特集:進化するロビイング NPO法――グー・チョキ・パーで相手を落とす

ひっそりと、時には大胆に、政治や行政に働きかけ、社会を動かす「ロビイスト」達。

 

今回は、松原明さん(シーズ・市民活動を支える制度をつくる会)、清水康之さん(自殺対策支援センター・ライフリンク)、明智カイトさん(いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン共同代表)、川口有美子さん(日本ALS協会理事、NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会理事)、大西連さん(NPO法人自立支援サポートセンター・もやい)に、ロビイング活動をはじめたきっかけや秘訣を伺った。

 

 

―― 「シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」は1994年にNPO法などの設立を目標に発足したとのことですが、なぜ、NPO法といった制度の設立を目指したのですか。

 

現在は、「NPO」や、「ボランティア」といった言葉がポピュラーに使われるようになり、市民活動も活発に行われています。しかし、当時は「市民活動」というと「反政府運動」のようイメージが強かった時代でした。

 

私は1980年代から国際協力のNGOに携わっており、冷戦後は市民活動の役割が非常に強くなっていくと感じていました。行政や企業だけじゃできないことがどんどん増えていく中で、社会をよくするためには市民の自主的な活動が不可欠だからです。

 

当時の日本にも、福祉活動や、環境団体、国際協力団体といった任意団体がありました。しかし、その多くは、カリスマ的なリーダのもとで、その人の能力に依存し活動しているという状態でした。欧米や他のアジア地域と比べても、組織力も資金も足りない。このままでは、日本の市民活動は発展していかないのではと感じたんです。

 

では、NPOやNGOを強化するためにどうしたらいいのか。大事なのは社会的インパクトを与えることと、道具を用意することです。法律ができることで、話題にもなりますし、制度を利用し活動も拡充させることができますよね。

 

ということで、1994年の設立以来、議員や行政に積極的に働きかけ、1998年には「NPO法」(特定非営利活動促進法)が設立されることになりました。NPOでも会社のように法人格を取得できるようになり、事業や活動の幅が広がることになりました。

 

 

松原さん2

 

 

―― どのような政策提案の方法をとったのでしょうか。

 

法律をつくる時に一番パワフルなのは、「被害者の会」を結成するという方法なんです。どこに問題が起こっているかが誰の目にみても明白である場合、そこに対し立法支援をしようと動くことができます。ですので、NPO法をつくる時も、法人化できずに困っている団体をメンバーにし、「被害者の会」形式でやっていきました。

 

それぞれの分野で困っていて、この法律ができることでどう好転するのか、それをきちんと相手にアピールしていきます。さらに、個人的な利益だけではなく、いかに社会的に利益がでるのかということもデータを使って示していく。また、各政党によって考え方も違うので、その感覚にあわせて、こちらの主義主張もかなり加工します。

 

そして、基本的には国会議員主導の法律作りというのを心がけました。NPO法というのは政府の関与をいかになくすのかという規制緩和の法律だからです。政府に頼るのではなく、議員立法をおこなうプロセスを大事にしました。

 

さらに、関係者へのロビイングもおこないました。議員だけでなく、行政や、自治体、経団連などの関係機関にも幅広く働きかけました。

 

同時に、社会の理解も必要ですので、全国の賛同してくれるようなNPOなどの団体や、それを支える地域の方、マスコミに対しての世論形成をおこないました。そうして、社会的なムーブメントをおこしていきます。

 

 

―― 当時は「新しい立法のモデル」だと話題になったと伺っています。ロビイングは具体的にどのような方をとりましたか。

 

大切にしたのは超党派でやることです。与党、野党関係なく、政党ベースでロビイングをしています。議員立法では、法案の提出の段階で多くの議員の協力が必要ですので、単に過半数の票をとればいいというわけではないんです。また、説得の際は直接会うことを基本にしています。質問状を送ることもありますが、直接会う方が断然効果が高いですね。会って1人1人の議員を説得していきます。

 

 

―― 松原さんはNPO法だけではなく、震災後の寄付税制の成立にも関わられています。このような成果を上げるためには、細やかな説得が必要だとおもうのですが、その際に工夫していることはありますか。

 

自分たちだけでアプローチしないということも鉄則です。政治家と関わることは、貸し借り関係をつくることと一緒です。なにかを借りると、なにかを貸さなければいけません。ですが、必ずしも、貸しを一手に引き受ける必要はないんです。他のNPOが貸し借り関係にあったらそこに協力してもらい、政治家を落としていくという方法があります。

 

僕たちはこれを、グー・チョキ・パー関係と呼んでいます。こちらからなにかをお願いする時は、相手は必ずパーでこっちはグーです。グーがパーにお願いをしにいっても、普通は聞いてくれません。ですが、ここで大事なのはチョキの人を見つけ出すことなんです。うちの団体はグーなので、チョキの人にお願いする。そして、チョキの人からパーの人にお願いしてもらうんです。

 

たとえば、NPO法のロビイングをする過程で、この議員さんがキーマンだということがわかってきます。正面切ってお願いしても聞いてもらえない場合は、その議員の地元NPOにお願いして、「NPO法をつくるためにこの議員さんが重要なんです」とかけあいます。そうすると、NPOの関係者の中に、議員の知り合いであったり、後援会に入っている人などが意外といたりするんです。その方から「一本電話を入れましょうか」となると、議員さんの対応も全然違いますよね。このように、協力者をうまくつくりながら、ロビー活動をしています。

 

 

松原さん

 

 

―― 1994年から活動をされているとなると、政権交代など、政局も大きく動いたとおもいます。その影響は受けましたか。

 

もろに政局の影響を受けました。毎回政局に振り回されています。その辺は忍耐力の問題で、心がけているのは「風林火山」ですね(笑)。政局をみて今動くべきでないとおもったらもう動かない。動くべき時が来たら全力で動く。それに徹しています。

 

ロビイングは5年~10年を1区分としてかなり中長期のスパンでやっています。あせらずに着実にやっていくことが成功のカギですね。

 

 

―― 現在、松原さんが動かれていることはありますか。

 

NPO法の抜本改革をしたいと考えています。今はまだ、直接金融と間接金融のしくみが弱いので、資金面の制度を充実させていきたいです。それに関して、NPO法第三次改正を提案しており、選挙が終わった後に超党派の議員連盟で、議論をしてもらうという根回しを進めています。

 

国会でNPO法をあつかうのは内閣委員会ですが、そこだけに働きかけるのではなく、各党にNPOの担当部署をつくってもらうことが重要です。選挙の時期なので大きな動きはしませんが、選挙後からは政党ごとにNPOの担当議員を確保し、積極的にロビイングをしていく予定ですね。

 

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ひっそりと、時には大胆に

「特集!進化するロビイング」松原明、清水康之、明智カイト、川口有美子、大西連

末近浩太「『シリア内戦入門』――シリア『内戦』の見取り図」

大野更紗「さらさら。」

片山杜秀×小菅信子「『終戦のエンペラー』――勝者と敗者の壁をこえるために」

 

 

 

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