生命はゴロゴロいるのか、いるとしてもマレな存在なのか――宇宙から生命の起源を考える

宇宙には生命がいるの? 生命ってどうやってできたの? そんな疑問をもったことが誰にでもあるでしょう。今回の「高校生のための教養入門」は、宇宙から生命の起源を考える、「アストロバイオロジー」についてお話を伺いました。(聞き手・構成/山本菜々子)

 

 

アストロバイオロジーとはなにか

 

―― 小林先生のご専門はなんですか

 

生命の起源を中心としたアストロバイオロジーです。大学では、理工学部の化学生命系学科で分析化学の分野を担当しています。

 

 

―― アストロバイオロジーというのは、どのような学問なのでしょうか。直訳すると「宇宙生命学」ですよね。宇宙生命を探す学問なのですか?

 

「アストロバイオロジー」は1998年にできた新しい言葉です。NASAがつくった造語で、似たような分野は、1960年ごろからありました。「圏外生物学(exobiology)」といいます。当時は、宇宙開発がはじまった時期でした。宇宙開発をしていく中で、地球の生物を宇宙にもっていったり、宇宙から生命を持ち込んでしまう可能性がありますよね。宇宙と生命の関係をしっかり勉強しないと困ったことになるという危機感からはじまった学問でした。

 

1996年にNASAのグループが火星から飛んできた石の中に、生命の痕跡があったと発表しました。それをきっかけに、宇宙と生命の関係が注目されるようになります。NASAとしても深く研究するために、新しい看板が欲しい。それで「アストロバイオロジー」という言葉ができました。「圏外生物学」と研究のテーマ自体は一緒です。

 

アストロバイオロジーは、簡単に言うと、生命はどのようにして誕生し進化してきたのか、生命とは何か、生命の将来はどうなるのか、に応える学問です。

 

 

―― 宇宙の生命についてやると思っていたのですが、地球生命の起源までやるのはなぜですか。

 

大きく考えれば、地球とはあくまでも宇宙の一部です。「生物学」は宇宙規模でみると「地球生物学」なんです。ですから、生物学を一般化した場合に、地球の生物もその一つだし、仮に火星人がいても生物の一つです。地球に関わらず生物のことを考えるのが、アストロバイオロジーです。

 

生命は地球以外にもいるのだろうか。ゴロゴロいるのか。いるとしてもマレな存在なのか。ゴロゴロいるなら、生命は簡単にできる。地球だけが幸運に恵まれて生物がいるのであれば、生命ができるのはマレなことになります。

 

実は、科学者の間でもこの問題は意見が分かれています。天文学者は、「ゴロゴロいる」と言う人が多いし、地球の生物学者は「こんな素晴らしいものそんな簡単にできるものか」と思っていると。私は、天文学者の方に立ち、ゴロゴロいるのではないかと思っています。

 

 

「負のエントロピーを食べるもの」

 

―― 火星人の話が出てきましたが、火星の生命は、地球の生命とは違うしくみである可能性が高いですよね。その場合、なにをもって「生命」と認めるのでしょうか。

 

生命の定義は人によっていろいろと違います。ここでは、シュレーディンガーの定義を考えてしましょう。

 

 

―― 「シュレーディンガーの猫」というのを聞いたことがあります。

 

そのシュレーディンガーです。彼は、『生命とはなにか』という本の中で、生命とは「負のエントロピーを食べるものである」と言っています。

 

 

―― 「負のエントロピーを食べる」? うーん。難しい表現です。

 

かみ砕いて言えば、モノはそのままだと壊れていきます。ですが、生命は周りからいろんなものを集めて体を作っていきますよね。それが「負のエントロピー」ということです。

 

地球の生命の場合、タンパク質と核酸をつかって、それを袋の中に詰め込んでいます。袋は脂質でできています。これらがうまく働くと生命になります。

 

しかし、これはあくまでも地球限定の話です。地球という枠をはずしたら、また違った生命の形がある可能性があります。

 

タンパク質や核酸を、機能で置き換えてみましょう。タンパク質は、触媒作用をしていて、化学反応によって自分の体をつくったりエネルギーを作り出したりします。核酸は自分と同じコピーをつくり、増えていきます。ですから、代謝しながら増えていき、かつ袋に入っているようなものが生命だと言えます。

 

 

―― 袋は大事なんですか?

 

SF小説などでよく、海全体が一つの生命であるといった話がありますよね。まぁ、でもそこまで行くと、無限の可能性を考えなければいけません。ですから、中身が生命で外は生命でないという仕切りが必要です。

 

 

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