誰が保育していくのか?――フランスの現金給付と保育ママから考える

多彩な子育て支援

 

フランスは様々な子育て支援が展開されていることで有名な国である。日本でも、安倍政権の新・三本の矢の一本に「夢をつむぐ子育て支援」が組み込まれ、今年度から子ども・子育て支援新制度が始まっている。今後の働きながら子どもを育てられる社会の実現に向けて、多彩な子育て支援の先輩であるフランスから学べることは少なからずあるだろう。

 

はじめにフランスで実施されている現金給付と保育サービスについて確認しておこう。日本の現金給付は児童手当と児童扶養手当が該当し、育児休業給付金を含めたとしても3種類しかない。対してフランスでは、様々な現金給付がおこなれている。

 

たとえば、第2子以降にすべての子どものいる家族に支給される「家族手当」や、第3子以降に家族手当よりも増額される「家族補足手当」、他国の育児休業給付にあたる「子ども教育共有給付」、保育ママやベビーシッターを雇用した親に対して支給される「保育方法自由選択補足手当」、ひとり親の家族や親の援助がない子どもを扶養する家族に支給される「家族援助手当」、障害のある子どもを扶養する家族に支給される「障害児教育手当」などがある。

 

保育サービスについても多様なサービスが実施されており、3歳未満の子どもをもつ親はクレシュと呼ばれる保育所や保育ママ、ベビーシッターなどを利用する。また、保育所のなかには10人未満の子どもを預かるミクロ保育所もある。近年では、一時的な保育や短時間の保育など多様な保育ニーズに沿った多機能施設が保育所の主流である。

 

3歳以降の子どもは日本の幼稚園にあたる保育学校にほぼ100%通学する。日本の幼稚園が1日4時間の教育時間を標準とするのに対し、フランスでは8時30分から16時30分まで、途中で2時間の昼休みをはさんで教育をおこなうのが一般的である。近年では2歳から保育学校に入学する子どもも増えている。

 

 

誰が保育をしているのか?

 

現金給付と保育サービスの両面から発展するフランスは、ノルウェーやスウェーデンとならんでワーク・ライフ・バランスの「パイオニア」とも呼ばれる(※1)。ただし、ノルウェーやスウェーデンほど整備が進んでいるわけではない。

 

(※1)Morgan, Kimberly J. (2012) “Promoting Social Investment through Work-Family Policies: Which Nations Do It and Why?,” Morel, Natalie, Palier, Bruno, and Palme, Joakim (eds.) Towards a Social Investment Welfare State?: Ideas, Policies and Challenges, Policy Press, pp.153-179.

 

モーガンによれば、フランスは3歳から6歳までの子育て支援は「パイオニア」であった。早い時期から保育学校の整備が進んでいたためだ。その一方で、3歳未満の早期教育や質の高い子育て支援の提供は不十分であり、ノルウェーやスウェーデンとは異なっていた。

 

実際、フランスで誰が保育しているのかを示したデータがある(※2)。2013年のアンケートによれば、3歳未満の子どもの61%はどちらか片方の親に保育されている。

 

(※2)Villaume, Sophie and Legendre, Émilie (2014) “Modes de garde et d’accueil des jeunes enfants en 2013,” Études et résultats, no.896.

 

親以外の保育方法を利用した場合、19%の子どもは後述する認定保育ママを利用し、保育所などの保育施設を利用するのは13%の子どもにとどまった。2002年時点で子どもの70%がどちらか片方の親に保育されていることを考えれば、徐々に保育所など他の保育サービスの利用が進んでいるものの、フランスでは未だに親が保育をしている。

 

 

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図1 3歳未満の子どもの主な保育方法(平日8時から19時まで)
出典:Villaume and Legendre (2014) より筆者作成。

 

 

ちなみに、平成25年国民生活基礎調査では母親の仕事の有無からみた2013年の日本における保育の状況を確認できる。母親が仕事をしている場合、子どもが0歳では父母が70.9%、認可保育所が24.5%、祖父母が15.5%、認可外保育施設が3.2%となっている。子どもが1歳になると認可保育所が61.0%、父母が34.0%、祖父母が13.3%、認可外保育施設が8.1%と認可保育所の利用が父母の保育を逆転する。2歳では、認可保育所が67.5%、父母が30.3%、祖父母が13.7%、認可外保育施設が8.2%となっている。

 

一方、母親が仕事をしていない場合、子どもが0歳では父母が89.1%、祖父母が9.7%、認可保育所が2.6%、認可外保育施設が0.4%となっている。子どもが1歳でも父親が85.6%、祖父母が9.5%、認可保育所が6.3%、認可外保育施設が0.8%とほとんど変化がない。2歳では、父母が84.5%、祖父母が7.8%、認可保育所が7.5%、認可外保育施設が1.1%となっている。

 

 

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図2 母の仕事の有無・末子の乳幼児の年齢別にみた日中の保育の状況の構成割合(複数回答)
出典:厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況」。

 

 

日本の場合、複数回答が可能であることや母親の仕事の有無でわけているため、フランスのアンケートと比較することは難しい。それでも、日本で母親が仕事をしていても父母による保育が比較的高いことを含めて、日本でもフランスでも親が保育する比率の高さは指摘できるだろう。

 

フランスで親が保育する比率が高い背景には、手厚い現金給付がある。育児休業給付にあたる「子ども教育共有給付」は、1990年代には「育児親手当」という別の制度であった。育児親手当は1990年代前半まで第3子以降の子どもをもつ家族にしか適用されなかった。それが1994年の改革で受給資格を第3子から第2子へと拡大することになった。その結果生じたのは、女性の労働市場からの退出であった。

 

フランス国立統計経済研究所の調査によれば、3歳未満の子どもを2人以上もつ女性が労働市場で活動する割合は1994年から1997年までの間に69%から53%へと減少した(※3)。3歳未満の子どもを1人や3人以上もつ場合には変化がなかったため、この減少の原因は育児親手当の拡大にあった。

 

(※3)Afsa, Cédric (1998) “L’allocation parentale d’éducation: entre politique familiale et politique pour l’emploi,” INSEE Première, No. 569, p.2.

 

この現金給付で女性が労働市場から退出することを避けるため、2004年の改革で第1子へと拡大する際には受給期間を6ヶ月とした。第2子以上は最長で3年取得可能であった期間を第1子では早期に職場復帰できるよう短縮したのであった。【次ページにつづく】

 

 

 

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