風俗の安全化と活性化のための私案――セックスワーク・サミット2013

「セックスワークで『食う』」をテーマに掲げたセックスワーク・サミット2013(7月28日@歌舞伎町開催)では、セックスワークを専業、あるいは副業の「職業」として捉え、中長期的に生計を立てていく方法はあるのか、そしてそのために必要なこと、その方法について議論を深めていた。本記事は当サミットの発表の中から、セックスワーカーが健康に、安全に働けるようになることを目的に活動しているSWASHメンバーの要友紀子氏の発表の抄録をお送りする。セックスワーカーのために、当事者、経営者、周辺ビジネス、そして国、社会ができることとは一体なにか。(構成/金子昂)

 

 

SWASHのセックスワーカーのための活動

 

最初にSWASH(Sex Work and Sexual Health)という団体をご存じない人もいらっしゃると思うので紹介しますね。私たちは、性風俗で働くセックスワーカーが、健康に安全に働けることを目的として活動している、当事者と支援者の団体です。99年の設立以来、2010年まで東京で活動してきましたが、2011年から大阪を拠点に活動し、現在は、大阪と東京にメンバーがいます。

 

主な活動は、性感染症予防パンフレットの制作と配布、風俗店に行き、現場訪問相談や講習を行うアウトリーチ、ホットライン、相談カフェ、実態調査、海外のセックスワーカー団体とのネットワーキングなどです[*1]。

 

パンフレットやイベントチラシを届けに風俗店に行くときは、店長さんや男性従業員と立ち話ができるくらいに仲良くなって信頼してもらって、確実にセックスワーカーに資材が届けられるように努力しています。また、アウトリーチ期間中に、男性向け風俗誌や風俗求人誌などで連載[*2]を持つなどして、風俗店への「おみやげ」を持つことで、私たちとの関係性にメリットを感じてもらうようにも心がけています。

 

近年は、大手のグループの幹部の方々と関係性を深め、グループ全体に情報を届けて頂くような働きかけにも力を入れています[*3]。特にデリヘルは、店舗を構えていないので介入が難しく、こうした働きかけの努力や様々な仕掛けを考えなければなりません。

 

海外とのネットワーク構築では、毎年いろんな国で行われているセックスワーカー団体の集まる国際会議にメンバーが参加しています[*4]。その中で、共通した問題意識やセックスワークイシューを持つ海外の団体には、日本に出稼ぎに来る外国人セックスワーカーへのアウトリーチ活動や調査に同行してもらうなどの連帯活動があります。主な活動としては、以上が挙げられると思います。

 

 

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人々に理解されやすい“救済すべきセックスワーカー”

 

さて、本題に入ります。今日は風俗活性化のための私案についてお話させていただきます。当事者への提案、経営者にやって欲しい努力についての提案、求人広告など周辺ビジネスをやっている人たちに協力してもらいたい提案、社会や国に対する提案などを話したいと思います。

 

実はちょっと前まで、今日のテーマのような、「風俗で効率的に賢く稼ぐ」とか、「風俗を活性化させる」という話はできない状況でした。セックスワーカーへの差別や偏見があり、こんなテーマで語るとフェミニストの方からバッシングされたり、問題や現場をよくわかってない人たちに「のんきなこと言ってるなあ」と言われちゃうので、なかなか話しにくかったテーマなんです。いかに風俗が悲惨な仕事かとか、どうすれば“かわいそうなセックスワーカー”を風俗から救い出せるか、という話にしか需要はなかったと思います。

 

だから私たちはずっと、セックスワーカーの健康と安全のことを前面に出して活動を展開してきました。今日は坂爪さんたちのお力添えと貧困社会の状況もあって、やっと、ようやくここにきて、「風俗の仕事で稼ぐためにできること、やらなければいけないこと」について話ができるので、すごく嬉しいです。

 

風俗で稼げなくなると不安定な働き方をすることになったり、ハイリスクなサービスをすることをやむを得ないと思うようになったりします。だから風俗活性化は、セックスワーカーの生活を守るという意味でも、セキュリティ環境の向上という意味でも、とっても大事だということをわかって欲しいです。ただ「お金持ちになりたい」という欲望を叶えるために稼ぐことにこだわると思わないでください。

 

[*1] SWASH Webサイト http://swashweb.sakura.ne.jp/

 

[*2]風俗求人情報サイト・モモコちゃんねるのSWASH連載中コラム http://momoco.ch/colum/swash/

 

[*3]すすきのファッションヘルス優良店組合・札幌防犯健全協力会主催、第七回講習会(2013年2月20日)に招聘頂いた。http://www.sap-kenzen.com/top.html

 

[*4] 第11回アジア太平洋地域国際エイズ会議 セックスワーカー会議報告会 文部科学省科学研究費補助 性産業で働く人びとの安全と人権を守る対策の研究 共同研究発表(2014年2月22日、京都) http://swashweb.sakura.ne.jp/node/82

 

 

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vol.233 特集:公正な社会を切り開く

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