寝坊、寝不足、二度寝……あなたの睡眠の悩みに答えます!

どうして毎日眠たいの? どうして夜は眠れないの? 私達と切っても切り離せない睡眠。最先端の研究からその秘密にせまります。TBSラジオ 荻上チキSession-22 「寝坊、寝不足、二度寝……あなたの睡眠の悩みに答えます!」より抄録。

 

 

「気合い」だけじゃどうにもならない

 

荻上 今夜のゲストは、江戸川大学社会学部人間心理学科教授の福田一彦さんです。よろしくお願い致します。

 

福田 よろしくお願いします。

 

荻上 福田さんは日本睡眠学会の理事も務めておられると伺いました。福田さん自身はよく眠れますか?

 

福田 人に早寝早起きしろと言っている手前、なるべく早寝早起きして健全な眠りを心がけています。

 

荻上 身をもって研究成果を実感しているんですね。睡眠の研究と言ってもテーマは人によって随分違うのでしょうか。

 

福田 そうですね。私は出身が心理学なので、睡眠障害のような病気ではなく、子供の眠りの発達を中心に現在は研究しています。今取り組んでいるのは保育園児の昼寝の問題です。保育園では日課として昼寝の時間がありますが、幼児期は昼寝が段々と少なくなっていく時期なんです。実際、昼寝の為に夜寝る時間が遅くなって、日中の子供の状態に悪影響を及ぼしています。そのような研究を通して、社会を変えていこうと思っています。

 

荻上 政治にも関わってきますね。「睡眠基本法」とか作ってほしいですね。

 

福田 実際に「睡眠」は一般の方からの誤解が非常に多い分野です。教育の中に睡眠の知識を与えられるようなものを入れておくなど、睡眠に関する知識を得る機会はもっと与えられるべきだと思います。たとえば、睡眠というとどうしても「気合い」と言われたりとかですね……。

 

荻上 聞きますね、「気合い」。

 

福田 実は眠りというのは脳の中にある生物時計でコントロールされているので、意志だけじゃどうにもならない所があります。眠りの基本的なメカニズムを知った上で考えていただきたいですね。

 

荻上 事前に、番組スタッフが新橋でインタビューを行ったのですが、お酒飲んで失敗という方も多かった。お酒と睡眠との関係はいかがですか。

 

福田 アルコールには催眠作用といって眠気を催す作用があります。ですから飲んでいる間に居眠りしてしまう事もあります。アルコール自体は実は比較的早く分解されてしまうので、暫くすると急に蘇る方いますよね。

 

荻上 いますね(笑)。

 

福田 もう一つ利尿作用もあるので、眠りを促す作用もありますけれども、途中でおしっこをしたくなって当然目が覚めます。そのため全体としては睡眠の内容を悪くしてしまう事になりますので睡眠薬代わりに使うのは絶対に良くありません。

 

 

羊が一匹、羊が二匹……

 

荻上 こんな質問メールも来ています。「歳のせいか最近寝付きが悪くなって困っている40代のおっさんであります。以前は眠れないと思った時には社民党の今後など不毛なことを考えれば2~3分で眠る事が出来ましたが、最近は民主党の議席回復の方法など相当不毛な事を考えているんですが中々寝付けません。頭の中で何を考えればよく眠れるのでしょうか」。確かに、よく羊を数えたりしますよね。

 

福田 考えている内は眠れないと思うんですよね。

 

荻上 ははは、そうですよね。

 

福田 羊を数えるという方法は世界中で行われています。そこで実際にイギリスの研究者が、羊を数えると眠れるか実験をされました。

 

羊を数える事と比較したのは、綺麗なビーチや滝を眺めながらなど、リラックスしている所を想像する場合です。そうしたら綺麗な景色の場所で横になっている姿を想像した方がリラックスして眠れ、羊は全然だめだったという結果になりました。

 

では何故世界中で行われているかというと、恐らく羊飼いの逸話が理由です。昔は羊一頭ずつに税金が掛けられていたので、一頭でも逃げると大変な騒ぎになりました。ですからちゃんと檻の中に戻ったかどうかを数えるのですが、しかし単調な作業なのでその間に羊飼いが寝てしまったという話。勿論、実際に眠る際には役に立たない(笑)。

 

荻上 それも実証されているんですね。ちなみに、街のインタビューでは、「金縛り」によくあうという方もいらっしゃいました。これも睡眠障害なんですか?

 

福田 先ほど研究の紹介で発達の話をしましたけど、それとは別に金縛りの研究もやっています。よく心霊現象なんて言われますが、これはいわゆる夢を見る睡眠であるレム睡眠時に起こる現象で、夢と非常によく似ています。但し夢と違うのは、本人が起きていると思ってしまうところ。そのくらいはっきりと色んな物が見える。ただ実は、金縛りの最中に見えている部屋の様子などは全部、夢と同じような幻覚なんです。

 

金縛りは人工的に誘発する事が出来まして、赤外線のモニターカメラで寝ている方の顔を写していてもずっと目は閉じたままなんです。ところが起こしたら金縛りでしたと、部屋の様子がよく見えましたと、それから先生が白衣を着て入ってきました、と。でもそんな事は起こっていないんですよ。頭の中だけで再現されたものです。

 

荻上 ええー、錯覚なんですか。 驚きました。睡眠にまつわるこんなメールも来ております。

 

「当時私は午後5時からの仕事をしていたんですが、起きて目覚ましを見たらなんと6時。着替えもそこそこ家から飛び出してチャリンコに飛び乗り勢い良く走りだしたんですが、暫くしてふと夕暮れ時にしては人が少ないなと思い、冷静になって辺りを見回してみると、朝6時である事に気が付き一人苦笑いしてしまいました。ちなみに私の睡眠導入法はYouTubeで見つけた”World Most Relaxing Music”という音楽を掛ける事です」

 

とありますが、ヒーリング音楽を聞くのは効果的なのでしょうか。

 

福田 眠りそのものに作用する催眠術みたいな音楽はありません。ただリラックスするなど、眠りの準備状態を作るという意味では、好きな音楽を聴くなどするのはいいと思います。

 

荻上 香りはどうですか、アロマなどを使っている方もいると思いますが。

 

福田 女性に多いのですが、入眠儀式と呼ばれるものがあり過ぎる人の方がむしろやや神経質で病的だというデータもあります。寝なくても死なないやくらいに思っている人の方がよく寝たりしますね。

 

 

寝てないですね、日本人

 

荻上 こんなメールも来てます。

 

「睡眠の悩みですが起きたい時間よりかなり早く起きてしまう事があるのです。早朝覚醒っていうのかな、疲れていても3時間くらいしか寝ていられなくて、もう一回寝ようとしても全然寝られないという感じ。ストレス掛かるとそうなるとは聞きますが、何か回避する方法はないでしょうか。」

 

福田 その方が、何歳かは分かりませんが、ある程度年齢が高くなってくると早朝覚醒が出てくるのは仕方がありません。注意睡眠といって、翌朝の事を気にしている時には早めに目が覚めるのも自然なことです。ただ早朝覚醒は抑うつの自覚前に出てくるサインである場合もあり得るので、もしその原因となるような事があるならば気にされた方がいいかもしれません。

 

荻上 眠りの質というのはどういう風に分けられるんですか。

 

福田 質の善し悪しを気にされて、深い眠りをいっぱい取れた方がいいと考えられている方が多いですね。しかしその深い眠りを取ったかどうか、自分自身は自覚出来ません。

 

実際睡眠の主観的な質を左右しているのは寝付くまでの時間や夜中に何回目覚めたかなど、結局意識のある時間なんです。ですから短い時間で寝付けて朝までぐっすり目が覚めないというのが大事だと思います。

 

荻上 そもそも日本人は、平均的に寝ていないというデータがいくつかありますね。

 

福田 その通りなんです。OECD(経済協力開発機構)のデータでも必ず日本と韓国など東アジアの国が最も睡眠が短いと出てきて、日本は大抵1位か2位です。世界的に見てもこれは異様というか異常です。他の国では大人でも7時間~8時間くらい寝ているのが普通ですので、日本人はかなり夜の睡眠時間が短くなっていると言えます。

 

荻上 普段、睡眠6時間半~7時間ほど寝ているという話をすると「そんなに寝てんの?」って反応が返ってきますよね。それくらい、「寝ないことに慣れている」ということですね。

 

福田 今の大学生も大体6時間くらいが平均で、それで十分だと思っている子がほとんどです。ところが世界中を見ると大学生でも7時間半くらい寝ている所が多いです。

 

荻上 6時間で十分だというのはどうなんでしょうか。慣れているとか、日本人はそれで足りるとかなのか、それとも誤解なのか。

 

福田 完全に誤解ですね、大学生は6時間では十分じゃないですよ。だって昼間ちゃんと寝てますもん、授業中に。

 

荻上 そういえばそうですね(笑)。

 

福田 寝てしまうのは夜の睡眠が十分じゃないからで、夜ちゃんと寝ていればあんな事は起きないはずです。【次ページにつづく】

 

 

 

■■■ アンケートにご協力ください。 ■■■

 

 

1 2
300_250_5g 困ってるズ300×250 α-synodos03-2

vol.198 特集:大人の学習

・関本保孝氏インタビュー「棺桶に夜間中学の卒業証書を入れてほしい――夜間中学における大人の学習とは」

・舞田敏彦「成人にも開かれた教育機会を――求められる『リカレント教育』とは」

・福田一彦「朝活学習は効果的なのか?」

・石村源生「サイエンスカフェの拓く未来――市民が互いの学習環境を能動的にデザインしあう社会を目指して」