2013年下半期からじわじわと重版を重ねてきた、松本ハウス『統合失調症がやってきた』(イースト・プレス)と、末井昭『自殺』(朝日出版社)。世間では語ることがタブーになっている「統合失調症」と「自殺」を、それぞれの半生と共に綴っている。統合失調症や自殺を世間話として当たり前のように語れる社会へ、三人の思いがつまったトークショーの模様をお送りする。(構成/山本菜々子)
場当たり的な犯行
キック どうも、松本ハウスです。よろしくお願いします。
加賀谷 か・が・やでーす!!! よろしくお願いします。
末井 末井です。どうぞよろしくお願いします。
キック 今日は、ぼくたちの本『統合失調症がやってきた』と、末井さんの『自殺』のトークライブということで、沢山のお客さんに集まっていただきました。ありがとうございます。
お互いの本を読んできたので、まずは感想を言いましょうか。末井さんは、白夜書房を立ち上げた「伝説の編集者」として有名です。『自殺』は、末井さんがその名のとおり「自殺」について考えたり、インタビューしたものをまとめたものです。加賀谷さん、末井さんの『自殺』はどうでしたか。
加賀谷 面白かったです。樹海について書いていた章を読むと、自殺って悩んだ末の最後の選択なんだなぁと感じました。
末井 樹海に来る人は迷っている人が多いんです。案内してくれた人が話してくれたんですけど、8割か9割ぐらいは迷っているって。死ぬかどうしようか迷いながら樹海の中を歩いていて、疲れてしまったり、決断した人が死んでしまうんです。
加賀谷 ぼくもテレビでワーッとやっていたころに、何回か自殺未遂がありました。ぼくの場合は衝動的なんですよ。
キック 自分で感情のコントロールができていないんだよね。
加賀谷 場当たり的な犯行ですね。
キック 犯行なんだ(笑)。
加賀谷 ライブの前に自殺未遂することもありました。もう死んじゃえーって思って、睡眠薬を200錠くらいわーって飲んで。普通は大量に飲むと吐いてしまうと言いますが、ぼくは大食いなので、吐くこともせずにそのまま昏倒して寝てしまったんです。
次の日の朝、普通に目がさめて、今日はキックさんとネタ合わせの日だと思って、出かけて、ネタ合わせをして、帰る時になってものすごい頭痛がするんですよ。経験したことのない痛みでした。「危ない、死んじゃう、死んじゃう」と思って家に帰って水をガブガブ飲んだりとか。
キック そもそも、死のうと思って薬飲んでるんでしょ。
会場 (笑)
キック 加賀谷の場合、感情のコントロールが出来ずにやっている面があるんですが、樹海に行って死ぬかどうか迷っている人と似ている部分がありますね。
末井 樹海に行く人はもう少し計画的かもしれませんけど。
良い人じゃないですよ、ぼくは
キック ぼくが『自殺』を読んでいて感じたのは、末井さんのやさしさというか、何でも受け入れるじゃないですか。そこはどこから来ているのかなぁと思いました。
加賀谷 ぼくも、同じことを思って、もしかしたら末井さんと共通点があるんじゃないかなぁって。ぼくは、いい人ぶっちゃうんですよ。周りの人にいい人だと思われたらすいすい行くじゃないですか。末井さんも同じこと思っているんじゃないかと。
末井 優柔不断というのはありますね。なんでも断れないとか、怒ったりできないとか。それも、人からよく思われたいと思ってるからなんでしょうけど。
加賀谷 よく思われたいですね、ぼくも。
末井 自分を好きになってくれる人を、ガッカリさせたくないって思いますね。
加賀谷 わかります。
キック 全部わかってるじゃないか(笑)。
末井 そういうのが固まって「いい人」になっちゃうけど、本当はいい人じゃないですよ、ぼくは。
加賀谷 そういう決め台詞もぼくと一緒です。
会場 (笑)
末井 『自殺』を書いたおかげで、いい人に思われているんじゃないかなという恐怖もあるんですね。もちろんいいところもありますよ。そんなに悪い人でもないけど、打算的なところや、いやらしいところや、汚いところもありますから。過剰にいい人だと思われるのは恐いです。
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