり、親友だったりします。だから、あなたがセックスワーカーの理解者になることで、大事な人が困っているときに助けになれるかもしれません。

徐々に広がってきているセックスワーカーや経営者のためのスクールやセミナー、資材も増えていくことも、状況改善にとって大きなプラスになると思います。ゆくゆくは、こうした蓄積が、セックスワーク学会のような学術的な発展につながり、セックスワークをめぐる諸問題の解決方法の研究や実践が市民権を得て、切磋琢磨されていくことが理想です。

当事者や現場の方だけでなく、風俗健全化と活性化を目指した、風俗業界ビジネス関係者ら、ステークホルダーが集まる会議やシンポジウムの実施ももっと活発化すべきでしょう。やはり、現場をよく知る人たちがどこまで動けるかというのが大きなポイントになってくる局面があると思います。

もちろん、現場の人たちが社会的に動くというのはなかなか難しいと思いますので、せめて、現場の人々や当事者の声を拾い集めて、世間に紹介していく作業をする人がたくさん必要です。そのための指南書もこれからつくりたいと思っています。

※直前のお知らせになりますが、2014年2月22日(土)13時~京都で「性産業で働く人びとの安全と人権を守る対策の研究 共同研究発表」と、セックスワークイシューに関心のある参加者どうしの交流会を開催します。有意義なネットネットワーキングの時間をご用意しますので、ぜひご参加ください。

詳細はこちら→http://swashweb.sakura.ne.jp/node/82

[*11]相談員・支援者のための手引書第一弾「セックスワーカーの相談にのる保健師・HIV相談員のための手引書」(2014年2月SWASH発行)

プロフィール

要友紀子SWASH代表

1976年⽣まれ。セックスワーカーとして働く⼈たちが安全・健康に働けることを⽬指して活動するグループSWASH(Sex Work And
Sexual Health︓スウォッシュ)で1999年から活動。主な著作は、『⾵俗嬢意識調査〜126⼈の職業意識〜』(⽔島希との共著・ポット出版、2005年)、『売る売らないはワタシが決める』(共著・ポット出版、2000年)、「性を再考する」(共著・⻘⼸社、2003年)ほか。2018年夏頃発売予定「現場から考えるセックスワーク・スタディーズ(仮)」(SWASH編著、日本評論社)
web: http://swashweb.sakura.ne.jp/
twitter: @swash_jp
facebook: https://www.facebook.com/swashweb/

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