定数格差とねじれ国会

「ねじれ」が突き出す日本国憲法の矛盾

 

二院制議会でねじれが起こった場合の政策結果については、必ずしもつねに当てはまる法則性がみつかっているわけではありません。しかし、これまで先進国の二院制議会を研究した成果では、両院の多数政党が異なる場合、財政赤字が悪化する相関関係がみられるようです。また米国の州議会は二院制をとるところと一院制をとるところが混在していますが、どちらかというと二院制議会で財政赤字が膨らむ傾向があるようです。日本の制度的文脈はもちろん異なりますが、バブルの崩壊とあわせて、財政悪化の口火を切ったのが89年のねじれ現象だったのは興味深いところです。

 

ここで認識を新たにしなければならないのは、日本の参議院は世界中の二院制もしくは両院制議会のなかで、かなり強い権限を有しているという事実です。しかも、議院内閣制である日本の憲法体制では、衆議院の多数が首班を指名します。これを参議院が否定することが常態化すると、国政は立ちゆかなくなり、衆議院の優越自体が虚構と化してしまいます。

 

戦後の長期間、自民党は地方の一人区を中心に確実に議席を確保することで、参議院の多数政党としての地位を維持しました。自民党が衆参両院の多数を握っているあいだ、参議院は衆議院のカーボン・コピーと揶揄され、その存在意義を疑う意見もありました。皮肉なことにねじれが発生してはじめて、参議院の存在意義が発揮されたわけです。しかし、そうなると今度は、議院内閣制と二院制という憲法デザインの矛盾が露呈し、統治の困難さが浮き彫りになります。

 

日本の憲法制度では、衆議院、参議院裏表と、3回の選挙を勝たないことには安定政権をつくることができないという高いハードルが設定されています。安定政権を形成することが難しいということは、翻ってみると従来の政策の継続性を担保していることと同じです。しかし政策の変更が難しすぎる場合、時代や状況への適応ができず、憲法体制や民主主義そのものの存立基盤が脅かされる可能性が生じます。そのような長期的リスクも念頭に、日本の統治機構をどのようにするのか、憲法制度も含めて議論すべき時期に差しかかっているのではないでしょうか。

 

議院内閣制を維持するかぎり、根本的な改革は、参議院を廃止もしくは権限を縮小することです。衆参ほぼ対等な二院制を維持するなら、任期が固定されている大統領制へ実質的に移行することが望ましい解決策だといえます。

 

当初期待された「良識の府」としての役割を参議院が担うのであれば、選挙とは異なるかたちで議員を選任し、その決定はあくまで衆議院に参考意見を送るなどの諮問会議的なかたちを取る必要があります。選挙で議員を選び、衆議院とほぼ対等な権限という参議院の役割を考えれば、参議院が政党政治の道具になるのは防ぎようがないのです。こうした誘引の現実を直視し、制度改革を構想していく必要があります。

 

 

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