どうして妻は不機嫌なんだ?――産後に冷え込む夫婦の愛情

出産後の女性に訪れる3つの危機

 

―― やっぱり男の人は出産を経験できないので、出産後の妻の気持ちがなかなかわからないんだと思うんですよね。だから「産後クライシス」が起きちゃうんじゃないのかな、と。

 

出産は女性の生き方を大きく変えるイベントです。この本では産後に身体的危機、精神的危機、社会的危機が訪れると書きました。

 

身体的危機ですと、とにかく陣痛はひたすら痛くてたまりませんし、しかも生み終わってもずーっと痛いんですね。体力もなかなか回復しなくて、私は出産後に普段なら20分程度で行ける1キロほどの道のりを1時間以上かけてゼエゼエ言いながら歩きました。母乳が詰まると胸は腫れるし、乳首も痛い。朝から晩まで赤ちゃんに手をかけなくてはいけないのでひたすら体力が削がれます。

 

精神的にも不安になります。ちゃんと育児ができるか不安になりますし、泣いている赤ちゃんがどうして欲しいと思っているのかわからない。私は辛い物が大好きなのですが、辛い物を食べると母乳が不味くなるのか、赤ちゃんがおっぱいを飲んでくれない。すぐにペッと吐きだされてしまう。自分の時間なんてとうてい持てませんから、すべての時間を赤ちゃんにあわせて過ごさなくてはいけません。

 

そして、いつになったら仕事に戻れるんだろうという社会的な不安もあります。育休が終わって仕事ちゃんと戻れるのか。保育園に入ることはできるのか、子育てをしながら働くことはできるのだろうかという不安。しかもいまは少子化ですから、同じくらいの赤ちゃんを育てている方が近所にいないので、相談することもなかなかできない。友達に子どもがいなければ、話題もすれ違って友達とも疎遠になってしまいます。

 

そんなたくさんの不安の中で、夫がほろ酔いで上機嫌に帰ってきたら……。たいしたことじゃないとお思いなのでしょうが、いろいろなものが積み重なっている妻の怒りが爆発してしまうのも仕方ないと思います。妻の怒りが爆発しなくても、夫からしたら、なぜかわからないけど不機嫌な妻がいる家には帰りたくなくなってしまって、つい仕事帰りに一杯飲みに行ってしまう。これってお互いにとっても不幸なことですよね。

 

お聞きしたいのですが、家事ってなんだと思いますか?

 

 

―― えっ、家族が暮らす空間を整える事、でしょうか……?

 

それって家事を「作業」だと考えているということですよね? でも家事ってそういうことじゃないと思うんです。「家族」の「事」で「家事」だと思うんですね。家族という営みの一つが「家事」なのではないでしょうか。

 

長時間労働にも種類があると思うんですけど、時間管理ができないでだらだらと会社にいるのはやめたほうがいいと思います。うちの職場でこんなこというと怒られちゃいますけど(笑)。でも家事や育児が「家族事」だったら、家族と一緒にいる時間も計算して、時間を管理すると思うんですよね。

 

この本で取り上げている例の多くは、家事に関する場面についてです。でも、家事って裾野だと思うんですね。取材をしてわかったのは本当に問題なのは家事ではなくて、夫と妻が、しっかりお互いのことを話し合えるかどうかなんですよ。その最初の試練が産後なんです。

 

不景気の中で、グローバル化も進んで、男性もとてもたいへんです。他の国に比べて実労働時間が非常に長くて、家族との時間がなかなか持てない。重要なプロジェクトで徹夜が続き、くたくたになって帰宅しているので赤ちゃんの面倒をみる余裕なんてない。夜に帰って子どもと遊んでいたら、「寝かしつける時間に興奮させないでよ」と妻に嫌な顔をされることもある。

 

でも「いまは大事な仕事があるからどうしても子どもの面倒がみられない」とか「いま育児にたいへんだから、少し早めに帰ってきてほしい」とか、夫婦で自分たちの状況を話し合って、どんなことを考えているのか伝えて、ちゃんと二人が納得できれば、きっと夫婦仲も悪化しないと思うんですね。【次ページにつづく】

 

 

photo

 

 

シノドスの運営について

 

シノドスは日本の言論をよりよくすることを目指し、共感してくださるみなさまのご支援で運営されています。コンテンツをより充実させるために、みなさまのご協力が必要です。ぜひシノドスのサポーターをご検討ください。

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

98_main_pc (1)

 

 セミナー参加者募集中!「対話/ダイアローグから見た精神医学」植村太郎(12月16日16時~18時)

 

 

無題

 

vol.233 公正な社会を切り開く 

 

・ジェームズ・ミニー氏、鈴木啓美氏インタビュー「もっと楽しいお買い物を目指して――フェアトレードの魅力」

・【「民主」と「自由」――リベラルの再生へ向けて――】古川江里子「大正デモクラシーと吉野作造 ―大日本帝国憲法下での民主主義的政治の試みが現代に問うもの」

・【知の巨人たち】重田園江「ミシェル・フーコー――なぜ『絶望系』なのに読んでしまうのか」

・阪井裕一郎「学びなおしの5冊 <家族>」

 

vol.232 芸術にいざなう 

 

・吉澤弥生氏インタビュー「人をつなぐ芸術――その社会的評価を再考する」

・【現代演劇 Q&A】長瀬千雅(解説)「時代を捕まえるダイナミクス――現代演劇事始め」

・【今月のポジ出し!】橋本努「タックス・ヘイブン改革 香港やシンガポールにも圧力を」

・増田穂「『知見』が有効活用されるために」

 

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.233 特集:公正な社会を切り開く

・ジェームズ・ミニー氏、鈴木啓美氏インタビュー「もっと楽しいお買い物を目指して――フェアトレードの魅力」

・【「民主」と「自由」――リベラルの再生へ向けて――】古川江里子「大正デモクラシーと吉野作造 ―大日本帝国憲法下での民主主義的政治の試みが現代に問うもの」

・【知の巨人たち】重田園江「ミシェル・フーコー――なぜ『絶望系』なのに読んでしまうのか」

・阪井裕一郎「学びなおしの5冊 <家族>」