2022.08.22
2022年9月28日(水)開催
新自由主義のどこがダメなのか?――W・ブラウンの近著を読む
河野真太郎 ホスト:橋本努
- 開催日時
- 2022年9月28日(水)20:00~21:30
- 講師
- 河野真太郎
- ホスト
- 橋本努
- 場所
- Zoom【後日、アーカイブでの視聴も可能です】
- 料金
- 1500円(税込)
対象書籍
この20年間、新自由主義は、何をもたらしてきたのでしょうか?
振り返ると新自由主義は、1980年代に、米国のレーガン政権、英国のサッチャー政権、日本の中曽根政権における共通の政策指針(とくに規制緩和政策)として注目されました。
その後日本では、小泉政権(2001~2006年)において、新自由主義の政策がさらに推進されます。しかしその一方で、批判も噴出しました。民主党が政権を担った2009年から2012年にかけては、「反新自由主義」の政治を行うだろうと期待されました。ところが結局、民主党政権においても、新自由主義政策の多くが継続されます。例えば、民主党政権は、それまでに民営化された郵便局や公共図書館や公共体育館の運営などを、公務員による運営に戻したわけではありませんでした。その意味で新自由主義の社会は、私たちの現実でもあります。
他方で、経済政策については、その後の安倍政権で、ケインズ的な福祉国家政策に回帰しています。財政政策や金融政策の点では、新自由主義の理念は後退し、ケインズ的な考え方に戻りました。こうした複雑な状況のなかで、政治家の一部は、いまでもスローガンとして、新自由主義批判を掲げています。「新自由主義ではいけない」と叫ばれますが、しかしこのスローガンは、どんな意味なのでしょう。やや見えにくくなってきました。
現在、新自由主義の思想は、フェミニズムや批評のレベルで批判されるという、新たな段階に入っています。新自由主義は、保守的なライフスタイルと結びつく点がよくない、という批判です。ウェンディ・ブラウンはその論客の一人で、少し前に翻訳された『いかにして民主主義は失われていくのか』(みすず書房、2017年)は、新自由主義批判の書として話題を呼びました。
そして今年、ブラウンの新たな翻訳書『新自由主義の廃墟で――真実の終わりと民主主義の未来』(人文書院)が刊行されました。本書でブラウンは、ハイエクを深く読み込むかたちで、新しい新自由主義批判を展開しています。他の批判とは一線を画した、すぐれた内容です。シノドス・トークラウンジでは、本書の訳者である河野真太郎先生をお招きして、新自由主義批判の新たな可能性を、語り合いたいと思います。いったい、新自由主義の何が問題なのか。本質に迫ります。皆さま、どうぞよろしくご参加ください。
プロフィール
河野真太郎
イギリス文学・文化、文化研究。専修大学国際コミュニケーション学部教授。著書に『戦う姫、働く少女』(堀之内出版、2017年)、『新しい声を聞くぼくたち』(講談社、2022年)など。訳書にウェンディ・ブラウン『新自由主義の廃墟で──真実の終わりと民主主義の未来』(人文書院、2022年)、アンジェラ・マクロビー『フェミニズムとレジリエンスの政治──ジェンダー、メディア、そして福祉の終焉』(田中東子との共訳、青土社、2022年)など。