セクシュアル・マイノリティ/LGBT基礎知識編

Q1 セクシュアル・マイノリティとはどのような人たちのことを指すのですか?

 

セクシュアル・マイノリティとは、現在の社会のなかで「これが普通」「こうあるべき」だと思われている「性のあり方」に当てはまらない人たちのことを、まとめて指す総称のことです。

 

「性のあり方」には、いろいろな側面があります。生物学的にオスであるかメスであるか(=セックス)、という問いにかぎらず、社会的にどのような性役割(=ジェンダー)を持って生きているのか、あるいは誰とどのような恋愛や性愛の関係を持つのか/持たないのか(=セクシュアリティ)、ということなどの「さまざまな要素」が複雑に絡んでいます。

 

これらの要素は、個人の意思では変えることができない(「好きでやっているんでしょ」とは言えないような)部分を多く含んでいます。「性のあり方」は個人の尊厳に根本的に関わってくる問題として、個々人のあり方に目を向ける姿勢が大切です。

 

わたしたちの社会には「性のあり方」をめぐる、さまざまな「これが普通」「こうあるべき」といった規範があります。そのなかでも、もっとも強烈なものは、「この社会には男と女しかいない(そして、それは身体の性別で生まれつき定められている)」ということと、「人は誰しも異性を好きになるものだ」というものです。これらの規範からはずれている人たちを、狭義でセクシュアル・マイノリティと呼びます。

 

「性のあり方」の規範は、客観的な事実だから支持されているというよりは、実際には「だってそういうものでしょ」という多数派の人たちの、「これまでの社会のなかで刷り込まれてきた無意識」によって支持されています。それによって、規範に乗れない人たちは「良くない」「そうあるべきでない」「自然でない」というレッテルを貼り付けられるという憂き目にあっています。

 

実際には、ある人にとって何が「自然」であるかは、もう少し丁寧に語られる必要があります。半世紀前には、白人と黒人の結婚は「不自然」とされていました。また、自然界では1500種を超える動物において、同性間の性行為が認められています。オスどうしで生涯をともにするペンギンのカップルや、ボノボの性行為の半数以上がメスどうしで行われていることを、人間の同性愛と関連づけて話すのは厳密には正確ではないかもしれません。ですが、「自然はつねに多様性をはらんでいる」というのは、おそらく真理ではないでしょうか。

 

 

Q2 どのようなカテゴリーがあるのですか?

 

よく使われる主なカテゴリーに、LGBTというものがあります。それぞれ、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)の頭文字をとって並べた言葉です。カタカナでちょっと馴染みにくいかもしれませんが、ひとつずつ詳しく見てみましょう。

 

 

L:レズビアン(女性を恋愛や性愛の対象とする女性)

G:ゲイ(男性を恋愛や性愛の対象とする男性)

B:バイセクシュアル(男女どちらにも恋愛や性愛の対象が向く人。あるいは、同性か異性かなどという問いそのものを拒否する人)

 

 

LGBTと並んでいるアルファベットの最初の3文字は、「恋愛や性愛の対象とする相手の性別」(性的指向)に関するマイノリティを表しています。

 

わたしたちの社会では「異性愛」(ヘテロセクシュアル)が前提として語られることが多く、またさまざまな社会的な制度も「異性愛」だけを想定して構築されていることが大半です。しかし実際には、同性に魅かれたり、男女どちらにも(あるいは性別にこだわりなく)恋愛をする人々も、この社会で一緒に暮らしています。

 

すでにみなさんがご存じのように、「異性愛」の人々の恋愛の仕方はさまざまです。年上好きや、ツンデレ屋がいれば、束縛するタイプも、セックスが好きな人もいます。LGBの人たちも(異性愛の人たちがそうであるように!)、恋愛観や好きなタイプ、心地よいつき合い方、セックスに対する考え方は一人ひとり違います。

 

その意味では「LGB」や「異性愛」というカテゴリーで括ってはみたものの、一人ひとりが個別の性を生きているという視点が、より正確かもしれません。また、Aセクシュアルといって、恋愛や性愛への関心が無かったり、関心が希薄であったりする人々を指す言葉もあります。

 

 

T:トランスジェンダー(出生時に応じて割り振られたジェンダーと、自らのアイデンティティが一致しない人の総称。いわゆる身体の性別と心の性別が一致せず違和感を持つこと。あるいは、既存のジェンダーのあり方に疑問を付し、それを越えようとする人。

 

 

LGBTという単語の、最後の1文字は「自分の性別をどう捉えているか」に関するマイノリティを表しています。

 

「身体の性別と心の性別が一致しない」というと、性同一性障害という言葉が思い浮かんだ方もいるかもしれません。性同一性障害は、トランスジェンダーのなかでも、「医療を必要とする人たち」を指した医学的な概念になります。外見上の性別を変えるために、性ホルモンや外科手術などの医学の力を借りることがしばしばあるために、このような疾患名がついていますが、実際にはすべての人が医療を必要としているわけではなく、さらにはトランスジェンダーが疾患であるかどうかについては、国際的な議論も起きています。

 

 

Q3 セクシュアル・マイノリティの方はどれくらいいるのですか?

 

セクシュアル・マイノリティは、人種におけるマイノリティなどと異なり、「見た目では分からない」ことが多いため、アンケート調査によって統計が取られています。

 

「同性に魅かれたことがあるか?」という質問に対しては、世界中(日本を含む)でさまざまな調査がなされていますが、だいたい人口の3~5%の人が「ある」と回答をしています。人口の3~5%というと、20~30人に1人の割合が「同性に魅かれたことがある」経験をしていることになります。これはつまり、学校のクラスのなかに1~2人はLGBの当事者がいるくらいの割合です。「左利き」の人が存在する割合と同じ、という表現がなされることもあります。

 

一方で、「自分のことをトランスジェンダーだと思うか?」という質問に対しては、いろいろな数字が出ています。トランスジェンダーのうち医療機関を受診して性同一性障害の診断を得る人の割合は数千人~数万人に1人と言われていますが、医療機関を受診する人たちはトランスジェンダーの一部にすぎないため、潜在的には性別への違和感を覚えている人たちはもっとたくさんいることが予想されます。

 

2012年の国連開発計画のレポートでは、トランスジェンダーの存在する割合は300人に1人と指摘されています(タイ、アメリカで個別に取った「自分のことをトランスジェンダーだと思うか」という調査結果に由来するもの)。日本でも、トランスジェンダーの当事者が、「自分の学校にも、もう1人当事者がいた」という語りをすることは頻繁にあるため、「数百人に1人」くらいが妥当な数字だと思われます。【次ページにつづく】

 

 

 

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