「LGBT当事者の声をもっと聞きたい」――国会議員へのLGBT施策インタビュー

牧島かれん衆院議員は「性的マイノリティの課題を考える会」の事務局として、これまで中心的な役割を果たしてきました。インタビューを通して見えてきたことは牧島かれん衆院議員がLGBTなどの性的マイノリティ当事者たちの抱えている課題を理解するために、当事者一人ひとりの声と向き合っていることでした。そして、LGBTのことを周囲の議員たちに理解をしてもらえるように働きかけている姿でした。仲間を増やしていくことが、政治を動かすことに繋がっていくことに気付かされました。(明智カイト)

 

 

「性的マイノリティの課題を考える会」設立の経緯

 

明智 ではまず自己紹介をお願いします。

 

牧島 自由民主党所属の衆議院議員(1期)です。当選して1年半が経ちます。議会では、「財務金融委員会」、「議院運営委員会」、「海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会」に所属しています。

 

主に関わっている政策としては「観光」「農業」「モノ作り(伝統工芸品)」「外交(人口問題)」「教育」などがあります。あらゆる領域の政策に関わっていきたいと思っています。

 

明智 牧島議員がLGBTの施策に関わる理由は何ですか?

 

牧島 アメリカ在住中から多くのゲイと身近に接してきました。特にアメリカで経験した9.11のときには、たくさんのLGBTの人たちが同性パートナーや家族を失って苦しんでいました。その姿を見て、家族を失う悲しみはみんな同じだと感じました。

 

日本に帰国した後もLGBTの人たちに関わる機会が多くありました。日本でもLGBTの人たちがいろいろな課題をたくさん抱えていることを知り、解決したいと思いました。政治家としてLGBTの施策に関して「課題放置」したくないと考えています。国会の中では勉強会の事務局として頑張りたいです。

 

明智 「性的マイノリティの課題を考える会」を立ち上げた経緯について教えてください。

 

牧島 「性的マイノリティの課題を考える会」は2013年4月1日に、性的マイノリティが社会において抱えている課題を洗い直し、差別や法的弊害などの問題点について検討を行うために設立された自民党の国会議員有志による勉強会です。

 

「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」より、いじめ対策における性的マイノリティの児童への対応についてなどの要望がありました。その後、法務委員会において高度人材と同性パートナーシップを巡る発言などがありましたが、性的マイノリティへの問題は顕在化しながらも根本的な議論を広げる段階に到達していないのではないか、との認識が持たれました。

 

教育や、雇用、社会保障など多面的な分野で性的マイノリティに対する差別や制度上の問題が存在しているとはいえ、なによりも議員と当事者が胸襟を開いて語り合うことからスタートすべきだと思いました。

 

そして、ふくだ峰之代議士が働きかけてくださった結果、馳浩代議士が会長を、私が事務局を務めることになりました。そして、橋本岳代議士に助言をいただきながら、交流会をはじめることになりました。

 

 

makishima

 

 

人権教育からのアプローチを

 

明智 これまで交流会を4回開かれていますが手応えはありましたか?

 

牧島 「性的マイノリティの課題を考える会」では、議員と当事者とが交流する機会を大切にしていこうというのが基本的な考えです。そのため、交流会を4日間も開催できたのは大きな成果だったと思います。

 

交流会では当事者の生活の様子なども話が聞けました。例えば、レズビアンのカップルに「どっちが家事をするの?」みたいなことを聞いてみたら、「得意なほうがやっている」という返答でした。同性カップルだからこそ平等に家事分担を決めているんだろうな、と勝手な思い込みがありました。

 

勉強会も大切ですが交流会をもっとやっていきたいと思っています。議員と当事者がお互いにコミュニケーションする場として、理解する場として重要です。私たちにとってはLGBTの人たちは生活が見えにくい謎の存在です。見えていないものを政策に繋げるのは難しいのです。交流会でお互いを理解することが政策につながっていくと考えています。議員の意識も少しずつ変わってきているし、輪も広がっていると感じています。

 

明智 勉強会も2回ほど開催されていますね。

 

牧島 はい、いずれも成果があったと思っています。

 

1回目は世界のLGBT施策について勉強しました。特にソチオリンピックにおける反同性愛の動きについては関心を持ちました。東京でオリンピックを開催するときにはLGBTのことをどうすれば良いのか、あるいはウガンダの「反同性愛法」について日本政府はどのような対応をしていけば良いのかなどいろいろなことを考える機会となりました。

 

2回目はLGBTと教育のことについて勉強しました。文部科学省が実施した性同一性障害の児童生徒に関する実態調査のことはいろいろなメディアに取り上げられました。文部科学省でLGBTの施策についても話を進めるためには教育、HIV、自殺対策などいろいろな切り口がありますが、私は人権教育から話を進めたほうが良いと考えています。

 

宝塚大学看護学部教授の日高庸晴先生の報告で、子どものときに性同一性障害と答えた子どもについて追跡調査をすると、同性愛の子どもだった事例がありました。周囲の大人たちが「同性に関心が向く=性同一性障害」ではないかと考えてしまう傾向にあります。同性愛、性同一性障害を含めたセクシュアリティについて、今後併せて知っていないと大人が間違えた線路を引くことになります。総合的な対応が必要だと感じました。

 

また、性同一性障害の児童生徒に関しては、自己判断だけでホルモン注射に手を出してしまう危険性も知りました。医療機関も充実させていきたいです。

 

今後は文部科学省に対しては教職員に対する全国調査をやって欲しいと考えています。

 

明智 LGBTの施策に関心をお持ちでない議員もいらっしゃると思います。

 

牧島 自民党の中には人権問題として、LGBTのいじめ対策や自殺対策を行っていくが、同性婚のことは考えたくないと思っている議員も存在します。同性婚によって伝統的な家族観を壊されるという懸念を持っている人もいます。

 

そのため、まずはLGBTの子どもたちの環境を良くしていくことが目標です。またLGBT当事者の中にもいろいろなニーズや課題があります。そのバランスが難しいと思っています。

 

 

当事者の声を聞きたい

 

明智 今後の取り組みについてどのように考えていますか?

 

牧島 多くの議員にLGBTイシューを知ってもらいたいです。まずは政府の発刊物、例えば白書などにLGBTのことを記載する取り組みをしたいと思っています。そうすることで関心を持ってくれる議員を一人でも増やしていきたい。

 

同性パートナーで生活することについても住居探しや、医療機関での対応のことなどいろいろな課題があります。今後はひとつひとつ課題を解決していくのか、パッケージで法律を作るかといった方針を考えていきたいと思っています。

 

同性愛はまだまだ「趣味の世界」だと思われていて偏見があります。同性愛に関して医学的な証明が必要です。(編集部註:「同性愛は病気ではない」という証明のための発言でしたが、誤解を招く表現でしたので訂正いたします)これからも周囲の議員たちに理解をしてもらえるように働きかけを続けていきます。もっと仲間を増やしていきたいと思います。そして議員だけではなく一般社会においても広く多くの人にわかってもらうようにしていきたいです。

 

明智 LGBT当事者のみなさんに何かメッセージはありますか?

 

牧島 一番最初に開催した交流会のことをブログに書いたら当事者の方からメールを貰いました。

 

メールは「自民党でもLGBTのことやっている国会議員がいるとは思わなかった、自分が一番偏見を嫌ってきたはずなのに、自分自身も偏見を持っていたのかもしれない……」という内容でした。

 

お互いにステレオタイプにならず、自然に交流できるようになりたいと思います。

 

社会の寛容性は大事で、みんなそれぞれ違います。人間社会というのは多様な人々からできています。私のようにLGBTに理解のある国会議員もいますし、いろいろな人たちが政治の世界にいることをみなさんに知って欲しい。

 

声を出したり、顔を出すのは難しいと思いますが、もっとLGBT当事者のみなさんの声を聞きたいです。悩んでいることを、困っていることを話して欲しいです。LGBT当事者のみなさんが生きづらさを感じないですむ社会を作っていきたいです。

 

 

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